「マイル侍」が44秒台トリオを軸に悲願のメダル目指す…抜きつ抜かれつの1600メートルリレー

 陸上の世界選手権東京大会は9月13日に国立競技場を主会場に開幕する。東京での開催は34年ぶりとなる大会で注目される競技の見どころに迫る。(デジタル編集部)

 最終日の21日に男女の決勝が行われる1600メートル(4×400メートル)リレーは4人でバトンをつないで合計1600メートル(約1マイル)を走るので「マイルリレー」とも呼ばれる。主要国際大会では大会終盤に行われることが多く、抜きつ抜かれつの展開で熱く盛り上がる人気種目だ。

 日本チームは2022年世界選手権オレゴン大会では、初の2分台となる2分59秒51で過去最高の4位、24年世界リレー大会でもメダルまで0秒04差の4位、パリ五輪ではアジア新記録で6位と、近年は世界の表彰台にもう少しのところまで肉薄しており、東京大会で悲願のメダルを狙う。

メダル獲得へのカギを握るか、「44秒台トリオ」

2024年パリ五輪で決勝進出を果たした日本チーム(左から、中島佑気ジョセフ、川端魁人、佐藤風雅、佐藤拳太郎)

 その柱となるのは400メートル走で着実に記録を伸ばしてきた「マイル侍」たちだ。400メートルの日本記録は1991年に高野進さんが作った44秒78が長年破られなかったが、23年世界選手権ブダペスト大会予選で佐藤拳太郎が100分の1秒上回る44秒77をマークして32年ぶりに記録を更新、佐藤風雅も44秒97と好走して、2選手が44秒台に仲間入りした。そして今年8月には、中島佑気ジョセフが日本歴代3位となる44秒84をマークした。

 スピードが武器の100メートルや200メートルの選手が選ばれることもあり、リレーという種目の特性上、その時々の戦略や競技スケジュールなど様々な要素によって人選や走順などのチーム構成が決まる。日本が5位だった1996年アトランタ五輪では、200メートルで準決勝に進出して400メートルリレーにも出場した伊東浩司が2走を務めた。2014年アジア大会は、予選で4×100メートル代表の高平慎士が、決勝では200メートルが本職の飯塚翔太がメンバーに入って、金メダルを獲得した。

1走は安定感、2走はスピード型……

1600メートルリレーでは第2走者の途中からオープンレーンになり、抜きつ抜かれつの展開に。パリ五輪の予選で力走する日本のアンカー、佐藤拳太郎

 日本選手権の400メートルで11連覇の偉業を打ち立て、マイルリレー代表としても五輪や世界選手権に出場した金丸祐三さん(大阪成蹊大女子陸上部監督)は4人の走者に求められることとして「第1走者=安定感、第2走者=スピード型、第3走者=競り合いに強い、第4走者=後半に強いタイプがそれぞれ選ばれやすい」と話す。

 主要大会では、第1走者は決められたレーン(セパレートレーン)を走る。2走はバトンを受けて第2コーナーを回ったバックストレート以降は「オープンレーン」になり、自由なレーンを走ることが出来る。3走、4走のバトンパスでは、前の走者が200メートルを通過した順位によって、スタート位置で内側から並んで待機する。

 オープンレーンや3走以降のバトンパスでは、競り合いの中で選手間の接触も想定される。当たり負けしないフィジカルやタイムをロスしないために走るテクニックも要求されるだろう。

 そのバトンパスで、金丸さんは日本チームの「うまさ」を評価する。「バトンを受ける選手は、渡す選手が減速することも考えて加速しなければならないが、日本はその流れがスムーズだ。海外の選手は足踏みをしていて、もらってからスタートという感じだが、日本は減速と加速のうまく交わるところでバトンパスをして、ロスを減らすようにしている」とみる。

初の表彰台へ…金丸祐三さんはこう見る

パリ五輪、1600メートルリレー決勝で力走する日本の第3走者、佐藤風雅

 近年、400メートルで、44秒台の記録を持つ「2人の佐藤」や中島佑気ジョセフといった世界の速い展開についていけるスピードランナーが増えたことが、マイルリレーの躍進に寄与している。3年前の世界選手権オレゴン大会での活躍が契機となり、「400メートルは、ただきついだけの種目」という先入観は薄まってきている。

 日本が悲願の表彰台に上るために、何が必要か。金丸さんはこう考える。「マイルリレーはレース展開に左右される。4×100リレーと違って、バトンミスで失格ということはほぼ起こりえないので、メンバー構成や走順などでいい展開を作ること。そして、気象条件は大事な要素で、追い風の恩恵をできるだけ受けられる条件が一番良い。400メートルでは、バックストレートが追い風の方が記録は出やすいと言われています。もし記録がでにくい条件であれば、3分台でもメダルを獲得できる可能性もあるが、現実的には、今の日本記録(2分58秒33)を超えたいですね」