松屋が発売「焼豚玉子飯」今治名物が今発売のワケ

松屋の「今治焼豚玉子飯」(筆者撮影)
白ごはんにゴロゴロ焼豚、目玉焼き2個。愛媛県今治市のソウルフード「焼豚玉子飯」が、全国区になりつつある。
【画像】美味しそうすぎる…ほっともっとで発売された「焼豚玉子飯」はこんな感じ
牛めし大手「松屋」では今治市への出店を記念して、「今治焼豚玉子飯」を4月に店舗限定で、7月後半からは全国発売。また「ほっともっと」は持ち帰り用弁当として、以前に販売していた「今治焼豚玉子飯」を復活させるという。
人口15万人の地方都市が生んだご当地グルメは、なぜ全国区なりつつあるのか? まずは今治市を巡り、人気の秘密を探ってみたところ……このメニュー、そりゃ全国に通用するわ!
焼豚玉子飯って何だ?→焼豚+玉子+飯です
今治市といえば「船とタオルの街」。国内の新造船建造量で20年以上もトップをキープする「今治造船」、贈答品の定番「今治タオル」などの産業が根付く、愛媛県では県都・松山市に次ぐ地方都市だ。
そんな今治市で焼豚玉子飯が誕生したのは、おおよそ半世紀前。市内の中華料理店「五番閣」のまかない飯(従業員のための食事)が店で提供され、爆発的な人気を呼んだ。

今治市には「今治造船」「新来島どっく」などの造船所がある。市営渡船からの景色(筆者撮影)
その後、のれん分けで独立した弟子の店でも提供され、いまや市内で約60店が焼豚玉子飯を提供しているという。

「重松飯店」の焼豚玉子飯(筆者撮影)

ランチタイムには「焼豚玉子飯」目当てに行列ができる(筆者撮影)
作り方は簡単で、ご飯の上に切った焼豚と目玉焼き2個を載せ、タレをかけるだけ。実際に訪問した「重松飯店」では、入店まで40分待ち・店内が満員の状態でも、注文から3分とかからず焼豚玉子飯が“着丼”。とにかく提供スピードが速い!
焼豚玉子飯はとてもシンプルな逸品だが、焼豚はモモ・バラなど使用部位や厚さ、タレはこってり・ドロドロかサラサラか、目玉焼きの焼き加減などで、意外なほどバリエーションがある。
店によっては辛味タイプや、焼豚が豚焼肉に変わった「焼肉玉子飯」さらに「焼豚玉子カレー」もあるが、概してご飯の盛り・ボリュームが凄く、食べ歩きは成人男性が頑張っても、2〜3軒が限界だ。
食べ方は、シンプルな焼豚玉子飯をシンプルに掻き込むだけ……でもいいが、常連客によっては「1個の目玉焼きをご飯に混ぜて、もう1個は黄身を割って焼豚に絡めながら食べる」「まず1個の目玉焼きの白身を崩し、次に黄身を崩し、残った1個の目玉焼きは全部崩す」など、多種多彩な食べ方があるようだ。
なお、焼豚玉子飯はご当地料理の祭典「B-1グランプリ」にも10度以上参加しており、過去にゴールドグランプリ(1位)2回、ベスト3が6回という輝かしい成績を残しており、全国のご当地料理の代表格といってもいいだろう。
松屋・ほっともっと 相次いで「焼豚玉子飯」発売!さっそくレビュー

松屋「今治焼豚玉子飯」。今治市出身の社員が監修という力の入れようだ(松屋リリース資料より)

松屋 今治片山店 愛媛銘菓・一六タルトの販売店と同じ敷地内にある(筆者撮影)
2025年4月、今治市で新しい焼豚玉子飯の提供店が加わった。「松屋 今治片山店」。牛めし「松屋」の市内1号店だ。
今治市への松屋出店を記念して開発した特別メニュー「今治焼豚玉子飯」は、今治市出身の松屋フーズ・文田大輔 西日本地域統括部長が監修。もちろん地元団体(今治焼豚玉子飯世界普及委員会)の公認を得て、徳永繁樹今治市長も発売前に試食しているという。

松屋の「今治焼豚玉子飯」。今治片山店にて(筆者撮影)
実際に今治片山店で試食してみたところ、チェーン店としては、なかなか技アリな一杯と感じた。
ご飯を覆い尽くすチャーシューは、薄く切ったものを数枚重ねにしてガツンとした食感を実現しているようだ。また目玉焼きは朝食・チャーシューエッグ定食など既存メニューのものと違い、パリッと焼いた上で、塩ではなくコショウで味を調えている。松屋の調理手順をあまり増やさない範囲で、「ガッツリ系」が売りの焼豚玉子飯を、よく再現できている。
ただ、焼豚のタレは有名店と比べてサラッと薄めで、市内の焼豚玉子飯と比べると万人向け・控え目な印象だ。さらなるこってり風味を求める方は、卓上のバーベキューソースなどをかけてみてもいいだろう。
ともあれ、しっかり”今治ファースト”で開発された焼豚玉子飯は、4月15日から約1週間は35店舗で限定販売、7月下旬には全国発売。5月現在では、今治片山店のみで販売しているという。
ほっともっとでも発売!実は復刻メニューです

ほっともっと「焼豚玉子飯」(筆者撮影)
松屋に続いて、5月8日には「ほっともっと」で「今治焼豚玉子飯」が発売された。こちらは2015年に発売された地域限定メニューの復刻盤で、今治市の地元団体の監修をしっかり受けている。
さっそく発売日に食べてみたところ、チャーシューとタレが、驚くほど濃厚!! 松屋より肉量は少なめだが、トロッと濃厚なタレの旨味による「肉食ってる感」が、本場・今治市の焼豚玉子飯に近い。
一方で目玉焼きはそれなりに火が通っていたが、持ち帰り弁当なので仕方ないだろう。

中華飯店ごくう「焼肉玉子めし」(筆者撮影)
実は、焼豚玉子飯の提供は店側にもメリットがある。それは「とにかく早くサッと出せる」ことだ。
多量の焼豚を事前に切っておけば、厨房のオペレーションは「ご飯盛る→焼豚と汁かける→目玉焼き載せる」で、最速で1分を切る。今治市は昔から気質が「イラチ」(伊予弁で「せっかち」)と言われており、限られたランチタイムに来店する人々にサッと出せる「ファストメニュー」として、焼豚玉子飯はもっとも最適だったのだ。
焼豚玉子飯を全国チェーンで提供する際にも、提供側のオペレーションがアルバイトにも簡単に伝わり、一定の品質を保てる。実際に頼んだ限り、松屋・ほっともっとは物凄い提供スピードで商品が出てきており、「どの店でも早く、高品質に」提供できるからこそ、全国発売が可能だったのだろう。
かつ、「焼豚+タレ+目玉焼き」という組み合わせは、サッと掻き込んでエネルギー補給ができるメニューとして、当たり外れがない。もともと今治市内で、造船所・工場の工員さんや今治西高校、今治北高校などの男子高校生の「ガッツリ飯」として支持された実績もあり、焼豚玉子飯は「忘れたころに出てくるガッツリ系フェアメニュー」として、チェーン店で細く長く生き残れるかもしれない。
焼豚玉子飯に続いて、サッカーも!ブームに沸く今治市のこれから

FC今治は市民の熱烈な応援に支えられている(筆者撮影)
焼豚玉子飯もB-1 グランプリ1位獲得後は、ご当地料理の代表格として中予(愛媛県中部)の観光を牽引していた。今はブームも落ち着いてきたが、松屋・ほっともっと2社の新メニュー発売で話題にのぼることが増えれば、「今治市に焼豚玉子飯を食べに行こう!」という人々もまた出てくるだろう。
今治は今、サッカーでもアツい!
さらに今治市は現在、焼豚玉子飯だけでなく、プロサッカーチーム「FC今治」の活躍で盛り上がっているという。
2020年から「J3」、今年から「J2」とスピード出世を果たし、一時期は4位をキープ。5月22日現在で20チーム中7位と、J2初年度でのJ1昇格という快挙が見えてきた(2位以上で自動昇格、3~6位のプレーオフから1チーム昇格)。
日本のJリーグ(プロサッカー)チームの多くは地方に本拠地を持ち、遠征するサポーターがもたらす経済効果は「サッカーツーリズム」と呼ばれる。
このままFC今治がJ1昇格を果たせば、浦和レッズ・川崎フロンターレなど人気チームだと1000人規模のサポーター(ファン)来訪で今治市は賑わい、遠征先のグルメに大枚をはたいて食べ尽くすことから「イナゴ」とも呼ばれるFC東京などの試合では、焼豚玉子飯の提供店にはかつてない行列ができるだろう。

本拠地の「アシックス里山スタジアム」。マルクス・ヴィニシウス選手の活躍が目覚ましい(筆者撮影)
サッカーに限らず、観光シーズンでも行列・混雑を分散できるように、各店の焼豚玉子飯の特徴・混雑状況が分かるようなホームページやガイドブックが欲しいものだ。
そう思えてしまうほど、今治の焼豚玉子飯は、有名店だけでなく、シンプルなのにかなり奥深い食べ物なのである。