新品タイヤは滑る? 太いタイヤは有利? タイヤの常識・非常識

 クルマのなかで唯一路面と接しているのがタイヤ。重要なアイテムであるタイヤだが、実はあまり知られていない知識も多い。今回は、知っておいて損はないタイヤに関する常識と非常識を紹介していこう。タイヤにも「人生」ならぬ「タイヤ生」があるのだ!

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文:長谷川 敦/写真:スバル、トヨタ、ミシュラン、イラストAC、写真AC、Adobe Stock

“タイヤ生”にかかわる常識とは?

●新品タイヤのグリップは完璧じゃない

未使用新品タイヤの表面には成型時の剥離剤が付着していて、さらに表面もツルツルした状態のため、走行開始直後から100%の性能を発揮することはできない

 人に人生があるように、タイヤにも始まりから終わりまでの“タイヤ生”がある。

 工場から出荷され、まだ実際に使われていない新品タイヤは人になぞらえると赤ちゃんにあたるが、この新品タイヤを使用する場合には少々注意が必要になる。

 それは、新品タイヤはまだ本来のグリップ力(摩擦によって路面に食いつく力)を発揮できないということ。

 おろしたてのタイヤ表面には、成型時の金型から外すための離型剤が残っていて、これがタイヤと路面のグリップ力を減らす一因になる。

 また、タイヤの表面(トレッド面)もツルっとした状態なので、離型剤がしっかり落ちて、表面が路面になじむまで慣らし走行が必要になる。

 タイヤを新品に交換したら、しばらくは優しい運転を心がけて、タイヤをきちんと慣らしたい。

●溝が残っていればOK?

赤丸で囲っているのがタイヤに設けられたスリップサイン。このスリップサインが露出して路面と接触するようになったタイヤは法律によって使用できない

 続いてタイヤ寿命末期の話で、トレッド面に溝が残っているうちはまだ使えるという話があるが、果たしてコレは本当なのか?

 公道用のタイヤにはスリップサインが設けられていて、スリップサインの高さまでトレッド面が摩耗したタイヤは使用しないよう法律で定められている。

 しかし、タイヤの寿命はスリップサインだけで決まるものではない。

 タイヤの主材料であるゴムには経年劣化によって硬くなるという性質があり、ゴムが硬くなるとグリップ力(=安全性)が低下する。

 また、直射日光を浴びる青空駐車でも紫外線の影響によってゴムの劣化が進行する。

 そのため、まだ溝が残っていても、表面にひび割れができたタイヤは寿命がきたと考えてほしい。

 特に軟らかめのゴムを使用するスタッドレスタイヤはノーマルタイヤに比べて劣化が進みやすいので注意が必要だ。

●新品だからといって油断は禁物

タイヤに刻まれた製造年&週。写真のタイヤでは「1424」と記されていて、これは24(2024)年の第14週に製造されたタイヤであることを意味している

 店舗や倉庫での在庫など、なんらかの理由で長期間保管された未使用タイヤを格安で購入できるケースはある。

 だが、安いタイヤはワケありなことも多く、購入前には必ず製造年月日を確認することをお薦めしたい。

 先にも説明したようにゴムには経年劣化という性質があり、未使用だからといって新品と同じ性能を持っている保証はない。

 高温や直射日光を避けて適切に保管されたタイヤならば製造から3年程度は新品同様の品質を保っているといわれているので、購入時にはタイヤのサイドウォール(側面)に記された製造年&週を確認し、3年以内であれば購入しても問題ないだろう。

タイヤのグリップに関する常識と非常識

●太いタイヤは正義?

オンロードサーキットを走らせたら世界で一番速いF1マシンのリアには極端に幅広のタイヤが装着される。これは高出力を受け止めてコーナーを速く走るため

 F1など、タイヤがむき出しになっているオープンホイールタイプのレースカーを見ると、公道用のクルマに比べてはるかに太いタイヤが装着されていることがわかる。

 これはレース用エンジンのパワーを確実に路面に伝えるためと、そのパワーに負けないグリップ力を得るのが目的だ。

 だったら公道用のクルマでも、できるだけ太いタイヤを装着したほうが路面をしっかりとらえて安全性も高まるのではないか?

 こう考える人もいるかもしれないが、実はこれ、半分正解で半分は間違い。

 タイヤが太くなればコーナリング中に遠心力に対抗する力が強くなって旋回スピードを速くすることができるが、細いタイヤに比べて接地圧が減少するため、ハンドルを切った際などの接地感は逆に少なくなってしまう。

 常に限界スピードでコーナリングするわけでない公道車にとっては、高速旋回時のグリップ力より接地圧の高さのほうが重要になるケースも多い。

 また、太いタイヤは雨天時に濡れた路面との接触面積が増え、細いタイヤよりも滑りやすくなることもある。

 燃費性能においても路面との抵抗が少ない細いタイヤに分があるなど、太いタイヤは決して万能とはいえない。

●低めの空気圧でグリップアップ?

クルマに貼られているタイヤに関しての情報。タイヤのサイズが記され、前後の推奨空気圧もこの表示でわかる。空気圧はこまめなチェックと補充が重要だ

 タイヤ内部には空気が入っていてその圧力で形状を保つと同時に、空気がショックを吸収する役割を果たす。

 この空気圧には適正値があり、それはタイヤの種類や使用目的で変化する。

 タイヤの空気圧を適正値よりも低めにすると、車重や走行中の荷重によるタイヤのたわみが大きくなって接地面積が増加する。

 これによりグリップ力は向上し、乗り心地が良くなるケースもある。

 とはいえ、変形の大きくなったタイヤでは偏摩耗が起きやすくなり、燃費が低下する恐れもある。

 だからといって、燃費を向上させるために空気圧を適正値より大幅に高くすることにもトレッド面中央部分の偏摩耗や乗り心地の悪化などの弊害がある。

 タイヤへの空気補充は1カ月に1回くらいを目安に、圧力の自然低下分を考慮して指定値より10~20kPa程度高めにするのが基本だ。

タイヤを長く使うための常識

●タイヤのローテーションは必須?

タイヤのローテーション。イラストの上側を進行方向と考えると、このローテーションはFRや4WD車のそれを表していて、FFでは別の変更パターンになる

 一般的なクルマには4本のタイヤが装着されているが、走行中はもちろん、停車時にも4輪に同じ荷重が加わっているわけではない。

 公道用車両のほとんどは車体前部に重いエンジンを積んでいて、この場合は後輪より前輪のほうが重量面での負担が大きくなる。

 さらに前輪が駆動も担当するFFや4WDではその負担が増加する。

 そうした理由により、前後左右のタイヤそれぞれで摩耗の進行スピードに差が出てしまう。

 これを是正するために行うのがタイヤの入れ替え(ローテーション)だ。

 FF車の場合は前輪を後輪に変更し、取り外した後輪は反対側の前輪(クルマを上から見た際に斜め前の前輪)にすれば、偏摩耗を抑制できる。

 FRや4WD車では、後輪を前輪に変更して、前輪は反対側の後輪にするのが一般的。

 ただし、前後でタイヤの大きさが違う場合や、タイヤの回転方向が決められている場合はこのかぎりではない。

 タイヤは搭乗者の命を守る大切なパートであり、こまめに気を配ることによって安全性を高く保つことができる。