SNSでバズった「スケボーに乗る亀」と子猫の関係

スケボーに乗る亀、軍曹くん(写真提供:あめちさん)
スケボーに乗る亀
亀がスケートボードに乗っているーー、思わず動画を二度見してしまう。スケボーに乗った亀が、猫を追いかけている。その顔もまた、シュールでいい。斜め前方に首を逸らせ、口をへの字に結び、ボディボードをこぐように4本の足で床を掻く。方向転換もお手の物だ。
【写真】子猫の小雪ちゃんに求愛する、クサガメの軍曹くん
この『スケボー亀』の正体は、クサガメの軍曹くん。3年前の夏、アスファルトで「干し亀」になっているところを、あめちさん(仮名)に拾われた。
そして2023年10月、軍曹くんは突如『スケボー亀』としてネットをにぎわすことになる。
「草亀」あるいは「臭亀」
「クサガメ」ーー。漢字では、「草亀」もしくは「臭亀」と書く。中国大陸原産の亀で、「臭い亀」の由来は、危険を感じると強烈なにおいを出すからだという。しかし、飼い主のあめちさん曰く、軍曹くんは無臭。しいて言えば水道水のにおいがするくらいらしい。
亀というと、東京ディズニー・シーのアトラクション『タートル・トーク』のクラッシュを想像するかもしれないが、クサガメとウミガメではビジュアルがだいぶ異なる。クラッシュが陽気な欧米人だとすると、クサガメは中国の仙人のような面立ちだ。水陸両用の足には地を這うための爪が生え、肌は硬質でざらついていて、爬虫類の仲間であることを強く印象づける。かわいい、と思えるまでに時間がかかる人も多いかもしれない。

軍曹くんの水槽。大きさは甲羅10個分が目安。水槽のなかは水辺と陸地にわかれ、陸地では甲羅を乾かせるようにUVBライトが設置されている(写真提供:あめちさん)
オスは15cm程度、メスの方が大きく、25cm程度まで成長するという。寿命は20年から40年程度と、飼い始めたら夫婦よりも長い付き合いになる可能性がある。
【クサガメ飼育に必要なもの】
・水槽
・甲羅を干すための陸地
・フィルター
・UVBライト
・ヒーター(冬場)
・亀用のエサ
・水温計・陸地温度計
初期セットは1万5000円程度だが、水槽は亀の成長に合わせて広いものにしなければならない。
「ガラス製の水槽だと、重くて水を換えるのが大変なので、プラスチック製の衣装ボックスを水槽代わりにしている飼い主さんも多いですよ。甲羅を干すための陸地も、うちは最初のころは家にあった器をひっくり返して代用していました」
最初からすべてを揃えなくても、必要に応じて買い足したり、他のもので代用するのも可能だという。また、あめちさんは亀を保護したが、ペットショップでは1000円から4000円と、手ごろな価格帯で購入できる。亀用のエサは、100グラム程度あれば1カ月から2カ月もつ。月1000円以内には収まる金額だ。
真夏に拾った亀
正直、爬虫類は苦手だったと言うあめちさん。2022年8月末、炎天下の福岡を夫と歩いていると、アスファルトの上に奇妙な岩を見つけた。よく見ると少しずつ動いている。のぞいてみると、真っ白に干からびかけた亀だった。
「車通りが多いところだし、危ないと思って、とりあえず水を張ったビニール袋に亀を入れて持ち帰ったんです」
近くには池も沼もない。もしかしたらどこかで飼われていた亀が逃げ出したのかもしれないと、あめちさんは警察に通報する。亀の種類はわからなかったが、Googleレンズで写すと「クサガメ」と表示された。
「警察の方に伝えたら、クサガメは外来種なので、池に放すわけにはいかないって。3カ月飼い主が現れなかったら、そのまま引き取るか、保健所に連れていくかどちらかだと言われました。保健所ってことは、たぶん殺処分になるんですよね。それはかわいそうだと思って、しばらくはうちで飼い主を探すことにしたんです」
そのときすでに、あめちさん宅には猫のモナちゃんがいたので、念のため居住空間を分けて飼育することに。亀の飼育方法は、モナちゃんのインスタグラムやXアカウントを使って、フォロワーに教えてもらったという。
「最初は亀のお腹の模様が怖かったんです。でも、世話をしているうちに愛着がわいて、かわいく思えるようになりましたね。水に入れてやると、手足を器用に動かして泳ぐんです。それがなんだかたまらなくコミカルで」

爬虫類が苦手なあめちさん。最初は軍曹くんが怖かったという(写真提供:あめちさん)
その顔も、最初は怖かった。しかしよくよく見ると、カエル(をモチーフにした宇宙人)のキャラクター『ケロロ軍曹』にそっくりだった。
「カエルじゃないから『ケロロ』はないよね。じゃあ、『軍曹』にしよう!」
こうして、夫と義両親、猫のモナちゃん、クサガメの軍曹くんの、4人と2匹の生活が始まった。

よく見ると顔が「ケロロ軍曹」に似ていることから、「軍曹くん」と命名(写真提供:あめちさん)
正式に家族の一員に
クサガメ軍曹くんは、専業主婦であるあめちさんが中心に世話をした。世話といっても2、3日に一度、水槽を洗うことぐらい。かわいいと思えるようになってからは世話も楽しかった。最初はモナちゃんが軍曹くんを襲うのではないかと心配したが、モナちゃんの方が軍曹くんを怖がって、近づこうとしなかったそうだ。
あめちさんはSNSでアドバイスを受けながら、軍曹くんの環境をブラッシュアップしていった。亀は冬眠するが、それを飼育下で再現するのはとても難しい。冬眠前に十分にエサを与えて体力をつけさせ、冬眠直前に絶食させる必要があり、亀の体に大きな負担がかかる。冬眠させるつもりが、そのまま永眠してしまう個体も少なくないという。
あめちさんは冬眠させないことを選び、冬場は水温が下がりすぎないよう水槽にヒーターを設置し、紫外線を当てるためのライトも追加で購入した。

冬眠させないよう、冬はヒーターで水槽内の温度を温かく保つ工夫も(写真提供:あめちさん)
「本当は外で日光浴をさせてあげるのがベストなのですが、うちの周辺には地域猫がたくさんいるし、カラスもいるので、危なくて出せないんです」
とはいえ亀は甲羅を完全に乾かさないと発育不良が出てしまうため、定期的に水槽から出して、「部屋んぽ」をさせているという。
そして預かり期間の3カ月が過ぎた12月、軍曹くんは正式にあめちさんの家族となった。そして同じ月、もう1匹の家族が加わることとなる。
パートナー猫「小雪」ちゃんとの出会い
2022年12月25日、福岡に雪が降ってホワイトクリスマスとなった日に、その子はやってきた。
「私が住む地域では、野良猫に避妊手術を施して、地域猫としてみんなで飼う習慣があります。うちの庭にも、よくハチワレ猫がご飯をねだりに来ていたんです」
しかし、その日庭先に現れたのは、いつものハチワレだけではなかった。モナちゃんにそっくりな柄の子猫が一緒だったのだ。
「もしかして、モナだと思って連れてきてくれたのかもしれません。扉を開けたら、その子だけが家の中に入ってきました」
小さな猫の体は、熱を持っていた。慌てて病院に連れていくと、猫風邪との診断を受ける。小さく弱った状態では、重症化して肺炎などを引き起こし、命に関わる可能性もある。動物病院で注射を3本打ってもらい、あめちさんは子猫を家で育てることを決めた。雪の舞う日にやってきたので、「小雪」ちゃんと名付けた。
「この子が、軍曹のことを大好きになってしまったんです」
初めて水槽越しに軍曹くんと対面したとき、小雪ちゃんはずっと軍曹くんを見つめ続けていた。あめちさんが水槽の隣に猫用のベッドを置いてあげると、1枚のガラスを挟んで、2匹はぴったり寄り添って眠るようになる。

迷い猫・小雪ちゃんは軍曹くんに興味津々。水槽の前から離れなかった(写真提供:あめちさん)
「冬場、大きな水槽に水を張らず、軍曹のために温かいベッドを入れてあげていたんです。そしたら、いつの間にか小雪ちゃんも水槽の中に入っていて。危ないかなって思って見ていると、眠っている小雪ちゃんの足に、軍曹が頭をこすりつけるようにフリフリし始めました」
それは亀の求愛ダンスだった。小雪ちゃんばかりが軍曹くんを追いかけているように見えたが、実は相思相愛だったのだ。
そしてこの2匹の関係が、あめちさんの人生に大きな変化をもたらすこととなる。

種を超えて仲良しになった亀の軍曹くんと猫の小雪ちゃん(写真提供:あめちさん)