「女子大」の間にも格差、入試担当が明かす本音

今、女子大に行く生徒はどんな子なのか?(写真: つむぎ / PIXTA)
少子化の中で、私立大学の約5割は定員割れとなっている(日本私立学校振興・共済事業団「令和7〈2025〉年度私立大学・短期大学等入学志願動向」)。
【写真】昭和女子大は大学通信調べの2025年の実就職率ランキングで全国9位だった
中でも女子大の危機が報じられる。京都ノートルダム女子大は志願者数低下を理由に募集停止を発表し、全国に衝撃を与えた。関西を代表する女子大が共学化せず幕を閉じることを選んだのだ。
ある私立高校の進路指導の教諭は「かつて短大が淘汰された波が今、女子大に来ている。10年後には共学もそうなっていく」と言うがこうも続ける。「努力している女子大は残ります」と。
関東の女子大で早くから改革に努め、好調だと言われるのが昭和女子大と共立女子大だ。女子大の中ではいち早く経営系の学部や建築学部を設置し、女子学生のニーズに応えてきた。
今回はこの2つの女子大の入試担当者、昭和女子大の松田忍氏、共立女子大の渡辺篤氏とジャーナリストの杉浦由美子で「女子大の危機は本当か」ということについて話し合った。
学生確保に苦戦するのは「女子大だけ」か?
杉浦由美子:女子大の危機が大きく報道されて話題になっていますが、反応は大学にも及んでいますか。
共立女子大・渡辺篤:いろいろなところで名刺交換すると「女子大は大変ですね」と声をかけられるんですよ。
杉浦:大学はどこも大変でしょう。
渡辺:説明会などで保護者の方とお話していると「こちらは定員は充足しているんですか?」と聞かれることがあります。以前はなかったことです。
杉浦:共立女子大や昭和女子大は好調な女子大と評価されていますが、いかがですか。
昭和女子大・松田忍:もちろん左うちわというわけではありません。でも、それは共学だって同じです。女子大離れというよりは「大学に行くなら女子大」という志向がなくなっているのかなと思います。
併願校を見ていても、かつては女子大だけを受験する受験生が多かったですね。大学に進学するなら、女子大がいい。だから、いくつもの女子大を受験していったわけです。今は共学と併願する受験生が多いです。
渡辺:うちも同じです。共立女子大を合格したのちに入学辞退をする学生の進学先を調べていますが、日東駒専や成成明獨國武に進学するケースも多いです。2025年はいちばん多かった辞退者の進学先は日本大学です。
松田:そうなんですよ。学生からすると共学も女子大も関係がない。自分が希望する学部をいくつか受けていくんです。経営学部志望の学生は共学の経営も受けて、うちのグローバルビジネス学部を受験してきます。

昭和女子大学 アドミッション部長の松田忍氏(左)、共立女子大学 大学事務部 入試・広報課長の渡辺篤氏(右)(写真:編集部撮影)
杉浦:中学受験と同じ傾向ですね。昔は女子校だけ受験する生徒が多かったけれど、今は共学と女子校を両方併願していくケースも多いです。グローバル教育に力を入れている学校を希望しているから三田国際と東京女学館を受ける女子もいます。
松田:まさにそういう感じですね。「女子大か共学か」ではなく、まずはやりたいことを優先し、大学名や女子大か共学かにはこだわらない学生が増えています。
渡辺:今の受験生は「どこの大学か」というよりも、何をやりたいかということを優先していると思います。女子大だから敬遠されることを気にするよりも、受験生にとって魅力的な大学であることが必要だと思います。進学したい学部があるとか、カリキュラムに魅力があるとか。
「女子大は就職がいい」だけでは生き残れない時代へ
杉浦:就職がいいのも女子大の魅力ですね。
渡辺:昭和女子大さんは就職の実績が本当にすばらしいですね。大学通信調べの2025年の実就職率ランキングでは全国の大学で9位です。
松田:ありがとうございます。就職活動を始めようとしない学生には教職員が声をかけるなどして頑張っていますからね。ただ、売り手市場ですから、就職のよさだけでは学生にピーアールできなくなっています。
杉浦:それは共学でも同じですよね。難関私大はどこも「昔は国立大学に合格しても就職がいいという理由でうちに来てくれたけれど、今は学費が安いという理由で国立大学に流れてしまう」という悩みを持っています。
松田:やはり大学はどこも大変で悩みは実は共通ということですね。うちも就職のよさ以外もアピールするために、ボストンキャンパスに提携校の生徒たちを連れて行くプログラムも実施しています。空港で迷子にならないようにおそろいのTシャツを作って着てもらっています。
渡辺:そういった大学の中身を高校生にアピールしていくことに関して、女子大には外部来校者に対してのセキュリティ面という課題もあります。学生の安全を担保しながら高校生のみならず社会全体に女子大をオープンにしていく工夫が必要です。
松田:多様化も重要だと思っています。留学生の数も現状はごく少数なので増やしていきたいと思っています。でも、そうすると、「女子大は学生が集まらないから留学生を増やそうとしている」と言われそうですね(笑)。
杉浦:何をやっても”女子大は苦しいから”って言われてしまうんですね。

昭和女子大は、大学通信調べの2025年の実就職率ランキングで全国9位だった(写真:昭和女子大提供)
指定校推薦で女子大に来る学生は…
杉浦:今や大学進学者の半分が推薦入試、女子に関しては6割が年内入試で進学先を決めていきます。提携校からは指定校推薦で入学する学生も多いでしょう。一方で共学の大学ですと、指定校推薦の入学者が退学をするケースも増えていると報じられています。
松田:昭和女子大に関してはすべての入試方法の中で指定校推薦の学生は、ほかの入試方法で入学した学生と変わらず十分な学力を備えています。
渡辺:共立女子でも指定校推薦組で退学はあまり見ないケースです。
松田:思うに女子大へ指定校推薦で入学してくる学生はモチベーションが高いんでしょうね。女子大は少数制で面倒見がいい反面、授業の出席やレポート提出など厳しいので、あえて女子大を選ぶような学生は「大学でちゃんと勉強したい」という意識なんでしょう。
杉浦:週刊誌の女子大の危機特集では“一般選抜率が高い分には救いがある”とありましたが、それはちょっと事実と違いましょう。指定校推薦で学力やモチベーションが高い学生が入学してくることは、それだけ大学にブランド力がある証拠です。ブランド力がないと指定校推薦で学生は集まりません。
渡辺:一方で指定校推薦だけに頼ることもできません。年内学力入試をいち早く去年から始めましたが、一般選抜では受験してこない難関女子校の生徒が受験してきて、しかも入学手続きをするのが特徴的でした。
松田:うちも年内学力入試は始めていますが、競争が激しくなるのでどうなるのかとは思っています。どちらにせよ、東洋大学のような定員500人の大規模な入試ではありません。

共立女子大では昨年から年内学力入試をいち早く始めた(写真:共立女子大提供)
杉浦:受験生にとってチャンスが増えることはいいことですよね。とくに併願(合格しても辞退ができる)化ですと受験もしやすそうです。
津田塾の総合型選抜が併願可能になったんですよ。高校の進路指導の教諭が「併願で津田塾を薦めると保護者が納得する」とのことでした。年内に女子大の合格を決めておきたいというニーズは高いと思います。保護者からすると女子大はイメージがいいんでしょう。就職はいいし、面倒見はいいし。
松田:進路指導の先生は女子大の味方ですね。大学の中身を見てくださるから、就職のよさや面倒見のよさを評価してくれます。
渡辺:ただ、その面倒見のよさをどう伝えるかが難しい。
杉浦:今は共学も面倒見いいですからね。早稲田も少数制で授業をしていますし、東大も新入生が大学になじむように上級生が面倒を見るそうです。
松田:うちは教職員と生徒の距離の近さが魅力だと思っています。各学部でインスタグラムをやっていますが学生達が自発的に運営してくれています。写真を撮るのも、文章を書くのも学生たちは得意なので助かっています。
杉浦:そういうアットホームさは女子大の魅力ですよね。
松田:新卒で入った会社が合わなくて、すぐに退職した卒業生がいたんですが、就職課の職員が電話していましたからね。
杉浦:さすが就職ランキング9位ですね。
定員が充足しているうちに「共学化」は考えているのか?
杉浦:最後にお聞きしたいのは共学化についてです。関西では好調な女子大の代表格である武庫川女子大学が共学化を発表しました。そうなると関東では昭和女子大や共立女子大も定員が充足しているからこそ、共学化するのではないかという推測も私たちメディアはしていまいますが。
渡辺:共学化して成功させるのはそう簡単ではありません。それよりは女子大としてのよさを追求する方が質の高い教育ができ、学生も集まってくると考えています。
松田:そのとおりです。一方で、女子大であるメリットもちゃんと打ち出していく必要はあると思っています。ジェンダーギャップがあるから女子大は必要という考え方は今の学生にはわかりにくいものでしょう。
渡辺:私は女子だけの空間だとやりたいことに打ち込めるのが女子大のよさだと思っています。
杉浦:そういった女子大の魅力がより多くの受験生に伝わっていってほしいですね。今日はありがとうございました。