ドジャースのエース山本、ワールドシリーズの歴史塗り替える

最後のアウトを取り、ドジャースが2年連続優勝を決めた瞬間の山本由伸投手
山本由伸投手の腕は、おそらく人生で最も重要な先発登板を終えてからまだ十分にクールダウンしていない状態だった。だが、彼の心は既に次に向かっていた。
ロサンゼルス・ドジャースがワールドシリーズ第7戦まで24時間を切る中、山本は準備を整えていたかった。
第6戦で96球を投げたばかりであることは関係なかった。デーブ・ロバーツ監督が起用を否定していたことも関係なかった。ドジャースを2年連続優勝から隔てるものはわずか1勝。チームが自分を必要とするなら、山本はマウンドに立つつもりだった。
ドジャースが山本を必要としていたと言うだけでは、1日の夜に起きたことを大いに過小評価することになる。山本がワールドシリーズ史上最も勇敢で、信じがたい鉄人パフォーマンスの一つを披露していなければ、トロント・ブルージェイズが今頃パレードの準備をしていたというのが本当のところだろう。
山本は1日も休養せずに、第7戦にリリーフ登板して34球を投げ、アウト8個を取った。ドジャースは延長11回の末にこの戦いを制し、2020年以降3度目となるワールドシリーズ優勝を手にした。

山本はワールドシリーズMVPに選ばれた
山本はワールドシリーズMVPを獲得した。これは、ドジャースが昨シーズン前に彼を日本から獲得するために3億2500万ドル(当時のレートで約463億円)を支払った理由を実証した素晴らしいポストシーズン(PS)にふさわしい結末だった。この27歳の右腕はPS6試合37回1/3イニングを投げ、防御率1.45の成績を残した。山本は2001年以来、PS2試合連続完投を達成した初の投手となった。また、ドジャースのワールドシリーズ4勝のうち3勝に貢献した。
「スポーツ全体で見ても、これは優勝決定戦で披露された最高のパフォーマンスの一つとして歴史に残るだろう」とドジャースのマーク・プライアー投手コーチは述べた。
山本は1日の朝に目を覚ました時、貢献することが不可能ではないと感じるほど体調が良かった。球場でキャッチボールをした後、彼は確信した。第7戦が始まる前、山本が選択肢であるという話がドジャースのフロントオフィスとコーチングスタッフの間で広まり始めた。
徐々にドジャースの他の投手たちにも伝わった。中にはソーシャルメディアの投稿を見て知った者もいた。彼らはそれが実際に起こり得るとは信じられなかった。
「それは形式的なものだ」とリリーフ投手のウィル・クラインは思った。「今日、彼が投げるはずがない」
その後、試合途中のある時点で山本がブルペンに向かい、ウォームアップを始めた。突然、彼が登板するという考えはもはや冗談ではなくなった。「『え、これって本当なんだ』といった感じだった」とクラインは話した。

ワールドシリーズ第7戦でブルージェイズに勝利した後、喜ぶドジャースの山本(トロントで2日)
山本はそれほど確信していなかった。ブルペンで投球を始めた時は、自分が最善の投球ができるかどうか確信が持てなかったという。
それでもドジャースは、山本がベストな選択肢だと判断した。ロバーツ監督はほぼ不可能な状況で彼を呼んだ。9回裏、走者2人、1死同点の場面だった。山本は最初に対戦した打者にデッドボールを与え、満塁にした。
しかし彼は落ち着いた。ゴロとフライでピンチを脱出した。延長10回を三者凡退に抑え、試合は11回に突入した。捕手のウィル・スミスがホームランを放ってドジャースがリードを奪い、勝利の瀬戸際に立った。ロバーツ監督は次に何をすべきか確信が持てなかった。エースの長期的な健康を損なうことを心配していた。
山本はロバーツ監督に「大丈夫」と言った。そして再び、シーズンがかかった場面でマウンドに向かった。
11回裏は楽ではなかった。ブルージェイズのウラジーミル・ゲレロが先頭で二塁打を放ち、アイザイア・カイナーファレファがバントで彼を三塁に送った。アディゾン・バーガーに対しては四球となり、1死一、三塁となった。
次に打席に立ったアレハンドロ・カークは、強打だが足があまり速くない捕手だった。ボール0、ストライク2のカウントで、山本は外角に92マイル(約148キロ)のスプリッターを投げた。カークはそれを地面にたたきつけた。ドジャースのムーキー・ベッツ内野手がボールを捕らえ、二塁を踏み、一塁に送球してダブルプレーとした。

山本は9回裏、走者2人、1死同点というほぼ不可能な状況で登板した
山本は雄たけびを上げ、帽子を取り、両腕を突き上げて空を見上げた。スミスが駆け寄り、彼を抱きしめ持ち上げた。その瞬間の山本の腕の感覚は計り知れない。
「彼はロボットか宇宙人なので、問題ないと感じているかもしれない」とドジャースのジャスティン・ロブレスキー投手は語った。
これは山本にとって歴史に残る新たな偉業となった。彼は2021年の東京五輪で日本を金メダルに導いた。翌年にはオリックス・バファローズを日本シリーズ優勝へ、その翌年には日本をワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝へと導いた。
それは、山本が米国のプロ野球で1球も投げたことがなかったにもかかわらず、MLB史上、投手に与えられた最大の契約に彼が値するとドジャースを確信させるのに十分だった。山本はドジャースでの2シーズンで、ワールドシリーズ連覇という偉業を成し遂げた。
ドジャースのオーナー、マーク・ウォルター氏は「あのような投手はめったに現れない」と話した。
ワールドシリーズ第7戦での活躍を見れば、山本は契約金に値すると言って間違いない。