韓国プロ野球が「能力が高い」と日本人投手と続々契約 外国人枠拡大、「親日感情の高まり」も追い風に

今オフに日本球界を退団した選手で目立つのが、韓国球界への挑戦だ。ソフトバンクから戦力外通告を受けて退団した武田翔太は11月、NPBの複数球団が獲得に向けて調査をしていた中、韓国プロ野球(KBOリーグ)のSSGと推定年俸20万ドル(約3100万円)での契約に合意した。NPB出身の日本人選手がKBOリーグの球団と契約するのは、中日などで活躍した門倉健(元サムスン)以来15年ぶりだった。
武田は2011年のドラフト1位でソフトバンクに入団し、15年にチーム最多の13勝をあげて日本一に貢献。16年も14勝をマークした。しかしその後は右肘の故障などで、二けた勝利はなし。昨年4月にトミー・ジョン手術を受け、今年6月にファームで実戦復帰したが、今年の1軍登板はなかった。
「武田の今年の推定年俸が1億5000万円だったので大幅ダウンになりますが、NPBの他球団も提示条件は大きく変わらなかったでしょう。武田が万全のコンディションを取り戻せば十分に通用する。32歳とまだまだ若いですしね」(福岡の民放テレビ関係者)
武田が入団したのを皮切りに、日本球界でプレーしていた投手たちが続々とKBOリーグ入りを決めている。西武を退団した田村伊知郎が斗山、巨人を退団した戸田懐生がNCへの入団を決定。DeNAから戦力外通告を受けた京山将弥も韓国・ロッテの秋季キャンプにテスト生として参加し、入団が決まった。
韓国駐在のライターは、日本人投手の人気が相次ぐ背景に、韓国球界の制度変更があるという。
「KBOリーグでは、来季から新たに『アジアクォーター制度』、いわゆる『アジア枠』が導入されたので、日本人投手の需要が高まっています」

■武田ら4投手はいずれも「アジア枠」
KBOリーグでは、これまでの外国人選手枠(3人)に加え、26年シーズンからの「アジア枠」(1人)によって、外国人選手を4人まで獲得できるようになった。武田や田村、戸田、京山はいずれもアジア枠での入団だ。アジア枠の対象となるのは日本も加盟するアジア野球連盟の加盟国・地域の国籍を持つ選手とオーストラリア国籍の選手で、球団が支払う獲得額(契約金、年俸、移籍金など)の総額は上限が20万ドル(約3100万円)と決められている。
「日本がWBCで23年に世界一に輝くなど結果を残しているのとは対照的に、韓国が近年の国際大会で低迷しているのは投手力の差が大きい。球速、制球力、変化球の精度などを総合的に見ても日本のほうが上なので、投手力強化に向けて日本人投手が欲しい球団は多いと思います」(前出の韓国在住ライター)
日本でプレーした韓国球団のコーチもこの見方に同調する。
「NPBに比べてKBOのレベルは低い。日本の1軍になかなか定着できない投手でも、韓国では十分に通用します。KBOでは昨年から、球審の判定に『ロボット審判』(自動ボール判定システム)を導入しています。そのため投手はストライクとボールの判定にストレスを感じることがなくなりました。武田は縦に大きく割れるカーブが武器ですが、ストライクゾーンに入っていても日本球界では審判によってボールと判定されて投球が苦しくなるケースがあった。韓国ではきっちりストライクと判定されるので、彼の持ち味が生かされるんじゃないですかね」
前出の韓国在住ライターは、韓国での日本に対する国民感情の変化も、KBOの各球団が日本人投手を積極的に獲得する上で追い風になっていると指摘する。

■日韓の良好な関係でハードルが下がった
「慰安婦問題や元徴用工裁判など歴史的な対立や政治的な摩擦で日韓関係が緊迫していた5、6年前は、韓国国内で日本製品の不買運動が起こり、日本人が韓国で歓迎されている空気ではなかった。でも今は違います。日本製品は高い支持を得ていますし、文化的交流が再び盛んになっています。日韓の政府間も良好な関係を維持しているので、韓国は日本人が住み心地のいい環境になっています。韓国球団が日本人選手を獲得するハードルが下がったと言えるでしょう」
2年前にNPB球団を退団し、現役引退した投手は「うらやましいです」と言う。
「日本球界からオファーがなかったとき、これまでなら日本の独立リーグや社会人野球、米国のマイナーリーグなどに選択肢が限られていた。韓国球界で活躍すれば、NPBに復帰できるかもしれないですし、選手たちのモチベーションは高いと思います」
韓国球界でプレーして大きな夢をつかんだのが、日本ハムや楽天でプレーした外国人投手、コディ・ポンセだ。楽天に所属した昨年は3勝6敗、防御率6.72と振るわずに退団したが、韓国のハンファに入団した今年、29試合登板で17勝1敗、防御率1.89をマーク。180回2/3を投げて252奪三振のリーグ新記録を達成し、MVPも受賞。この活躍が評価されて12月にメジャーのブルージェイズと3年契約を結んだ。MLB公式サイトによると、契約額は総額3000万ドル(約46億5000万円)で、KBOを経験した米国人投手では過去最高額となった。
NPBでプレーした助っ人外国人選手がKBOでプレーするのは近年のトレンドで、今年も日本ハムを退団したドリュー・バーヘイゲンがSSG、阪神を退団したジェレミー・ビーズリー投手が韓国ロッテと契約に合意したと報じられている。
「KBOのレベルがNPBに比べて落ちることは米国のスカウトも理解しています。その上でメジャーに通用すると判断する選手がいれば、獲得に動く。韓国球界で日本人選手が活躍したら、ポンセのようにメジャー契約を勝ち取れる可能性があります」(スポーツ紙デスク)
現時点で発表されていないが、他にもNPBで実績のある投手が「KBOに挑戦する」という情報が駆け巡っている。来年は日本でもKBOリーグの注目度が上がりそうだ。
(ライター・今川秀悟)
・ソフトバンクの“大量戦力外”に賛否両論 「プロ野球選手」として生き残るのが困難な時代へ
・荻野貴司、水上由伸、武田翔太…「戦力外組」は即戦力の宝庫か 他球団コーチが「天才的な打撃センス」と絶賛する伏兵は
・世代No.1右腕・風間球打が戦力外に ソフトバンクのドラ1が大成せず、育成選手が伸びる理由は