巨人がFAの松本剛、則本昂大の調査開始 他球団の注目は「お宝の山」から出てくる「人的補償」

 今オフのFA権行使選手が8人で確定した。日本ハム・松本剛、楽天・辰己涼介、DeNA・桑原将志と3人の外野手がFA権を行使し、外野が補強ポイントとなる球団の動きが注目される。

「3人の選手はいずれも本職がセンターです。すでに巨人が松本を調査していることが複数のメディアで報じられています」(スポーツ紙記者)

 松本は今季66試合出場で打率.188、0本塁打、7打点と不本意な成績に終わったが、22年には打率.347で首位打者を獲得した実績があり、外野の守備能力も高い。日本ハムOBは「スタメンで出続けられず、コンディションを整えるのが難しい部分があったと思います。日本ハムの外野陣は選手層が厚く、競争が激しい。出場機会を考えるなら他球団への移籍は考えられる選択肢です」と語る。

 巨人は今年センターを固定できず、起用した選手は12人に上る。若林楽人、佐々木俊輔、オコエ瑠偉、浅野翔吾らにチャンスを与えたがレギュラーを勝ち取るには至っていない。チーム内の競争を活性化させる観点から見ても、実績十分の松本は魅力的な存在だ。

 リーグ優勝を飾った阪神に15ゲームもの差をつけられた3位でシーズンを終えた巨人は、現有戦力の底上げと共に積極的な補強策に動く可能性が高い。松本以外にも日本球界復帰を決断した前田健太、海外FA権を行使した楽天・則本昂大の獲得に向けて調査を進めている。

「不動の4番・岡本和真がポスティングシステムでメジャー挑戦が決まり、打線の破壊力が落ちるのは避けられない。岡本の代わりになる選手はなかなか出てこないですから。阪神との差を埋めるためには、投手陣再建を含めたディフェンスの強化がポイントになります」

 巨人は昨オフもソフトバンクからFA権を行使した甲斐拓也、中日の守護神だったライデル・マルティネス、球界を代表する右腕として日米で活躍した楽天・田中将大とビッグネームを次々に獲得している。他球団の編成担当は「積極的な補強に動くことに驚きはないです」と言いつつ、注目ポイントは別にあると話す。

「気になるのは人的補償で移籍する選手です。巨人のファームを見ると、『宝の山』と形容できるほど、将来が楽しみな若手が多い。巨人は過去に苦渋の決断で実績のある選手をプロテクトのリストから外した時があります。誰を外すか頭を悩ませると思いますよ」

■人的補償の選手のほうが活躍した例も

 FA選手が所属球団の年俸の上位10位以内の場合、獲得する球団から旧所属球団に人的補償が発生する。人的補償をすることになった球団は、外国人選手とその年のドラフトで指名された選手を除く28人の選手しかプロテクトできない。松本、則本はいずれも、獲得すると人的補償が必要になるランクの選手だ。

 人的補償の人選でFA補強を上回る衝撃が走ったのが、2018年オフだった。巨人は広島から丸佳浩、西武から炭谷銀仁朗(現西武)をFAで獲得したが、人的補償で長野久義が広島、内海哲也が西武に移籍した。投打の功労者だっただけに、一報を聞いて涙を流すファンの姿もあった。当時の巨人を取材していたテレビ関係者が振り返る。

「内海、長野は共に成績が下降線をたどり、先発の柱や絶対的レギュラーという位置づけではなくなっていた。将来を嘱望される若手の育成を考えるとプロテクト枠がすぐに埋まってしまう。戦力の整備としてやむを得ない決断でしたが、2人は『チームの顔』と言える人格者で、ナインの人望が厚かった。人的補償の話を聞いて、選手たちも戸惑っていたのが印象的でしたね」

 FAで獲得した選手より、人的補償で放出した選手が活躍して痛手を被ったこともある。05年オフに中日からFA宣言した野口茂樹を獲得したが、故障が多く在籍3年間で1勝のみと活躍できなかった。一方、野口の人的補償で巨人から中日に移籍した選手が捕手の小田幸平。当時の落合博満監督は小田の入団が決まって、「大もうけと言っていいんじゃないかな」と発言したが、まさにその通りの結果になる。正捕手の谷繁元信に次ぐ2番手捕手として、巧みなリードで投手陣を引っ張った。中日に9年間在籍し、3度のリーグ優勝に貢献。07年に日本一を経験した。他球団のスコアラーは小田についてこう語る。

「谷繁さんとは違うリードで投手の良さを引き出してくる。対策が必要になるので厄介でしたよ。ブロッキング、キャッチング能力が高く、守りの野球を掲げる中日にフィットする選手でした」

■人的補償で移籍した広島で優勝に貢献

 広島の救援投手として活躍した一岡竜司も巨人からFAの人的補償で移籍した選手だった。巨人では2年間在籍して通算13試合登板で未勝利だったが、13年オフに広島から巨人にFA移籍した大竹寛の人的補償として広島に移ると、セットアッパーとしての素質を開花させた。移籍1年目の14年に31試合登板で2勝2セーブ16ホールドをマーク。広島には9年間在籍し、球団史上初の3連覇を達成した16~18年の3年間では145試合に登板、12勝3セーブ42ホールドと貢献した。

 FAで移籍した選手と共に、人的補償で他球団に移籍する選手も新たな野球人生がスタートする。今オフはどのような移籍劇が繰り広げられるだろうか。

(ライター・今川秀悟)

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