【名医が回答】女性の3人に1人が持つ子宮筋腫、「放置して良い人」と「手術すべき人」の決定的な違いとは? 術後半年は妊娠不可という意外な盲点も

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自覚症状はなかったけれど、婦人科検診で受けた超音波検査で小さな子宮筋腫が見つかったという人は珍しくありません。
もし診断されたらどうしたらいい? 子宮筋腫の手術のエキスパート・順天堂大学の北出真理先生に伺います。
子宮筋腫の原因は?
「子宮筋腫は、子宮にできるこぶのようなもので、がん化する心配のない良性の腫瘍です。家族に子宮筋腫が多いとリスクが高まる家族性要因をはじめ、肥満や高血圧、飲酒、喫煙、ビタミンD不足などがリスク因子との報告はありますが、現時点で明確なエビデンスのある原因はわかっていません。
病態は個人差が大きく、筋腫の数は1個から特殊なタイプでは100個以上と幅があり、大きさも数ミリから20センチ以上とさまざまです。筋腫の数、大きさ、位置、症状、妊娠希望の有無などで治療の必要性や治療法は決まりますが、子宮筋腫がある20歳から閉経までの女性の受診率は1~2割に満たず、手術が必要なのはそのうちの20%以下と報告されています」
基本的に、無症状の場合は経過観察となることが多いが、子宮筋腫によってナプキンを1~2時間ごとに交換する必要があるほどの出血(過多月経)やそれに伴う貧血、また子宮筋腫に圧迫されて頻尿などを認める場合には手術が選択肢に入ってくるという。
「子宮筋腫の約70パーセントは、子宮の平滑筋にできる『筋層内筋腫』で、2~3センチ以下の小さな筋腫では無症状の場合がほとんどです。しかし、同じ『筋層内筋腫』でも、子宮内膜に近くもう少し大きい場合や、子宮の内側にできる『粘膜下筋腫』では、子宮の内腔が変形して子宮内膜の表面積が大きくなり、経血量が増えたり不妊症や不育症になる人が増える傾向にあります。
子宮の外側にできる『漿膜下筋腫』は大きくなるまで無症状ですが、筋腫が成長すると膀胱や腸を圧迫し、頻尿や便秘、腰痛・下腹痛などが生じる場合もあります。いずれのタイプでも、日常生活に影響を及ぼす症状や妊娠しにくい状況があれば、手術をお薦めしています」

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経過観察と手術、その間を埋めるような、服薬などで筋腫を小さくする方法はないのだろうか。
「筋腫は女性ホルモンのエストロゲンの影響を受けて大きくなるので、一時的にエストロゲンの分泌を強力に抑えて筋腫を小さくしていく『偽閉経療法』というものがあるにはありますが、服薬期間が半年間と決められていて、服薬をやめると筋腫が再び大きくなるため、閉経逃げ込み療法や術前治療としての使用がほとんどです。
つい最近、欧米では継続的に服用できる子宮筋腫の新しい治療薬が販売になりましたが、効果検証はまだ不十分であり、日本で実用化されるのは当分先になりそうです」
子宮全摘が最善のケースとは
手術になった場合、最初に考えるべきことは、これからの人生で妊娠・出産を希望するかどうか。
「妊娠を希望する場合、子宮を残して筋腫のみを摘出する『筋腫核出術』が選択肢ですが、筋腫を取っても残存や再発のリスクがあり、術後半年は妊娠を避ける必要があるため、手術時期の見極めがとても大切です。また、主治医の経験値による感覚にはなりますが、筋腫の位置や大きさが着床や妊娠に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断した場合には、無症状でも筋腫核出術を薦めることがあります」
将来的にも妊娠を望まない、すでに出産を終えている、また筋腫の数が非常に多いなどのケースでは、『子宮全摘術』が最善の選択肢になるという。
「再発のことを考えれば、子宮全体を摘出したほうがいいという判断になります。子宮を取ることに抵抗がある方もいると思いますが、術後の痛みも筋腫核出術よりは少なく、卵巣が残っていれば更年期症状が早まることもありません。手術を受けた方からは、つらい症状から解放されてすっきりしたという声が圧倒的に多いです」
筋腫が妊娠の妨げになる!?
子宮筋腫は命をおびやかす病気ではないけれど、これからの人生で妊娠・出産を考えている人は特に、将来の妊娠に向けたプレコンセプションケアの一環として子宮筋腫の有無を知っておきたい。
「子宮筋腫の好発年齢は30代後半~40代前半と言われています。最近では、この年代で出産を終えていない女性が多く、たとえば体外受精を行う場合でも、子宮筋腫が原因で採卵や胚移植が上手くいかないケースも少なくありません。
その場合、筋腫核出術で筋腫を摘出してから妊娠を目指すことになりますが、術後半年は子宮を休ませる必要があるため、術前治療期間と合わせて1年近くを棒に振るリスクもあり、妊娠適齢期を逃すことにもなりかねません。
また、子宮全体が臍の高さ以上になるまで筋腫が育った状態では、傷の小さな腹腔鏡手術やロボット手術を受けることが難しくなるため、開腹手術一択になってしまいます」
未来の自分が後悔しないためにも、定期的に検診を受けて自分の体を知っておくことが重要だ。
「早めに子宮筋腫がわかっていれば、最適なタイミングで低侵襲な手術が受けられます。体外受精を行う場合は受精卵を術前に凍結しておくなどのオプションも適用可能となります。妊娠・出産をするか否かは人生における大切な要素。忙しさを言い訳にせず、今の時代だからこそ叶う治療を選択して、仕事も子どももあきらめる事なく、充実した生活を送りましょう」
◆子宮筋腫と診断されたらどんな選択肢がある?
どんな治療法が自分に合っているか、チャートで治療の選択肢の目安を知りましょう。

妊娠を希望するか否かが、治療方針を大きく変える。
●お話を聞いたのは……
産婦人科医 北出真理(きたで・まり)先生
順天堂大学産婦人科学講座教授。2017年に順天堂大学に開設された、女性低侵襲外科・リプロダクションセンターでセンター長も務める。同センターでは、身体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット手術、最先端の不妊治療を強みとしており、子宮筋腫に対する腹腔鏡手術件数は国内有数。