日本シリーズは阪神有利の見方が強いが… 気になるのはソフトバンクの「強打者復活」と「相性の悪さ」

 今年の日本シリーズは阪神とソフトバンクの対決に決まった。評論家の予想などを見ると、阪神が有利という見方が強い。

  *  *  *

 共にリーグを制覇し、CSファイナルステージを勝ち抜いた2球団だが、シーズンの戦いぶりは対照的だった。

 阪神は主力に大きな故障者を出すことなく、盤石の戦いぶりで首位を快走。2位以下に10ゲーム以上の大差をつけ、9月7日に最短優勝を決めた。CSでもファーストステージを勝ち上がったDeNAに3連勝と一蹴。藤川球児監督は試合後の勝利監督インタビューで日本シリーズに向けて聞かれると、「次は、あと4つです。あと4つ取れば。日本シリーズ頑張ります!」とファンに高らかに誓った。

 一方、ソフトバンクのリーグ連覇を目指す戦いは試練からのスタートだった。栗原陵矢、近藤健介、柳田悠岐、今宮健太と主力に故障者が続出。山川穂高も打撃不振から状態が上向かず、春先は単独最下位に沈んだ。だが、柳町達、野村勇、川瀬晃とバックアップだった選手たちの奮闘でよみがえる。正捕手だった甲斐拓也が巨人にFA移籍したが、海野隆司が投手陣を引っ張った。5月以降は6カ月連続勝ち越してV字回復。日本ハムとの熾烈な優勝争いを制した。

 ソフトバンクがCSファイナルステージで日本ハムを退けた際、絶対的な左腕モイネロの存在が大きかった。ソフトバンクがアドバンテージ分の1勝を含めて一気に王手を掛けながら、その後に日本ハムに3連敗。この窮地を救ったのが中4日で先発登板したモイネロだった。最終戦に7回3安打1失点の快投を見せてチームは2-1で逃げ切り、2年連続日本シリーズ進出を決めた。

 試合を視察したメジャー球団のスカウトの言葉が、印象的だ。

「日本ハムからすれば、モイネロ1人に負けた感覚でしょう。CSファイナルステージではモイネロが登板した2試合に勝てなかった。投球内容を見ると決して本調子ではなかったと思いますが、ここぞの場面で投げミスをしない。縦に大きく割れるカーブは分かっていても打てない。スライダー、チェンジアップの精度も一級品です。直球が球威十分なので、変化球に意識を置きすぎると対応できない。日本球界でトップの投手だと思います。メジャーでも十分に通用しますよ」

■「本拠地・甲子園で3連勝もある」

 ソフトバンクはCS最終戦の20日にモイネロを中4日で先発登板させたため、25日からの日本シリーズでは、第1戦に2試合連続中4日でモイネロを先発させることは考えづらい。中5日の第2戦にモイネロが先発登板し、3勝3敗までもつれた場合は中6日で第7戦に向けて準備することが予想される。

 セ・リーグ球団のスコアラーはCSを踏まえて、「日本シリーズは阪神が有利です」と分析する。

「モイネロの登板が予想される第2戦を落としても、他の試合で勝てばいい。先発が予想される有原航平、上沢直之は好投手ですが、攻略が困難というイメージはない。共に変化球を巧みに使う配球術で、セ・リーグの投手に近い。阪神とすれば、直球で押してくるパワーピッチャーのほうが厄介だと思います。敵地・みずほPayPayの2連戦で1勝して、本拠地の甲子園に戻ってくれば一気に3連勝する可能性があると思います」

■パ・リーグにいないタイプの高橋遥人

 ソフトバンクを取材するライターは、阪神の強さを象徴する選手2人の名前を挙げる。

「やっぱり佐藤輝明ですよね。4番の佐藤が打つと、打線全体が勢いづく。後ろに控える5番の大山悠輔も勝負強くて厄介な強打者ですが、状況によっては佐藤との勝負を避ける選択肢も考えなければいけない。投手は高橋遥人です。エースの村上頌樹、才木浩人はいい投手ですが、攻略が最も難しい投手は高橋だと思います。CSファイナルステージの第3戦で8回途中までノーヒットノーランの好投を見せていましたが、好調の時はなかなか打てる球がない。直球は150キロ前後ですが、浮き上がるような軌道でコンタクトするのが難しい。落差が大きいツーシームが話題になりますが、スライダーも一度浮き上がった後に鋭く曲がる独特の軌道です。対戦が少ないので軌道をイメージするのが難しい。パ・リーグにいないタイプの投手です」

■日本シリーズでホークスに敗退続きの阪神

 では、ソフトバンクに有利な点はないのか。キーマンになりそうなのは、左脇腹痛で戦列を離れている近藤健介だ。CSファイナルステージには間に合わなかったが、小久保裕紀監督は日本シリーズでは近藤がチームに合流すると明かしている。近藤が復帰すれば打撃の厚みが一気に増す。スタメン出場するか、勝負所で代打の切り札として起用するか。23年には本塁打と打点の2冠、昨年は首位打者のタイトルを獲得し、経験値も高い選手なので、シリーズの流れを変える力を持っている。

 そして、相性の悪さも気になるところだ。阪神は日本シリーズで、ソフトバンク(ホークス)に過去一度も勝てていない。阪神は日本シリーズに7度進出し、ホークスと3度対戦したが、いずれも敗退した。1964年には南海に3勝4敗、2003年はダイエーにお互いに本拠地で勝つ史上初の「内弁慶シリーズ」で3勝4敗、14年はソフトバンクに1勝4敗で、日本一を逃している。

 阪神有利という見方が強いなか、ソフトバンクは昨年の日本シリーズで敗れた雪辱を果たせるか。小久保監督がドラフト会議を欠席し、日本シリーズの準備に専念することからも決意の強さが感じられる。果たして、頂点に輝く球団は――。

(ライター・今川秀悟)