阪神の伏見獲得はFA級補強、巨人・山瀬はメジャーならトレード? トレード少ない日本球界

今月14日に日本ハムと阪神の間で、伏見寅威捕手と島本浩也投手の交換トレードが両球団から発表されたが、日本球界はメジャーに比べてトレードが頻繁に行われているとは言い難い。
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NPBが12球団なのに対しメジャーは30球団あり、選手数も大きく違う。メジャーでは登録日数が6年を超えると選手は自動的にFAとなる。そのため球団サイドは必要な選手とはFA前に新たに複数年契約を結ぶ。条件面で折り合いがつかなかったり、戦力として必要不可欠でないと判断したりした場合はトレードで放出するため、必然的にその数が多くなる。さらに、あるメジャーリーガーの代理人は「トレードに対する考え方の違いも大きいと思います」と指摘する。
「メジャーでは『必要とされている球団に行く』とプラスに捉えられますが、日本の場合は『必要とされていないので出される』とネガティブなイメージでとらえられる。今回の伏見と島本のトレードが象徴的です。伏見に対しては、『もったいない』という声がSNS上で見られました。ですが、伏見はシーズン中から出場機会が減っていました。チャンスが多く与えられる球団にトレードに出して、見返りに戦力が手薄なポジションを補強するのは当然です。今年のシーズン途中に巨人とソフトバンクの間で秋広優人、大江竜聖とリチャードの2対1のトレードが発表された時も、『秋広を他球団に出すべきではない』という指摘が多かった。期待されながら伸び悩んでいたリチャードと秋広がトレードで変わるきっかけを与えられたことがフォーカスされないのが不思議です」

そう話して、伏見についてはこう続ける。
「一方で今季、最優秀バッテリー賞を受賞した伏見を獲得した阪神はFAに匹敵する戦力補強だと思います」
メジャーはトレード期限の7月末を迎えると、トレードが盛んに行われる。地区優勝やプレーオフ進出を目指す球団は他球団から主力選手の補強を目指し、下位に低迷してチーム再建に切り替える球団は主力選手を放出して他球団の若手有望株を獲得する。前述したように日本と米国では選手層の厚さやFAのシステムが違うため、「買い手市場」と「売り手市場」に分かれてトレードを行う手法はなじまないかもしれない。ただ、メジャーでは不可解な日本の編成戦略に首をかしげるケースがある。メジャー東地区の球団スカウトが指摘する。
「日本は1軍で起用するタイミングがない若手を長期間保有するケースが目立ちます。これは非常にもったいないなと。例えば、根尾昂(中日)は野手から投手に転向しましたが、なかなか1軍で登板機会がない。他球団からの市場価値が高い時期に、トレードを敢行するべきです。山瀬慎之助(巨人)もそうです。ソフトバンクからFA権を行使した甲斐拓也と昨オフに5年契約を結んだ時点で、岸田行倫と2人で1軍の捕手を回すメドが立っている。山瀬は『次世代を担う正捕手』と言われていますが、5年後は29歳。1軍で起用するチャンスが与えられないまま月日が流れるなら、トレードの交換要員にして巨人の補強ポイントの投手や外野手を獲得した方が得策です。選手は1軍で活躍しない時期が長くなれば、需要がなくなっていく。各球団は水面下でトレードの交渉に動いているのかもしれませんが、成立したケースが少なすぎます。現役ドラフトが導入されましたが、選手の飼い殺しを防ぐためにもトレードがもっと盛んになってもいいと思います」

その巨人でトレードで素質を開花させた成功例として挙げられる選手が、大田泰示だ。ドラフト1位で巨人入りし、松井秀喜がつけた背番号55を継承したが8年間で9本塁打と伸び悩んだ。16年オフに吉川光夫、石川慎吾との交換トレードで、公文克彦とともに日本ハムに移籍すると、移籍1年目の17年に15本塁打をマーク。19年には打率.289、20本塁打、77打点と打撃3部門でキャリアハイの成績を残すと、翌20年はゴールデングラブ賞を受賞した。
巨人の番記者だったスポーツ紙記者は「巨人であのままプレーしていたら目立った活躍ができないまま、球界を去った可能性が高い。ドラフト1位で獲得した選手をトレードで放出するのは苦渋の決断だったと思いますが、その後のキャリアを考えるとトレードに出した巨人の選択は評価されるべきです」と振り返る。
トレードの対象となるのは若手だけではない。前出の代理人が提言する。
「日本では複数年契約を結んだ選手が活躍できずに不良債権になるケースがあります。メジャーのように獲得球団と年俸を折半するなど交渉がまとまれば、トレードの活性化が進みます。使い方次第でトレードは強力な戦力補強になるのですが……」
メジャー通算200勝以上をマークしているジャスティン・バーランダー(ジャイアンツ)、マックス・シャーザー(ブルージェイズ)は共にメッツと複数年契約を結んだが、1年目のシーズン途中にトレードで他球団に移籍している。メジャーの世界ではレジェンドのトレードも日常茶飯事だ。日本も下位に長年低迷している球団は、トレードの価値を見直す必要があるのかもしれない。
(ライター・今川秀悟)
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