競馬記者が見た『ザ・ロイヤルファミリー』(10)名勝負に日高も北稜も関係ない!「伝説、継承」のクライマックスに感動 有馬記念のサインはグランプリ2着のあの馬?

『ザ・ロイヤルファミリー』第10話の1シーン©TBSスパークル/TBS

俳優、妻夫木聡が主演を務めるTBS系日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(日曜後9・0)が14日の放送で最終回を迎えた。競馬の世界を舞台に夢を追い続けた熱き人間と競走馬の20年にわたる壮大なストーリーが幕を閉じた。山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞をダブル受賞した、作家・早見和真氏による同名小説が原作のドラマ。感動の最終回をキャリア30年超の競馬記者がレビューする。

『ザ・ロイヤルファミリー』第10話の1シーン©TBSスパークル/TBS

※以下、『ザ・ロイヤルファミリー』のネタバレが含まれます。

小説(新潮文庫)のドラマ化が明らかになったとき、原作のラスト1ページをどのように表現するのだろうかと興味津々だった。

というのも、ラスト1ページは本編ではなく、ロイヤルファミリーの血統、競走成績などを伝えるプロフィル欄だからだ(小説の「第一部 希望」の最終ページはロイヤルホープの血統、競走成績などだ)。プロフィルには本編では語られなかった引退撤回後の成績も載っている。戦績は6戦5勝。凱旋門賞の前哨戦であるフォワ賞以外の5戦は最も格の高いGⅠレースだ。もちろん2度目の有馬記念の成績も載っているが、これは伏せておこう。

早見和真氏が物語としてつづらなかった後日談を見事に映像化してくれたことがうれしい。その前のクライマックスである、ロイヤルファミリーにとって最初の有馬記念も実にドラマチックだった。最後の直線の攻防は原作と同じ。原作で栗須栄治にこう語る。

<ソーパーフェクトとロイヤルファミリーの叩き合いとなりました。(中略)

『ザ・ロイヤルファミリー』第10話の1シーン©TBSスパークル/TBS

時間が止まったように、優雅で、繊細で、美しい時間でした。二頭とも、そして二人ともがライバルとは戦っていないようです。馬はきっと「走る」という自らの本能に気がついているはずですし、騎手もそれを極限まで引き出すことだけを考えています。そう断言したくなるほど、その美しさは圧倒的でした。(中略)

さぁ、ウィニングランだ。ついに「有馬記念」を制するときだ--。そう思った瞬間でした。>

原作でもドラマでも、そこから弾丸のような走りで大外から2頭に迫ってきたのは、ロイヤルファミリーと同じロイヤルホープを父に持つビッグホープだった。原作で同馬についてこう説明している。

<残念ながらクラシック戦線に乗ることはできませんでしたが、晩成型のロイヤルホープ産駒らしく地道に成長していき、ついに今年のグランプリレースにまで出世してきた>

その鞍上にいるのは、ロイヤルホープの主戦を務めた佐木隆二郎(高杉真宙)だ。ソーパーフェクトを競り負かしたロイヤルファミリーと、外から鋭い末脚を繰り出すビッグホープが馬体を並べてゴール板を通過した。どちらが勝ってもロイヤルホープの子供がついに有馬記念を制した瞬間が訪れた。それは亡き山王耕造(佐藤浩市)が熱望していたことだった。

第7話にこんなシーンがあった。がんを患って入院している山王耕造の病室を訪れた馬主の椎名善弘(沢村一樹)が、「(中川大志演じる息子の椎名展之に)簡単に負けるわけにいかない」「社長にひとつご相談が」と言って山王に手渡した封筒に入っていたのは2枚の紙。ロイヤルホープと1頭の牝馬の名簿だった。この牝馬にロイヤルホープを種付けさせたいと伝えた椎名は山王に言う。「ホープの子供が有馬で勝つことをお約束します」と。

『ザ・ロイヤルファミリー』第10話の1シーン©TBSスパークル/TBS

ビッグホープこそが椎名が山王に約束した馬。しかも名付け親は山王だったのだ。

ロイヤルファミリーとビッグホープ。山王耕造が自身亡き後の未来に託した2頭が2025年の有馬記念でワンツーフィニッシュを決めた。椎名と山王の約束を加えたことで、原作以上にドラマチックな展開となり、その感動もひとしおだった。ビッグホープを生産したのは日本競馬を牽引(けんいん)する北稜ファーム。東日スポーツ所属のフリーライター、平良恒明(津田健次郎)の言葉に筆者はうなずいた。

「日高も北稜も関係ないか」

名勝負に出自など入る余地などないのだ。

2025年の有馬記念当日、中条耕一(目黒蓮)と椎名展之が中山競馬場のゴンドラ席で対話するシーンで、過去の有馬記念のゴールシーンがターフビジョンに流れていた。

「帝王」と紹介されたのは、トウカイテイオーが約1年ぶりの実戦をものともせずに勝った1993年の第38回。「有終」のテロップとともに映ったのは、このレースを最後に引退するオルフェーヴルが2着に8馬身もの差をつけて圧勝した2013年の第53回。最後に「伝説、継承」として紹介されたのは、1着イマジンドラゴン、2着ロイヤルホープ、3着ヴァルシャーレが大接戦を演じたドラマの有馬記念だった(設定は7年前の18年)。「伝説、継承」こそが『ザ・ロイヤルファミリー』の一貫したテーマであるといわんばかりだ。展之との対話で中条耕一は言う。

「継承は押し付けられるものじゃない。選び取るものなんだよ」

ドラマではロイヤルファミリーだけでなく、栗須や耕一のその後も伝える。加奈子と結婚した栗須が養老牧場を経営しているのは物語の流れから当然に思えてならない。ドラマの最終年となる2030年は「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の概念が今以上に世間に浸透しているはずだ。

2030年、耕一は、かつての「相続馬限定」ではなく本来の馬主資格を取得したことも平良恒明との会話でわかった。これもまた「継承」である。(鈴木学)

追記

ロイヤルファミリーが出走したレースとして使われた実際のレースは、①札幌記念=トップナイフが勝った今年の札幌記念、②天皇賞・秋=モーリスが制した16年の第154回天皇賞・秋、③ジャパンカップ=コントレイルが引退レースを勝利で飾った21年の第41回ジャパンカップ。④有馬記念=ドウデュースが勝った23年の第68回有馬記念だと思われる。

2026年の出走レースも推測する。大阪杯はベラジオオペラが制した今年の第69回大阪杯で、凱旋門賞はサトノダイヤモンドが勝った16年の有馬記念だろう。ロイヤルファミリーにとって2度目の有馬記念は、上空から撮ったゲート裏での輪乗りが24年の有馬記念で、横からのゲートインが16年の有馬記念、上空からのゲートインはリスグラシューが制した19年の有馬記念で、ターフビジョンに移った道中のシーンは16年の有馬記念だと思われる。

なお、25年の有馬記念のパドックで、坂井瑠星が騎乗する有力馬レインボーキャンプの調教師としてコントレイル、リスグラシュー、フォーエバーヤングなど数々の名馬を管理する矢作芳人調教師が、弟子の坂井瑠星に「馬、信じて乗っていいよ」と語りかける調教師役で登場。自然体の演技に感心した。

最後に巷で話題となっている「ザ・ロイヤルファミリー馬券」を推測する。筆者は、有馬記念で2着だったロイヤルホープの雪辱を息子が晴らしたことに注目している。

今年のグランプリ出走予定馬の父が有馬記念で2着に敗れた経験があるのは、ディープインパクト(05年。その翌年は1着)、キタサンブラック(16年。ほか15年3着、17年1着)、レイデオロ(18年。翌19年は7着)の3頭。

中でもレイデオロは、ドラマでロイヤルホープが有馬記念に出走した18年の2着だ。産駒はアドマイヤテラ、エキサイトバイオ、サンライズアースが出走を予定している。この3頭が今年の有馬記念でどんなレースを見せるのか楽しみだ。