阪神・佐藤輝明の後継者はドラ1の立石だけではない 他球団が警戒する意外な「スラッガー候補」の名前

両リーグの覇者が激突した日本シリーズは、ソフトバンクが阪神を4勝1敗で退け、5年ぶりの日本一に輝いた。5試合中4試合が1点差ゲームだったが、スコア以上にソフトバンクと阪神の力の差を感じたシリーズだった。
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象徴的な試合が第5戦だ。2点差を追いかける8回1死一塁で柳田悠岐が左翼のポール際に同点2ラン。延長11回には野村勇が右翼に決勝打となる勝ち越しアーチを放ち、勝負を決めた。
「石井大智が柳田に2ランを打たれた球は外角低めの直球で決して甘い球ではなかった。この時期は浜風で押し戻されないとはいえ、野村勇も柳田と同様に逆方向の右翼へアーチを放っている。両チームのスイングに力の差を感じましたね。阪神は佐藤輝明以外に怖さを感じる打者がいなかった。特に6番以降は明らかに打力が落ちる。来年に向けての大きな課題です」(スポーツ紙デスク)
阪神打線は和製クリーンアップの森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔への依存度が高い。だが、今年2冠に輝いた佐藤は将来のメジャー挑戦を希望している。大山が今年で31歳を迎える状況を考えると、クリーンアップを担う強打者の台頭が待ち望まれる。
今秋のドラフトで、3球団が1位で競合したアマチュア球界No.1スラッガーの立石正広の当たりクジを引き当てたのは明るいニュースだ。だが、阪神を取材するライターは「将来のスラッガー候補」として、別の選手の名前を挙げる。投手から野手転向することが決まった西純矢だ。

■右肘を手術して今季は実戦登板なし
西は2019年に創志学園高(岡山県)から投手としてドラフト1位で入団すると、高卒3年目の22年に自己最多の6勝をマークした。だが、その後は度重なる故障や投球フォームの試行錯誤で伸び悩んだ。今年は春季キャンプ中に右肘の違和感で離脱し、手術を受けてリハビリに打ち込み、実戦登板はなかった。10月に野手転向が発表され、来年は育成契約の見込みとなっている。11月1日から高知・安芸で始まる秋季キャンプでは、外野手として参加メンバーに名を連ねている。
「守備、走塁の技術を磨かなければいけないので、レギュラーをつかむまでには少し時間が掛かると思いますが、打撃センスはピカイチです。27年からセ・リーグで指名打者制が導入されますし、起用法の幅が広がる。楽しみな選手の一人です」(前出のライター)
投手として大成できなかったが、西は高校のときから打撃の評価も高かった。高校通算25本塁打をマークし、3年で出場したU-18代表のW杯では本塁打王に輝いた実績がある。パ・リーグ球団のスカウトが振り返る。
「ウチは投手より野手としての評価のほうが高かったですね。内角のさばき方が抜群にうまい。左肘をうまく抜いてバットの芯でコンタクトするのですが、教えられてできる技術ではない。引っ張りだけでなく、逆方向に飛ばせる。阪神OBで打点王や首位打者のタイトルを獲った今岡誠さんと重なりますね。あと、足が速くて肩も強い。走攻守3拍子揃った選手として、大きな可能性を感じました」
阪神には投手として入団したため、プロ入り後は打撃練習の機会が限られたが、天才的な打撃センスの片鱗を見せてきた。投手ながら打力を買われて8番でスタメン起用された22年5月18日のヤクルト戦では、左腕・高橋奎二の150キロ直球を左翼席に弾丸ライナーで運ぶプロ初アーチを放ち、投げても1失点でプロ初完投勝利を挙げ、投打の二刀流で躍動した。

■「数年後にはクリーンアップでも不思議ではない」
同年のCSファーストステージで対戦したDeNA戦では、第3戦で救援登板した後に打席に入ると、左腕・エスコバーの内角に食い込む155キロ直球を左越えに運んで二塁打にした。他球団の打撃コーチは警戒を強める。
「打撃練習をほとんどしていないのに、150キロを超える直球をきっちりはじき返すのはあり得ない。エスコバーは野手が直球に狙いを絞ってもきっちりはじき返すのが難しい投手です。西は懐が深く、体の軸がブレないので変化球にも対応できる。投手としても非凡なセンスを感じさせましたが、野手のほうが能力を発揮できると思います。数年後にはクリーンアップを担っても不思議ではありません」
西は25歳になる来年のシーズンが野手に挑戦する初年度になるが、同じタイミングで投手から野手に転向して大輪の花を咲かせた選手がいる。阪神でチームメートだった糸井嘉男だ。2003年に日本ハムに自由獲得枠で投手として入団したが、制球難で鳴かず飛ばず。大卒3年目の06年から外野手に転向すると、身体能力の高さと並外れた練習量で素質を開花させた。首位打者、盗塁王を獲得したほか、ゴールデングラブ賞を7度受賞。09年から6年連続で打率3割、20盗塁、ゴールデングラブ賞を達成したが、これは史上初の快挙だった。
投手から野手に転向して成功するケースは一握りという厳しい現実はあるが、西の打撃の素質は多くの球界関係者が認めている。同じU-18代表で切磋琢磨した同学年の佐々木朗希(ドジャース)や宮城大弥(オリックス)が活躍する中、投手のキャリアに区切りをつけた西の新たな挑戦が始まる。
(ライター・今川秀悟)