老後に必要な備えは“お金”ではなかった? 全国60歳以上2188人の切実な答えとは

約8割が選んだ最優先の老後の備えは…?, 年代が上がるほど「資産形成」の優先度は下がる, 家族形態によって異なる備えの優先順位, 「防災・防犯意識」「地域とのつながり」が高いのは?

老後に必要な備えは“お金”ではなかった? 全国60歳以上2188人の切実な答えとは

約8割が選んだ最優先の老後の備えは…?

2025年6月10日に発表された内閣府の最新調査「令和7年版高齢社会白書」によると、60歳以上の男女が老後の備えとして最も必要だと考えていることは「健康に関する備え(健康の維持・増進、介護予防、保険、病気やけがの治療等)」だった。回答者の実に約8割(80.7%)が選択している※。他の選択肢と比較して圧倒的に高い。

※複数回答

約8割が選んだ最優先の老後の備えは…?, 年代が上がるほど「資産形成」の優先度は下がる, 家族形態によって異なる備えの優先順位, 「防災・防犯意識」「地域とのつながり」が高いのは?

出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

次いで「終活関係の準備(自身の葬儀やお墓の準備、財産等の整理・相続の準備)」38.1%、「住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕等)」25.5%となっている。

一方で、意外にも「資産形成(貯蓄・投資)など」は24.2%と4番目にとどまっている。世間一般で老後の不安として語られることの多いお金の問題は、実際に高齢期を迎えた人々にとっては健康ほど優先度が高くないことが明らかになった。

なお、調査項目の選択肢のうち最も回答率が低かったものは「財産管理に関する備え(認知機能の低下等に伴う、財産管理の相談(金銭管理サービスの利用等))」で7.8%だった。

●関連記事「【60歳以上2188人調査】「保険」に入っている人はどのくらいか? 民間保険だけではない「備え」の実態」

年代が上がるほど「資産形成」の優先度は下がる

年代別の詳細な結果を見ると、さらに興味深い傾向が浮かび上がる。「資産形成(貯蓄・投資)など」を必要な備えとして挙げた割合は、年代が上がるにつれて明らかに低下しているのだ。

60〜64歳では男性の44.7%、女性の42.1%が資産形成を重視しているのに対し、85歳以上では男性8.6%、女性7.1%と大幅に減少する。これは高齢になるほど新たな資産形成よりも現有資産の活用などに関心が移っていくことを示唆している。

65歳以上を見ると、「資産形成(貯蓄・投資)など」と回答したが男性で23.9%、女性で16.2%となっている。全体では男性27.8%、女性20.5%であり、それぞれ3.9ポイント、4.3ポイント低い。65歳となると一般的に年金を受給し始める人が主流となり、ある程度収入が安定することで新たな資産形成への関心が薄れるのかもしれない。

約8割が選んだ最優先の老後の備えは…?, 年代が上がるほど「資産形成」の優先度は下がる, 家族形態によって異なる備えの優先順位, 「防災・防犯意識」「地域とのつながり」が高いのは?

出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

家族形態によって異なる備えの優先順位

調査では家族形態別でも分析をしている。結果として、同居する人の有無にかかわらず「健康に関する備え」が最優先されていることが分かった。しかし、その他の備えについては興味深い違いがある。

親と同居している人は「住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕等)」を重視する傾向がある(33.0%)。60歳以上の人の親となると、80代以上の世代だろう。そうした親世代との同居に伴う住環境の整備や、将来の相続を見据えた住宅改修などが背景にあると考えられる。

また「資産形成(貯蓄・投資)など」に関しては、ひとり暮らしの人では17.8%が備えとして必要だと回答しているが、親と同居している人では45.5%と大幅に高い割合を示している。世代間での経済的な支え合いや、将来の介護に備えた資金準備の必要性を感じているのかもしれない。

ほかにも、配偶者またはパートナーと同居している人は健康に関して備えが必要だと判断している割合が84.6%と特に高く、他の家族形態の人と比較しても健康への関心が強いことが分かる。このように自身を取り巻く環境によって何を重視するかがはっきりと調査結果に表れている。

「防災・防犯意識」「地域とのつながり」が高いのは?

なお、「防災・防犯に関する備え(住宅の防災対策、防災用品の備蓄、防犯システムの利用等)」については全体で21.6%が必要だと回答しており、資産形成(24.2%)よりもわずかに低い割合となっている。家族形態別に見ると、配偶者・パートナーと同居している人(23.2%)や子と同居している人(23.9%)が比較的高い意識を持っている。自然災害や犯罪による被害に対する不安は無視できない要素であり、特に家族と暮らす人々はその安全対策にも関心を向けていることがうかがえる。

そのほか、「地域・職場等で人とのつながりを持つこと」を必要な備えとして挙げた人は全体で12.4%と決して高くはないが、ひとり暮らしの人では14.5%と若干高くなっている。孤独や孤立が社会問題となっており、単身高齢者にとって地域社会との関わりが重要な支えになっているようだ。

老後の備えとして多くの人が頭を悩ませる「お金」の問題だが、実際に高齢期を迎えている人の間では健康維持や住まいの確保など、生活の質を維持するための多様な要素が重視されていることが明らかとなった。年齢や家族構成によって優先順位は異なるものの、「健康」という財産の重要性は万人に共通している。

老後に向けた備えを考える際には、資産形成だけでなく、健康維持や生活環境の整備、人とのつながりなど多様な視点から準備を進めることが大切だ。

調査概要 白書名:令和7年版高齢社会白書 調査主体:内閣府 公表日:2025年6月10日

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。