強制送還されたパキスタン人男性 大臣は配慮を強調したが…「諸般の事情」で権利侵害を押し切る入管のズルさ
やはり、強制送還されていた。
12月17日に送還すると通知され、入管施設から姿を消した非正規滞在のパキスタン人男性のムスタファ・カリルさん(62)。
平口洋法相は19日の閣議後の記者会見で、強制送還したことを認めた。
カリルさんの健康状態に配慮して異例の対応をとったことも明かしたが、かえって関係者はある疑念を強めている。(池尾伸一、飯田克志)
◆健康状態悪く「飛行機に耐えられるか…」
カリルさんは難民申請を認められずに収容所生活は10年を超える。
入管の対応に反発して施設での食事を拒否する「ハンガーストライキ」を決行。栄養状態は悪く、骨粗しょう症の疑いがあり車いす生活を余儀なくされていた。

男性が10年にわたり収容されていた東日本入国管理センター(牛久入管)資料写真
このため、支援者たちは飛行機の衝撃に耐えられるか懸念していた。
健康不安や「合意違反」の疑いから、支援者らは送還に反対して急きょ署名活動を展開し、16日に入管庁に提出していた。
しかし、支援者が17日朝に牛久入管を訪ねると、職員が冷たく言い放った。「ここにはいません」
支援者らはカリルさんの身を案じた。「やはり送還されたのか」「無事につくことができたのか」
◆入管職員と医師が同乗したというものの
19日の閣議後に開かれた平口法相に記者が質問すると、「護送官付き国費送還を実施した」と認めた。
「難民申請について多数回却下され、これまでに提起した複数回の行政訴訟でも国側の勝訴が確定しているにもかかわらず、帰国を拒んでいた南西アジア出身の被収容者」

平口洋法務大臣=12月18日、衆院法務委で(佐藤哲紀撮影)
平口氏はカリルさんを突き放すように説明しつつ、健康面への配慮も付け加えた。
「事前に健康状態が送還に支障がないことを複数の医師に確認などし、本国での適切な受け入れのための必要な関係機関との緊密な連絡を行った上で、送還に医師を同行させたとの報告を受けている」
強制送還を担当する入管庁警備課にも確認したが、やはり、カリルさんには入管職員だけでなく医師も一緒に飛行機に乗り込み、パキスタンまで同行したという。
しかし、代理人の駒井知会(ちえ)弁護士は批判する。「医師を同行させても、衝撃は防げず骨折などをする可能性があったはず。入管は極めてリスクの高い送還を決行したことになる」
◆入管庁と日弁連の合意はまもられたのか
そもそも、今回の送還に至る経緯も、不自然だった。
入管庁と日本弁護士連合会(日弁連)との間には、強制送還のおおむね2カ月前に、代理人の弁護士に連絡する合意がある。非正規滞在者の裁判を受ける権利を保障するためだ。
だが、カリルさんの場合、17日に送還するとの連絡が駒井弁護士に入ったのは、わずか1週間前の10日になってからだった。

入管庁の各入管への通達。日弁連との合意に基づき、送還は「2カ月前に通知する」ことを指示している
入管庁は、「諸般の事情」がある場合は連絡が遅れる場合があるという趣旨の合意の「ただし書き」を盾に「合意違反ではない」と言い張る。
平口法相も記者会見で、同じ見解を示した。「諸般の事情」で2カ月前の連絡が難しかったとしたうえで「送還日が決定して通知が可能になった時点で速やかに通知した」
その言い分が正しいなら、送還は1週間前に決まったことになる。
だが、駒井弁護士は言う。
「医師にパキスタンまで同行を求めるような大がかりな送還計画が1週間前に決まったというのか。合意違反である疑いがさらに強まった」
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