米欧に亀裂が入った隙に、領土的野心を全開にするプーチン大統領
インド訪問中のプーチン発言

12月4日、インドのモディ首相とニューデリーで首脳会談を行ったロシアのプーチン大統領。ところが、滞在中に同大統領がウクライナの今後について語った発言が、警戒感を呼び覚ましている。
どのような手段を使ってでも「解放」する

モディ首相との会談に先立って行われた地元メディア「インディア・トゥデイ」によるインタビューの中で、プーチン大統領は「ロシアはドンバス地方およびノヴォロシアを軍事的手段であれ、その他の手段であれ、なんとしても解放する」と語ったのだ。CNN放送が報じている。
あいまいな目標

さらに、ロシアにとってウクライナ侵攻における戦勝とはどういうことかという質問に対しては、「特別軍事作戦を開始した際に掲げた目標を達成し、これらの領土が解放されたときに終わる。それだけだ」と答えている。
これまでとは明確に異なる発言

ウクライナ東部を「なんとしても解放」するというプーチン大統領の発言は世界各国のメディアから注目を集めることとなった。というのも、あるウクライナ人ジャーナリストいわく、今回の発言はこれまでと明確に異なる点があるためだ。
領土的野心が拡大?

ウクライナ人ジャーナリストのヴィタリー・ポルトニコウ氏はプーチン大統領のインド訪問中の発言について、ロシアの領土的野心がこれまでの発言よりも拡大していると指摘。
「ノヴォロシア」とは?

問題の核心は「ノヴォロシア」という用語だ。この言葉はロシアによるウクライナ侵攻の政治的・歴史的背景と密接に関係している。ただし、プーチン大統領やロシア高官でさえも、近年は「ノヴォロシア」という用語をほぼ使わなくなっていた。
忘れ去られていた用語が復活

ところが、ポルトニコウ氏いわく、今回のプーチン発言によって「長らく忘れられていた『ノヴォロシア』という用語が復活した」とされる。これはさまざまな問題をもたらし得る事態だが、そもそも「ノヴォロシア」とは何であるのか理解する必要があるだろう。
ロシア帝国がオスマン帝国から勝ち取った領土

米外交政策研究所によれば、「ノヴォロシア」とはロシア帝国が18世紀にオスマン帝国から勝ち取った領土のことだ。なお、クリミア半島をはじめ、現ウクライナの3分の1は「ノヴォロシア」に当たるとされる。
画像:Wiki Commons By Роман Днепр, Own work, CC BY-SA 3.0
プーチン大統領の主張

また、米シンクタンク「戦争研究所」いわく、プーチン大統領はウクライナ侵攻を進める中で、「ノヴォロシア」はロシアの一部だという立場を貫いてきた。ウクライナメディア「ニュー・ボイス・オブ・ウクライナ」が伝えている。
ドンバス地方だけではない

同メディアによれば、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は「ノヴォロシア」の定義として、ウクライナ東部および南部すべてだと発言。ドンバス地方に加え、ハルキウ州、ドニプロペトロウシク州、オデーサ州、ミコライウ州も含まれることとなる。
米欧の亀裂はチャンス

ポルトニコウ氏によれば、プーチン大統領がニューデリーで「ノヴォロシア」に言及したのは、ウクライナ支援をめぐって米欧に亀裂が生じている隙を突いて、最大限の利益を手に入れようとしているためだ。
以前はドネツク州からのウクライナ軍撤退のみを要求していたが……

同氏いわく:「一見、この発言は予想外に思えるかもしれない。つい最近まで、プーチン大統領が停戦のおもな条件としていたのはドネツク州未制圧地域からのウクライナ軍撤退だけだったのだ」
米国の譲歩を受け、要求を拡大

米国には「ウクライナに対し、同国軍がドネツク州で保持している地域から撤退するよう圧力をかける意思がある」と判明したことで、プーチン大統領は割譲要求を拡大しというのがポルトニコウ氏の見方だ。
プーチン大統領の”欲しいものリスト”

同氏いわく:「なぜ、今になって『ノヴォロシア』を持ち出したのか。まず、プーチン氏は相手が交渉をもとめてきたら、それは相手が弱っているからだと考える。妥協を受け入れる姿勢は、さらに弱々しく映るだろう。したがって、米国が本当にウクライナに対してドンバス地方からの撤退を迫るつもりなら、“欲しいものリスト”に他地域を加えない理由などないのだ」
行けるところまで行くという戦略

しかし、問題はそれだけではない。ポルトニコウ氏いわく、「ノヴォロシア」という用語が示す範囲は「政治的に曖昧」なのだ。そのため、ロシアは現在、和平協議の中で議論されている範囲よりもはるかに広い地域に対して領有権を主張しはじめる可能性がある。
ヘルソン州とザポリージャ州

例えば、ロシアが一部を占領しているヘルソン州やザポリージャ州についても、両州が「ノヴォロシア」に含まれると主張することで、ウクライナ軍の撤退とロシアへの割譲を求めるようになるかもしれない。
ウクライナに圧力をかけ続ける手段

ポルトニコウ氏はさらに、「ウクライナ軍の撤退を要求することすら避け、紛争を凍結状態として扱いながら、ロシアはいずれこれらの領土を取り戻すと強調し続けることで、停戦成立後もウクライナの頭上に“ダモクレスの剣”を吊し続けるという選択肢もあるだろう」とした。
揺らぐ米国

さらに、「ノヴォロシア」の概念が拡大され、ウクライナ全土に対する攻撃の根拠として利用されるおそれもある。ポルトニコウ氏によれば、プーチン大統領は「米国が揺らいでいると考えており、この状況を利用すれば何でも要求できる」と考えているのだ。
トランプ和平は機能するのか?

ポルトニコウ氏の分析が正しいかどうかは現時点では不明だ。しかし、仮に事実であれば、トランプ和平はロシアを一方的に利するものになりかねない。
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