日本とフランスでこんなに違う「老後の過ごし方」。介護は子どもに頼らず、自分だけの暮らしを選択

定年退職や子どもの独立が視野に入ってきた50代。現役を終えた老後の暮らしに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。「フランス人は老後を子どもに頼らず、年をとった今の自分にちょうどいい暮らしへと切り替えていきます」と語るのは、フランス文化研究者で翻訳家のペレ信子さん。ペレ信子さんが見た、フランスならではの老後との向き合い方についてお聞きしました。

老後に対する固定観念を払う「フランス的思考」, 70代で引っ越し「小さな暮らし」にシフト, 一緒に暮らさずとも支え合える家族の関係, 「こうでなければ」を取り払って自分の人生を考える

老後を幸せに暮らすために(※画像はすべて著者撮影のイメージ写真です)

【写真】70代ひとり暮らしのアパルトマン

老後に対する固定観念を払う「フランス的思考」

老後に対する固定観念を払う「フランス的思考」, 70代で引っ越し「小さな暮らし」にシフト, 一緒に暮らさずとも支え合える家族の関係, 「こうでなければ」を取り払って自分の人生を考える

先日、日本人の友達に「あなたはいいわね、子どもが3人もいるから。老後はだれかが面倒見てくれるわね」と言われました。私は老後の面倒を子どもに見てもらおうと思ったことがなかったのでその言葉に少し驚きました。

彼女は続けます。「子どもがいないと家をどうするのか考えなくちゃいけないし、いろいろ大変よ」と。私たちは自分たちの家のことは自分たちで決めるものだと思っていたし、子どもの家でお世話になろうと考えたことがなかったのです。

老後についてはさまざまな考え方があると思いますが、フランス人で老後は子どもがどうにかしてくれると思っている人に今まで会ったことがありません。そのためか私もそういう思考になっていました。

70代で引っ越し「小さな暮らし」にシフト

老後に対する固定観念を払う「フランス的思考」, 70代で引っ越し「小さな暮らし」にシフト, 一緒に暮らさずとも支え合える家族の関係, 「こうでなければ」を取り払って自分の人生を考える

フランス人の友人は、現役を退いた後、しばらく仕事に便利だった中心街の19世紀の豪奢(ごうしゃ)なアパルトマンに暮らしていました。そのあと、70代にそのシックなアパルトマンを売りに出し、繁華街から離れたエレベーターつきで管理体制がしっかりしているアパルトマンに移りました。

彼女のひとり息子はパリで働いていますが、彼のところに身を寄せるという選択肢は彼女にはなく、自分の知っている友達のいる街で今の自分にちょうどいい暮らしにシフトすることを求めたのです。

ひとつだけ子どものために留意したこと、それはパリから電車で訪ねてくる息子が来やすいよう、駅近の物件にしたこと。

とにかく、パリの息子の生活と自分の地方の生活を分けて考えているのです。

一緒に暮らさずとも支え合える家族の関係

老後に対する固定観念を払う「フランス的思考」, 70代で引っ越し「小さな暮らし」にシフト, 一緒に暮らさずとも支え合える家族の関係, 「こうでなければ」を取り払って自分の人生を考える

有名な女優さんが介護のために一線を退いていたという話が本当に過酷な時間であったと同情されたり、介護を見据えて二世帯住宅に住むという話が美談として語られたりすることがあります。家族を見捨てない、最後まで家で面倒を見る、というのは本当に頭の下がる決断です。

でも同時にその決断によって、子どもが自立したあとの、まだ老いているとは言えない自分の元気な50代からの日々を捧げてもいいのか? という問いが、フランス人を見ていると頭によぎります。

フランス人は子どもに頼るというチョイスがもともとなく、18歳で家を出て行った子どもは自分の足で歩んでいく。お互い尊重して大人の距離感を保っています。

もちろんしょっちゅう「どうしてる?」「元気?」と連絡を取り合い、長い休みには会いに行きます。一緒に暮らしていなくても気にかけている、それが家族なのでしょう。

「こうでなければ」を取り払って自分の人生を考える

「老後は子どもが親の面倒を見るもの、子どもに面倒を見てもらうもの」というのが固定観念になっているとしたら、そうでない社会もあると知ることで気持ちがラクになるかもしれません。

「自分が幸せになるためには人の幸せを尊重する」という考え方もあると、フランスを見ていると思います。