藤川球児監督が「来年やれる手応えは全くない」と辛辣評価 若虎は覚悟決め、主力を脅かせ

秋季キャンプを打ち上げ、手締めをする阪神の(左から)井坪陽生、嶋村麟士朗、藤川球児監督、和田豊ヘッドコーチ、藤本敦士コーチ。手前は小幡竜平=11月17日、安芸市営球場(水島啓輔撮影)
「手応えは全くない」「大幅なレベルアップが必要」-。鬼のような球児語録を若虎は真剣に聞いていますか!? 来季、球団史上初のリーグ連覇を目指す阪神・藤川球児監督(45)はオフ突入を前に「ここ(高知・安芸秋季キャンプ)にいる選手たちが来年かなりやれる手応えは全くない」と辛辣(しんらつ)な言葉を発しました。MVP(最優秀選手賞・佐藤輝明内野手)からベストナインまで受賞ラッシュに沸いた主力組と若手との大きな実力差を痛感し、戦力の溝を埋めなくては連覇は厳しい-と読んだからこそ、若虎にげきを飛ばしたはずです。連覇なるかは若虎の今オフの過ごし方次第かもしれません。

NPBアワーズで記念撮影する(後列左から)中野拓夢、石井大智、坂本誠志郎、近本光司、村上頌樹、(前列左から)大山悠輔、才木浩人、藤川球児監督、佐藤輝明、森下翔太。阪神勢は受賞ラッシュに沸いた=11月26日、グランドプリンスホテル新高輪(萩原悠久人撮影)
受賞ラッシュ
きらびやかな舞台の上で笑顔が弾けました。2年ぶりのセ・リーグ制覇を果たした阪神の主力選手たちは表彰台を独占状態です。11月26日に東京都内で行われた「NPB AWARDS 2025 supported by リポビタンD」には虎戦士9人が出席しました。
MVPに輝いた佐藤輝を始め、コミッショナー特別表彰の石井大智投手、ベストナインに選出された近本光司外野手(盗塁王も獲得)、中野拓夢内野手、坂本誠志郎捕手、大山悠輔内野手、森下翔太外野手、そして最多勝(14勝)最高勝率(7割7分8厘)最多奪三振(144)とタイトル3つを搔き集めた村上頌樹投手に、最優秀防御率(1・55)を獲得した才木浩人投手らがズラリと並ぶ壮観な景色。セ・リーグ最優秀監督賞を受賞した藤川球児監督も選手の輪の中で笑顔を振りまいていました。

ベストナインに輝き、プレゼンターの王貞治さん(右)から盾を贈られる阪神・森下翔太=11月26日、グランドプリンスホテル新高輪
「本当にいい一年になりました。(MVPは)その年の最高の2人が選ばれる賞。すごく名誉あること。取れてすごくうれしいです」と佐藤輝が話せば、村上も「去年が悔しかったので、やり返すという意味ではタイトルを3つも取れてよかった」。
初のベストナインを受賞した森下は黒のちょうネクタイに白のタキシードという派手ないで立ちで、「こういう場なので、いつもと違う格好にしたいな、と。みんな暗めな色で来るかなと予想していたので、自分は白く、明るくいこうと思って、この格好にしました」と満面の笑みです。

糸井嘉男臨時コーチ(左)から指導を受ける阪神・西純矢。2019年のドラフト1位右腕は来季、野手に転向して飛躍を目指す=11月13日、安芸市営球場(根本成撮影)
「チームを壊す」
今季は日本シリーズこそソフトバンクに1勝4敗で破れたものの、ペナントレースでは2位DeNAに13ゲーム差をつけての独走V。ここ3シーズンで2度の優勝という黄金期を迎えたさまが虎戦士の表彰ラッシュにも色濃く出たわけですが、選手の輪の中心にいた指揮官は舞台での笑顔とは180度違う鬼の表情を別の場所で見せていました。
まず、秋季キャンプ合流を翌日に控えた11月2日、「2025年に作ったチームを壊して26年に行く。疲れ切った選手たちの心をきれいに入れ替えて25年に立ち向かわせるというところは実現できましたから、今度は次のステージにいかなければいけない」と話しました。『優勝したチームをぶっ壊す』と言い切ったのです。
そして秋季キャンプを打ち上げた同17日には、キャンプ総括で「昨年ほどのこれで行けるとか、ここ(安芸)にいる選手たちが来年かなりやれるという手応えは全くない状態ですね。求めるレベルが非常に上がっていますから。ここに来ているメンバーというのは2月まで非常に厳しい練習を自分に課して鍛錬を積んで、大幅なレベルアップが必要になりますね」と話し、「彼らの今のレベルでは(来春の1軍)キャンプに参加できるメンバーがチラホラいるくらいのレベル」とも…。
辛辣な言葉が向けられたのは、控え層や2軍にいる若手選手たちです。現状の実力では受賞ラッシュでスポットライトを浴びる主力選手たちのポジションを脅かせないどころか、来春の1軍キャンプにも参加できる人数は限られている…という極めて低い評価をあえてしたのです。こうした選手たちが今オフ、必死に練習に打ち込み、現状を打破してほしいと願うからこそ、鬼のような言葉の数々が口を突いて出てきたのでしょう。
「25年に作ったチームを壊して…」と話したのも、レギュラーポジションを一度、白紙にするから頑張ってポジションを奪い取ってみせろ-という若虎への叱咤(しった)激励だと思います。目標が明確であればあるほど、オフの過ごし方も違います。どうあがいても今のレギュラーは安泰だと思ってしまえば、自分に対する甘えも生まれますが、逆に頑張ればポジションに手が届くかも…と感じれば、やる気も取り組み方も違ってくるでしょう。
連覇へ底上げ不可欠
来季は球団史上初のリーグ連覇を目指すシーズンです。指揮官は本気も本気で連覇を狙っています。目標達成のためには何が必要か…といえば、戦力層に厚みを加えることに尽きるでしょう。それを痛感したのがソフトバンクに敗れた日本シリーズの戦いでした。
「阪神は1番から5番までは固定していて、すごいメンバーだったけど、6番以降の下位打線が弱いし、控えの選手の層が薄い。代打要員もあまりいないし、指名打者(DH)制になると、候補となる選手も薄い。その辺りの差がソフトバンクとの戦いの中でハッキリ見えた」とは、ネット裏で観戦していた球界関係者の言葉でした。
実は8勝10敗と阪神が負け越した6月の交流戦でも、パ・リーグ関係者からほとんど同じような評価を聞いていました。采配を振るった藤川監督もその辺りは痛感しているはずです。なので来春のキャンプに向けて選手間の能力差を縮めるために、若い選手たちに辛辣な発言をして、なんとかチーム内競争を激化させようと考えたと解釈できます。
脂の乗り切った主力組に追いつき、追い越すことは簡単ではありません。しかし、若い選手が主力選手に一歩でも肉薄することで、チーム力は確実にアップするでしょう。組織内の競争力激化が球団史上初の連覇へのエネルギーになると、指揮官は考えているのでしょう。
師走が到来し、もうそろそろクリスマスシーズンの到来です。しかし、虎の若い選手たちはクリスマスも正月もない…と覚悟を決めて、野球に向き合わなければなりません。チーム全体で連覇に向けた機運を盛り上げなければ、虎の悲願は達成できません。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。