ACL初参戦の町田ゼルビアも直面 「クラブ育成選手」は間に合うのか…でも中山貴夫ユース監督は焦らない

〈密着マーク・町田〉

 現代のサッカークラブは、ただ強ければいいわけではない。若い人材を育てるべしとする世界の潮流はアジアにも押し寄せ、国際試合では育てた選手の登録を当たり前のように求められる。今月開幕するアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)も例外ではなく、初参戦するFC町田ゼルビアは、その現実に直面している。(加藤健太)

◆良い選手を集めるだけでなく…

 ACLの出場にあたり、各クラブは、15~21歳の時期に延べ3年以上育てた「クラブ育成選手」を、最低2人登録しなければならない。もし満たせなければ、全体の登録可能人数を減らされるペナルティーを課せられる。

◆良い選手を集めるだけでなく…, ◆選手集めで苦労…町田周辺は「激戦区」, ◆トップチームの著しい成長が昇格のハードルに, ◆「トップ昇格前に海外から買われる選手を出したい」

ユース時代の教えを明かすFC町田ゼルビアの真也加チュイ大夢=5日、東京都町田市で

 こうしたクラブ育成選手を重視する方針は、強まる傾向にある。

 Jリーグによると、昨年は少なくとも1人という条件だったのが、今年は2人に増え、来年は4人、再来年はさらに増えると見込まれている。つまり、単に良い選手を集めてチームを強くすればいいわけではなく、クラブは育成力も問われている。

 町田の現状はどうか。在籍する選手のうち「クラブ育成選手」に該当するのは2人。いずれも高校年代の下部組織「ユース」からトップチームに昇格したDF樋口堅、MF真也加チュイ大夢だ。

◆選手集めで苦労…町田周辺は「激戦区」

 ただ、さらに多くの登録を求められる来年以降を見据えれば、さらなるトップ昇格は急務。しかし、ゼルビアユースが置かれた状況を考えると、そう簡単にはいかなそうだ。

◆良い選手を集めるだけでなく…, ◆選手集めで苦労…町田周辺は「激戦区」, ◆トップチームの著しい成長が昇格のハードルに, ◆「トップ昇格前に海外から買われる選手を出したい」

8月16日の町田ーC大阪戦の町田スタメン。J1の主力級が続々と加わり、選手の顔触れはがらっと変わった=8月16日、Gスタで(芹沢純生撮影)

 そもそも、ゼルビアユースは選手集めで苦労が多い。

 ホームタウンの東京都町田市の周辺は、Jリーグクラブが点在し、やはり下部組織も群雄割拠の様相を呈している。東京ヴェルディ、FC東京、川崎フロンターレのユースは、いずれも高校年代の最上位層「プレミアリーグ」に参戦する強豪で、中心選手はUー18(18歳以下)の日本代表に名を連ねる。

 対するゼルビアユースは、2階層下にあたる都道府県リーグの東京1部「T1」に所属。中山貴夫監督は「選手はみんなプレミアリーグで戦いたいし、良い選手は当然そっちを選んでいく」と実情を明かす。自前の練習グラウンドがないなど環境面の不利もある。

◆トップチームの著しい成長が昇格のハードルに

 さらに、来年から21歳以下を主な対象とした「Uー21 Jリーグ」(仮称)の創設が決まり、東京ヴェルディ、FC東京、川崎フロンターレのユースはそろって参戦を表明。ゼルビアユースにとっては、水をあけられることになり、選手集めの苦労に拍車がかかる可能性がある。

◆良い選手を集めるだけでなく…, ◆選手集めで苦労…町田周辺は「激戦区」, ◆トップチームの著しい成長が昇格のハードルに, ◆「トップ昇格前に海外から買われる選手を出したい」

オンライン取材で、FC町田ゼルビアユースを取り巻く現状を語る中山貴夫監督

 そして、トップチーム昇格のハードルを上げている要因の一つに、トップチームの著しい成長がある点も見逃せない。

 就任4年目の中山監督が「この4年で(状況は)大きく変わった」と話すように、J2だったトップチームは、ACL出場を果たすまで大きく飛躍した。選手の顔触れはがらっと変わり、今季はJ1の主力級が続々と加入。各国の代表選手と高め合う光景はクラブの日常になった。一方、ユース出身の樋口、真也加は、いまだ出場機会をつかめていない。

 トップチームの躍進が、かえってユース選手の活躍を難しくしてしまっているが、中山監督に焦りはない。むしろ、割り切った表情で、地道に取り組む姿勢を強調した。

◆「トップ昇格前に海外から買われる選手を出したい」

 「土台をしっかり作ることが、良いアカデミーで長くいられることのスタートになる。(東京)ヴェルディさんも、他のクラブも、長い年月をかけたからこそ、今の状況がある。一歩一歩やることが、一番の近道でもある」

◆良い選手を集めるだけでなく…, ◆選手集めで苦労…町田周辺は「激戦区」, ◆トップチームの著しい成長が昇格のハードルに, ◆「トップ昇格前に海外から買われる選手を出したい」

オンライン取材で、下部組織としての野望を語るFC町田ゼルビアの菅沢大我アカデミーダイレクター

 そして今、そうした心構えで積み上げてきた成果が表れようとしている。所属するT1リーグで優勝争いを繰り広げ、「プリンスリーグ関東2部」に初昇格する期待が高まっているのだ。

 着実に前進するゼルビアユースは、これからどんな姿に進化していくのだろうか。

 下部組織をまとめる菅沢大我アカデミーダイレクターは「育てた選手がヒーローになることを目標にしている」と力を込め、近い将来に成し遂げたい野望を語った。

 「トップチームで試合に出られる選手を増やし、その選手を海外のクラブに送り込みたい。もっと言えば、トップ昇格の前に海外から買われる選手を出したい。育成して万歳ではなくて、育成の対価を得られるようにしていかなきゃいけない。まだ、そのレールには乗れていないが、数年後にはそういう状態を作りたい」

 初めて手にしたACL切符は、変革期に立つクラブにさまざまな課題を突きつけることだろう。ただ、それは礎を築く機会であるとも言える。育成の厳しい現状に向き合えたことは、きっと今後の発展に役立つはずだ。

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