パンダ一括返還 有識者「中国は何らかの不満が…」白浜町長の親台湾スタンスも要因か

多くの来場者が駆け付けたジャイアントパンダ「良浜」の最終観覧=27日午前、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド(泰道光司撮影)

和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド(AW)」のジャイアントパンダ全4頭が28日に中国に返還される。一括返還は「パンダ外交」を繰り広げる中国側の政治的思惑があるとみられ、昨年5月に台湾との交流促進を掲げる大江康弘町長(71)が就任したことが返還の一因との臆測も呼んでいる。大江氏は「パンダ抜きの観光振興」を目指す方針だが、地元経済界への打撃は大きい。AWは協議を続ける意向とするが、新たな貸与を引き出せるかも不透明だ。

「パンダのまち白浜」の看板が掲げられている和歌山県白浜町役場。町では官民あげてパンダ観光を推進してきた=同町

27日、AWでは4頭の一般公開が最終日を迎え、早朝から多くのファンが開園を待った。午後にはお別れセレモニーも行われ、ファンらが別れを惜しんでいた。

AWとパンダのつながりは昭和62(1987)年、中国・四川省に飼育下のパンダを保護する「成都ジャイアントパンダ繁育研究基地」が設立され、AWが寄付活動に参加したことに始まる。

中国側はチーターなどの希少動物の繁殖で実績を上げていたAWの技術を評価。平成6年、同基地との「共同繁殖研究」がスタートし、雄の「永明(えいめい)」と雌の「蓉浜(ようひん)」が貸与された。その後、AWは中国国外では最多となる17頭の出産と育成に成功。約30年の繁殖研究目的の飼育は中国を除き、世界最長という。AW側は共同研究の継続として次のパンダの来日を望むが、先行きは見通せない。

「中国側はパンダを外交戦略に利用している」。中国外交に詳しい東京女子大の家永真幸教授はこう語る。

パンダは昭和47年の国交正常化の際に「友好の証し」として東京・上野動物園に贈られた。尖閣諸島周辺の漁船衝突事件などで日中関係が冷え込んだ際にも関係改善の使者としての役割が期待されたという。家永教授は「中国側はパンダの返還時期などで融通を利かせてきた。契約終了という名目だが、一括返還は何らかの不満があってのことだろう」とし、要因の一つとして町長の親台湾のスタンスもあるとみる。

官民でパンダ中心の観光振興を図ってきた白浜町では「パンダロス」への懸念が広がる。関西大によると、和歌山の歴代パンダによる経済波及効果の試算額は約1250億円超。南紀白浜空港の年間利用者数は昭和60年度のパンダ貸与以前の約5万人から大幅に増え、令和6年度には23万人超で最多となった。白浜温泉旅館協同組合の幹部は「宿泊施設では夏の予約が例年より減っているという声も上がる。持続可能な営業ができるよう協力してやっていきたい」とする。

パンダ抜きの観光振興策を打ち立てる必要があると語る和歌山県白浜町の大江康弘町長=同町

一方、大江町長は産経新聞の取材に、観光振興の転換を図ると強調。「パンダから脱却し、次の一歩を踏み出したい」と話した。(小泉一敏)