国内で唯一現存する旧海軍戦闘機「紫電改」 展示館リニューアルへ向けてクラファン開始

愛媛県愛南町の久良湾で海中から発見された紫電改。国内で現存する唯一の機体という=同町の紫電改展示館
先の大戦末期、本土の防衛に当たった旧日本海軍の戦闘機「紫電改」の実機を国内で唯一展示する「紫電改展示館」(愛媛県愛南町)が老朽化に伴って隣接地に建て替えられることになり、県が7月1日からふるさと納税型クラウドファンディング(CF)を始めた。目標金額は3800万円で、機体の補強費などに充てる。新たな展示施設は令和8年度中の開館を予定。同県の中村時広知事は「戦後80年を迎えるなか改めて戦争の悲惨な記憶を伝え、平和の尊さを伝える事業。ぜひ多くの方に賛同いただきたい」と呼びかけている。

機体近くには第三四三海軍航空隊の隊員にまつわる品々も展示されている
本土決戦の切り札
紫電改は、「零式艦上戦闘機(ゼロ戦)」に代わる新鋭機として昭和18年に開発され、本土決戦の切り札として、終戦間際の昭和20年2月、当時海軍の精鋭部隊とされた「第三四三海軍航空隊」(三四三空、剣部隊)に集中的に配備された。
機体は全長9・34メートル、主翼11・99メートル、高さ3・9メートル、装備重量は4・86トンで、2千馬力のエンジンを搭載。時速620キロを出すことができ、20ミリ機関銃4門、独自の自動空戦フラップを備えるなど当日の日本の航空技術の粋が尽くされた。

返礼品として用意されたオリジナルスニーカーやビンズなど
同展示館の機体は53年11月、愛南町久良湾で地元ダイバーが水深約41メートルの海底に沈んでいるのを発見し、県が遺族会や県民らの要請を受け翌年7月に引き揚げたものだ。
県によると、海中に眠っていた機体は全体にフジツボが付着し、各所で破損がみられたため、戦時中に紫電改を製造した「川西航空機」が前身の航空機メーカー「新明和工業」に修復を依頼。あわせて機体の来歴を調べたところ、搭乗者は不明ながら剣部隊所属で、昭和20年7月24日、豊後水道上空の迎撃戦で長崎県の大村基地から紫電改21機が出撃しており、そのうち未帰還となった6機のうちの1機の可能性が高いことも分かった。
県は55年に久良湾を見下ろす馬瀬山の山頂付近に現在の展示館を建設した。館では機体に加え、機体が墜落した日に帰還しなかった剣部隊の隊員6人の写真や引き揚げ作業を伝えるパネルなどとともに展示している。
貴重な遺産後世に
日本海軍の戦闘機で最高傑作の一つともされる紫電改。国内で唯一の現存機体を一目みようと、展示館には全国から年間約2万人が訪れる。こうしたなか、県は施設の老朽化に伴って令和4年に建て替えを決定。機体が移設作業に耐えうるかなどの調査を行ってきた。
移転先は既存施設の隣接地で、新たな展示館は鉄筋コンクリート造2階建て、延べ床面積は約690平方メートル。平和への「くさび」をイメージした三角形の特徴的な外観で、展示スペースは海と空と機体を同時に眺められるデザインとした。
総事業費は約9億7千万円。今回のCFでは機体を移設するための補強整備費用として3800万円を目標に設定し、想定以上に寄付が集まった場合は展示品を充実させる費用に充てるという。期間は今年9月5日までで、インターネットサイトの「READYFOR(レディフォー)」(https:readyfor/projects.shidenkai)で、寄付を受け付ける。
寄付者への返礼品として、72分の1サイズの紫電改・展示館オリジナルジオラマ(寄付額1千万円)や、紫電改展示館特別見学会付き2泊3日の愛南町観光体験ツアーペア(同150万円)のほか、漫画『紫電改343』作者の須本壮一氏デザインのオリジナルスニーカー(同10万円)、県産真珠付きオリジナルビンズなどを用意した(物品は県外在住者のみ)。
中村知事は6月30日の記者会見で「戦争当時を知る方が減るなかで、紫電改の機体は語り部に次いで当時のメッセージを伝える力がある。多くの方に賛同いただき、貴重な戦争遺産を後世に残していきたい」と期待を込めた。(前川康二)