酒よりヤバい!乳酸菌飲料、野菜ジュース…体にいいはずが肝臓に最悪?「脂肪肝」になる人のNG食習慣
睡眠の質を高める話題の「乳酸菌飲料」……毎日飲んだら『脂肪肝』に
「健康のために続けている習慣が、実は肝臓を弱らせている原因になっているかもしれません」
そう話すのは、肝臓専門医の栗原毅医師。これまで3万人以上の肝臓を復活させた名医が、「飲みすぎ注意」と真っ先に指摘するのが、お酒ではなく体にいいとうたう甘い飲み物だ。
「例えば、寝る前に飲むと睡眠の質を高めるといわれている乳酸菌飲料。『これを飲むとよく眠れる』といって毎日飲んでいた患者さんがいたのですが、肝臓の数値が悪くて、予想通り脂肪肝になっていました」
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪がたまった病気のこと。その最たる原因が、「糖質」の摂りすぎによる血糖値の乱高下だ。

体にいい習慣が「肝臓」にとっては最悪? 200ccの野菜ジュースも、「炭水化物」が10g以上入っていると血糖値は急上昇して「血糖値スパイク」を起こす原因になるという
食事をとると血液中の糖の濃度、つまり血糖値が上がる。それをおさえるためにすい臓からインスリンが分泌され、血糖値が正常に戻る。炭水化物や甘いドリンク、甘い物などの糖質量の多い食べ物を過剰にとったり、早食いをしたりすると、血糖値が急激に上がって急激に下がる、「血糖値スパイク」が起こる。
「インスリンは、血糖値を下げる重要な働きをしているのですが、もう一つ、余ったブドウ糖を中性脂肪に変換する働きがあります。だから、糖質(ブドウ糖)が過剰になり、食事のたびに血糖値スパイクが繰り返されると、肝臓をはじめとした内臓脂肪の蓄積につながるのです」
栗原医師が、脂肪肝を助長するというのが、乳酸菌飲料などの甘いドリンクの多くに使われている「果糖ブドウ糖液糖」だ。
「果糖ブドウ糖液糖とは、トウモロコシやじゃがいもなどから人工的に作られた液体のシロップで、果糖とブドウ糖のダブルの糖が入っています。ブドウ糖は血糖値を上げるためとり過ぎは当然良くありません。それより問題なのが、果物やはちみつにも含まれる果糖です。果糖は、血糖値は上げないものの、小腸からダイレクトに肝臓に吸収されるのが特徴で、糖質中で、もっとも肝臓に負担をかける糖です」
果糖ブドウ糖液糖は、市販の野菜ジュースや、スポーツドリンクなどにも含まれていることが多い。野菜不足を補うために、熱中症にならないために……と思って飲んでいたドリンクが、肝臓に負担をかけているかもしれないのだ。
「ヘルシーなイメージのノンオイルドレッシングや、簡単に味がきまって便利なめんつゆなどのタレにも果糖ブドウ糖液糖が使われている場合があります。日常的に、大量に摂取していれば、脂肪肝へまっしぐらですよ」
さらに、果物も食べ過ぎるとあっという間に肝臓に脂肪がたまるという。
「たった2週間で、肝臓の数値をあらわすALT(GPT)が倍以上にはね上がってしまった患者さんがいました。話を聞いたら、お中元でメロンをたくさんもらい、早く消費しなければと思って毎日食べていたそうです。果物の糖は果糖なので、一度に大量に食べることは肝臓を一気に疲弊させているようなものです」
日本人の3人に1人が「脂肪肝」…放っておくと10年程度で「糖尿病」に
肝臓が悪くなるのはお酒の飲み過ぎというイメージがあるが、脂肪肝の原因の多くは食生活にある。そのため、やせている人や若い世代であっても食生活が悪ければ脂肪肝は避けられない。
「現在、日本人の3人に1人、推定4000万人が脂肪肝とされています。男性は30代・40代が発症のピークです。脂肪肝は、そのままにしておくと肝臓に炎症が起こる脂肪肝炎となり、さらに数年、悪い習慣を続けると線維化して硬くなり、肝硬変に。最終的には肝臓がんへと進行します」

「ALT(GPT)31以上は脂肪肝になっています。20~30の場合は、隠れ脂肪肝。どちらも生活習慣の改善が必要です」と栗原毅医師
怖いのはこうした肝臓の病気だけではない。脂肪肝は、すべての生活習慣病の入口になることがわかってきた。
「脂肪肝を放っておくと、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなる、『インスリン抵抗性』が起こります。血糖値の高い状態が続いて、糖をコントロールするのが難しくなり、脂肪肝になってから10年程度で糖尿病を発症してしまうケースが増えています。
糖尿病以外にも、血液中にあふれた余剰な糖は、血管を傷つけてボロボロにし、動脈硬化をはじめ、心筋梗塞や脳梗塞、認知症などにつながっていきます。肝臓をはじめとする内臓脂肪からは、血圧を上げる物質が分泌されて、高血圧を引き起こすなど、多くの生活習慣病が脂肪肝から始まるといってもいいでしょう」
代謝や解毒など、体が正常に機能するために重要な役割を担っている肝臓は、とにかく働き者。そして「沈黙の臓器」ともいわれ、ちょっと悪くなったくらいでは弱音を吐かない。痛みや不具合といった症状がないまま、肝臓の機能が悪化していく。
だからこそ、健康診断結果で、早期に気づくことが重要になる。チェックしたい肝臓の数値が、細胞にダメージがあると数値が高くなる「ALT(GPT)」だ。
「ALT(GPT)31以上は脂肪肝になっています。20~30の場合は、隠れ脂肪肝。どちらも生活習慣の改善が必要です。理想は20以下をキープしましょう」
ラーメンを食べるなら「お酢をプラス」すると肝臓の負担にならない
脂肪のない健康な肝臓を保つ方法は、「血糖値スパイクをブロックした食習慣に尽きる」と、栗原医師は話す。
「血糖値スパイクを起こす早食いをやめ、よく噛んでいつもよりゆっくり食べてみてください。これだけで血糖値の上昇がゆるやかになります。糖質のとり過ぎは肝臓の負担になりますが、完全に糖質をカットする必要はありません。3食ちゃんと食べて、ごはん・パン・麺をいつもより1割程度減らします。その分、肉・魚・卵・野菜・きのこ類を増やしましょう」
コンビニやスーパーでは、パッケージ裏面の栄養成分表示を見て、「炭水化物」がどれくらい入っているか確認してから買うクセをつけることも大事。例えば、200ccの野菜ジュースなら、炭水化物が10g以上入っていると血糖値は急上昇してしまう。購入する場合は、9g以下を目安に。

「血液中にあふれた余剰な糖は、血管を傷つけてボロボロにし、動脈硬化をはじめ、心筋梗塞や脳梗塞、認知症などにつながっていきます」(栗原毅医師)
ビジネスマンのランチの味方でもあるラーメンを食べるとき、栗原医師がやっている食べ方がある。
「できれば麺は少なめ、茹で方は硬めでオーダーします。食べるときは、レンゲにお酢とスープを入れて、2杯くらい飲み、メンマやチャーシュー、卵などの具から食べ進めます。ゆっくり具を食べたあと、できれば2分後以降に麺を食べると、血糖値も上がりにくく、肝臓にも負担が少ないでしょう」
運動をすると割と早く落ちるのも脂肪肝の特徴。効果的なのが、10分のウォーキングと軽い筋トレだ。
「食後に歩くと、糖がエネルギーとして消費されて血糖値が上がりにくくなります。できれば食後がベストですが、忙しければいつでもOK。ゆっくり5秒かけて腰を下ろして上げる、スロースクワットもおすすめ。太ももやお尻の大きな筋肉を鍛えることで、糖が中性脂肪に変わり、脂肪が蓄積するのを防ぎます」
脂肪肝を防ぐ生活習慣は、将来の病気リスクを減らす一助になることは確か。働き世代にとって、この先も健康で働き続け、人生を楽しみたいなら、正しい肝臓ケアは必須といえるだろう。
▼栗原毅(くりはら・たけし) 栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。東京女子医科大学教授、慶應義塾大学大学院特任教授を歴任。’08年、メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病の予防と治療を目的とした栗原クリニック東京・日本橋を開院。「血液サラサラ」の提唱者の1人でもある。『決定版!内臓脂肪を落とす名医のワザ』(TJ MOOK)など、著書多数。

栗原医師の著書『肝臓大復活 100歳まで食・酒を楽しむ「強肝臓」の作り方』(東洋経済新報社)。肝臓に悪い習慣、脂肪肝を最速で落とす方法が詰まった、健康になれる一冊
取材・文:釼持陽子
編集・ライター。1983年、山形県生まれ。10年間、健康情報誌の編集部で月刊誌・Webメディアの編集に携わったのちフリーランスに。現在はヘルスケア・医療分野などを中心に、医師や専門家の取材、企画、執筆を行う。