競馬記者が見た『ザ・ロイヤルファミリー』(7)ドラマに出てきた「相続馬限定馬主」と「シャドーロール」で有名な馬主と競走馬といえば…

『ザ・ロイヤルファミリー』第7話の1シーン©TBSスパークル/TBS

俳優、妻夫木聡が主演を務めるTBS系日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(日曜後9・0)が放送中だ。競馬の世界を舞台に夢を追い続けた熱き人間と競走馬の20年にわたる壮大なストーリー。山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞をダブル受賞した、作家・早見和真氏による同名小説が原作のドラマをキャリア30年超の競馬記者が毎週の放送に合わせてレビューする。

『ザ・ロイヤルファミリー』第7話の1シーン©TBSスパークル/TBS

※以下、『ザ・ロイヤルファミリー』のネタバレが含まれます。

原作での「第二部 家族」がスタートした。山王耕造(佐藤浩市)の所有馬を非嫡出子の中条耕一(目黒蓮)に譲るためにドラマで出てきた「相続馬限定馬主」という制度とはどういうものか。ドラマでも説明があったが、ここで詳しく紹介する。

JRA(日本中央競馬会)の「馬主登録審査基準」に「相続馬限定馬主登録に関連する審査」という項目がある。

<登録馬主の死亡により、その相続人から、故人名義の競走馬のみを出走させるための馬主登録(相続馬限定馬主登録)の申請があった場合、登録の適否について、この基準により審査するものとする。ただし、第1の1の(3)に掲げる事項については問わない>

「第1の1の(3)に掲げる事項」とは2025年現在、<所得・資産の状況からみて、競走馬を継続的に調教師に預託することが困難であると認められる者(今後も継続的に得られることが見込まれる年間所得の額が1,700万円以上かつ資産の額が7,500万円以上の者は、上記に該当しない者として扱う。)>。ドラマでも説明した通り、所有馬を寄託する維持費を払う能力があれば、年間所得の額が1700万円以上かつ資産の額が7500万円以上は不問にするということだ。

『ザ・ロイヤルファミリー』第7話の1シーン©TBSスパークル/TBS

原作では「たとえ非嫡出子であったとしても、法的に正当な相続人でありさえすれば、その馬が引退するまでは馬主を続けることができるそうです」と、栗須が耕一に伝えるシーンがある。

相続馬限定馬主登録を利用した有名馬主に近藤旬子氏がいる。

日本ダービー馬アドマイヤベガ、朝日杯ジャパンカップなどGⅠ3勝のアドマイヤムーン、安田記念などGⅠ2勝のアドマイヤコジーン、芝・ダート双方のGⅠを制した〝二刀流〟アドマイヤドンなど「アドマイヤ」の冠号で知られる近藤利一氏が19年11月17日に死去。妻の旬子氏がこの制度を利用して所有馬を引き継いだ。同年12月8日、近藤利一氏名義の相続馬限定馬主として出走させたアドマイヤマーズが海外GⅠ・香港マイルを制覇。旬子氏はその後、2020年7月に自身名義で馬主資格を取得した。

『ザ・ロイヤルファミリー』第7話の1シーン©TBSスパークル/TBS

相続馬限定馬主の制度を利用して相続できるのは、馬主が死亡する前に競走馬登録がされている馬。耕一がただ一頭、相続したい馬は受胎どころか種付けもしていない父ロイヤルホープ、母ロイヤルハピネスの間で生まれる子供。JRAのトレーニングセンターに入厩することを条件に競走馬登録できるのは1歳11カ月から(競走馬は1月1日に年を重ねるので1歳の11月)だ。どんなに順調にいったとしても、山王耕造がロイヤルホープの最初の子を競走馬登録できるのは約3年後となる。

耕一は耕造に言った。

「だったら長生きしてください。あと3年生きてください。僕にホープとハピネスの子供を譲るまで、競走馬になる日まで、絶対に生きてください」

耕造が2頭の間に生まれた子供のデビュー戦まで頑張れたのは、息子の言葉があったからに違いない。

耕造がロイヤルファミリーと名付けた2歳馬は22年6月の東京芝1800メートル戦でデビューした。父のロイヤルホープ以上に気性の荒いロイヤルファミリーに陣営が装着したのはシャドーロールだった。

JRAのサイトにある「競馬用語辞典」で、シャドーロールはこう解説されている。

<頭絡の鼻革にボア状のものを装着したもの。芝の切れ目や物の影などに驚く馬に対し、下方を見えにくくして前方に意識を集中させる効果を期待して用いられる。また、競走中に頭を上げる癖のある馬に使用することによって、頭を下げさせ、馬を御しやすくする効果を期待して用いられることもある。>

かつて「シャドーロールの怪物」と呼ばれた名馬がいた。1994年の3冠馬ナリタブライアン。シャドーロールを初めて装着した93年11月の京都3歳ステークス以降、圧勝に次ぐ圧勝を続けたからだった。

このシャドーロール、今でこそアーモンドアイを管理していた国枝栄厩舎の所属馬が装着しているようにポピュラーな馬具になっているが、当時は知られた存在ではなかった。ナリタブライアンが装着して3冠馬に上り詰めたことがきっかけとなって使用頻度が高くなったと言っていい。

ロイヤルファミリーは新馬戦でオレンジ色のシャドーロールを揺らしながら鋭い末脚を発揮。椎名善弘(沢村一樹)の所有するディップバビロン(鞍上は今年、フォーエバーヤングに騎乗して日本馬&日本の騎手として史上初めてダート競馬の最高峰である米国GⅠ・ブリーダーズカップクラシックを制した坂井瑠星!)を差し切って白星を飾った。迫力あるレースシーンは見ものだ。

なお、この新馬戦でメインに使われた実際のレースは、坂井瑠星が手綱を取ったシュタールヴィントが2番手追走から直線で早めに先頭に立ち、2着に3馬身差をつけて快勝した22年11月5日の2歳未勝利(東京芝1800メートル)と思われる。

原作の「第一部 希望」で、早見和真氏は栗須にこう語らせている。

<競馬における一番の魅力は「継承」です。馬の血の、ジョッキーの思いの、そして馬主の夢の継承に他なりません。>

ロイヤルファミリーと耕一へバトンタッチされた「継承」の物語が大きく動き出した。(鈴木学)