サービスエリアの「格差拡大」!「稼ぐ巨大SA」が地方インフラを食いつぶす?90年後まで無料化なし、逃げ場なき道路運営の行方とは

高速道路情報発信の転換点

 NEXCO東日本は2026年1月16日、高速道路の休憩施設で長く親しまれてきた無料情報誌「ハイウェイウォーカー」を、3月20日発行分で終了すると発表した。紙媒体からデジタルへの移行が社会全体で進むなか、この判断は流れとして理解できる一方で、ひとつの区切りを意識させる出来事でもある。

【画像】「ハイウェイウォーカー」最新号を見る!

 仕事とプライベートで年間約6万kmを走る私(都野塚也、ドライブライター)自身、子どもの頃からこうした情報誌を手に取り、見知らぬ土地の食や景色に触れてきた世代だ。だからこそ、役目を終えると聞いて、素直に惜しさが残る。

 NEXCO中日本や西日本でも、案内の主軸は紙面からスマートフォンや電光掲示板へと移りつつある。それにともない、利用者の行動も変わってきた。かつての紙媒体は、立ち読みのなかで思いがけない情報に出会う入口だった。

 一方、デジタルでは、利用者が目的を持って情報にアクセスする場面が増えている。混雑状況や期間限定のメニューが随時更新され、それを見て走行中に立ち寄り先を決める。休憩施設での消費は、より即時的で選択の早いものへと移っている。

 情報の出し方が変わるにつれ、各エリアには「選ばれる理由」を明確に示すことが求められるようになった。施設の存在を知ってもらい、足を運んでもらうための工夫は、従来の枠にとどまらず広がっている。

 なかでも、飲食や土産物にかけられる力の入れ方は目立つ。地域性を前面に出した商品や企画は、利用者との接点を増やし、結果として休憩施設の意味合いそのものを少しずつ変えてきた。情報発信の転換は、そうした変化を後押ししているように見えるのだ。

利用者減とコスト増に挟まれるSA・PA運営の現実

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さまざまな問題に直面し悩む事業者たち(画像:写真AC)

 2026年1月時点で、全国のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)を取り巻く環境は、これまでになく厳しさを増している。

 2020年のコロナ禍を経て、都市部では利用が横ばいに近い水準を保っているものの、全国で見れば減少傾向は明確だ。NEXCOが公表した年末年始の主要40区間における1日あたりの平均交通量を比べると、2019年度の3万8100台から2021年度は3万5200台へと約8%落ち込んだ。今後は人口減少に加え、自家用車の保有率低下も重なり、利用の縮小が続くとの見方が強い。

 こうした状況を受け、運営の考え方にも変化が生じている。従来は道路に付随する公的な役割として位置づけられてきたが、現在は自ら収益を生み、その収入でインフラを支える事業としての性格が前面に出つつある。ただ、物価の上昇や施設の老朽化にともなう維持改修費、人手不足による人件費の増加が重くのしかかる。

 安全な走行を支える補修と、集客に直結する商業施設への投資の間で、限られた資源をどう振り分けるかという判断を迫られる場面も少なくない。通行料金収入を大きく引き上げにくい現状では、施設運営から得られる収益が、道路インフラを保ち続けるうえで欠かせない支えになっている。

 利用者の変化に対応する動きとして、デジタル技術の導入も進み始めた。ただ、新しい仕組みがどのようなものかを利用者が理解し、日々の行動に反映されるまでには、なお工夫の余地が残る。技術を取り入れること自体が目的になるのではなく、現場での使われ方や受け止められ方を丁寧に積み重ねていく段階に差しかかっている。

「立ち寄る理由」が薄れる地方SAの苦境

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東北自動車道の終点に位置する津軽SA(画像:写真AC)

 高速道路の休憩施設は、長距離移動の途中で体を休め、次の行程を整えるための場所として機能してきた。SAやPAは、交通情報を確かめたり、走行ルートを見直したりする場でもあり、移動の流れのなかに自然に組み込まれていた存在だ。

 ただ、カーナビやスマートフォンの案内アプリが高度化するにつれ、情報を得るために立ち寄る必然性は薄れてきた。所要時間や効率を重視する検索が当たり前になると、特徴が見えにくい地方の施設は、利用者の選択肢から外れやすくなる。

 この変化は、地方に立地する休憩施設の運営をいっそう厳しいものにしている。東北自動車道の津軽SAでは、利用者減少を背景に、下り線で2005(平成17)年9月にガソリンスタンドとレストランが姿を消した。上り線でも2007年2月にガソリンスタンドが閉鎖され、2008年8月には改装後のレストランも営業を終えている。中国自動車道でも、2026年1月の時点で、終点付近を中心にガソリンスタンドを持たない施設が目立つようになった。

 休憩機能が縮小され、施設の中身が簡素になると、使い勝手はさらに落ち込む。その結果、高速道路は目的地へ向かうための通路としてのみ意識されやすくなる。小規模な施設が活気を失えば、長距離を走るドライバーの休息の質にも影響が及び、道路の安全を支える基本的な価値にも揺らぎが生じかねない。

 地域の拠点として本来備えてきた魅力をどう保ち、再び利用者に足を向けてもらうか。その問いが、各路線に重くのしかかっているのだ。

休憩所から目的地へ――体験型SAづくりの加速

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双葉SAで販売されている、山梨の新名物グルメ「ラーほー」(画像:都野塚也)

 高速道路を、移動のための通過点で終わらせない――SAやPAで過ごす時間そのものを楽しんでもらおうとする動きが、各地で広がっている。2005年10月の民営化でNEXCO3社が発足して以降、施設ごとに工夫を凝らした取り組みが積み重ねられてきた。地域ごとに異なる食や歴史を持つ日本において、SAはその土地の個性を伝える場としての役割を強めている。

 私の地元である山梨県甲斐市の中央自動車道・双葉SAでは、郷土料理の「ほうとう」や武田信玄にゆかりのある品々を前面に出し、地域の背景を来訪者に伝えている。こうした取り組みは、通り過ぎてしまえば気づきにくい土地の魅力を、短い滞在のなかで印象づける機会になっている。施設を訪れた人が、その土地に物語を感じ取るきっかけにもなる。

 評価の物差しも変わりつつある。かつては一度きりの利用や時間効率が重視されがちだったが、今は滞在の満足度を高め、「また立ち寄りたい」と思ってもらえるかどうかが意識されるようになった。SAは、移動の途中で立ち寄る場所という枠を超え、地域と人をゆるやかにつなぐ場へと、その存在感を広げている。

フードコートも買い物もデジタル前提の時代に

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モバイルオーダーでメニューを注文(画像:写真AC)

 私たちの身の回りでは、飲食店のタッチパネルや小売店の自動レジなど、デジタル技術を使った仕組みが特別なものではなくなった。SAでも同様の変化が進んでいる。

 フードコートで列に並ばず、事前に注文と決済を済ませられる「Fika(フィーカ)」や、キャッシュレス専用レジの導入は、その象徴といえる。こうした取り組みは、利用者にとって待ち時間の負担を減らし、流れのよい利用体験をもたらす。一方で、現場で深刻さを増す人手不足を補い、限られた人数でも一定のサービス水準を保つための現実的な対応でもある。

 商品構成や催しの内容には、来訪者の属性や天候といったデータが生かされている。同じ施設であっても、時期に応じて扱う商品を入れ替えるなど、柔軟な運営が可能になった。スマートフォンと連動したデジタルマップの活用により、利用者は到着前から施設内の情報を把握し、目的を持って立ち寄れるようにもなっている。

 今後は、電気自動車の普及にともない、三十分から一時間ほどの充電待ちが発生する場面も増えると見込まれる。滞在時間が伸びる前提のもとで、デジタル技術をどう使い、心地よい時間を用意できるか。その工夫が、これからの施設運営の行方を左右していくだろう。

テナント刷新と地元連携で価値を更新する現場

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双葉SA施設内に提示されている山梨情報(画像:都野塚也)

 SAに立ち寄ると、入居する店舗の顔ぶれが一定の間隔で入れ替わっていることに気づく。意識して見れば、その変化は小さくない。来訪のたびに新しい発見を用意し続けようとする運営側の姿勢が、そこににじむ。

 全国展開の飲食店もあれば、地元に根差した店もある。契約の条件や期間は施設ごとに調整され、にぎわいが保たれてきた。とりわけ地元企業の参加は重視されている。地域の来歴や特産を前面に出し、その土地でしか得られない体験を用意することが、施設の価値を押し上げている。

 こうした取り組みの背後には、施設の運営側と地元の事業者が、地域を元気にしたいという目線を共有してきた積み重ねがある。NEXCO東日本は2024年、各地の独自メニューを競う「NEXCO東日本ハイウェイめし甲子園」を実施し、存在感を広く伝えた。2026年には第2回の開催が見込まれている。催しを重ねることで味や見せ方を磨き、外へ届ける流れが続いてきた。

 評価の考え方も変わりつつある。売上の数字だけを追うのではなく、周辺地域にどのような影響をもたらしたかが意識されるようになった。施設での体験がきっかけとなり、実際にその土地を訪ねる人が増える。そうした連なりを通じて、地域全体に活気が広がることが期待されている。

 私の地元にある双葉SAでは、甲斐市や周辺の情報を紹介する掲示板が置かれている。高速道路という動線を生かし、地域振興の拠点として役割を果たしている様子が伝わってくる。

巨大需要を取り込む海老名SAの集客戦略

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東名の海老名SAエントランス(画像:都野塚也)

 全国に数ある休憩施設のなかでも、群を抜く利用者数を誇るのが東名高速道路の海老名SAである。

 上下線を合わせた1日あたりの平均利用者は約6万人に達し、休日や大型連休には10万人を超える日も珍しくない。都心に近く、交通量の多い東名という条件が大きいのは確かだが、それだけでこの数字が維持されてきたわけではない。利用者の関心をつなぎ止めるための積み重ねが、集客力の底を支えている。

 施設内に目を向けると、あつぎ豚や海老名産の野菜など、地元の食材を前面に出した限定メニューが並ぶ。そのなかでも強い存在感を放っているのが「海老名メロンパン」だ。48時間で2万7503個を売り上げ、ギネス世界記録に認定された実績はよく知られている。

 話題が話題を呼び、販売実績が次の来訪を後押しする流れが、ここでは自然に形づくられてきた。施設名にちなんだ海老を使った商品も人気が高く、こうした積み重ねが「この場所を目当てに高速道路を使う」という行動を生み出している。

 近年はSNSやネットニュースを通じた発信にも力を入れ、常に新しい話題を外に届けている。海老名SAは、移動の途中で立ち寄るだけの場所にとどまらない。話題の発生点となり、人の動きや周辺の経済に影響を及ぼす存在として認識されつつある。施設が持つブランドの強さが、インターチェンジ(IC)間の通行を後押しし、結果として道路全体のにぎわいにもつながっているのだ。

SA事業が生む地域経済と新たな消費動線

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人々とビジネスのイメージ(画像:写真AC)

 SAやPAは、周辺地域に新しい活気をもたらしてきた。とりわけ食品の取り扱いが多いことから、地元の一次産業や食品関連企業にとって、安定した需要を見込める取引先になっている。地域の食材を積極的に取り入れる流れは、地産地消を後押しし、地域経済を支える持続的な供給のつながりを育ててきた。

 若者の車離れが語られる場面は少なくない。それでも、行ってみたいと思わせる施設の存在は、若い世代や観光客が高速道路を使う理由のひとつになっている。私自身、遠方へ向かう際には、SAで過ごす時間を旅の行程に組み込み、その土地ならではの味や特産品に触れることを楽しみにしている。こうした消費の動きは、高速道路会社が地域の埋もれた魅力を掘り起こし、外へ伝える役割を強めていることを示している。

 高速道路の通行料金の無料化は、さまざまな事情から2115年ごろまで先送りされる見通しとなり、当面は通行料金が事業収入の中心であり続ける。ただ、施設運営による収益を高めることは、特定の収入に偏らない安定した経営を保つうえで欠かせない。

 地域と深く関わりながら事業を進めることで、高速道路は交通の基盤としての役割を果たしつつ、地域経済を巡らせる新たな拠点としての価値を高めている。

「走るための道路」から「立ち寄る場」への進化

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SAのさまざまな可能性を探る(画像:写真AC)

 SAやPAは、路線や地域によって姿や空気感が大きく異なる。利用者数は交通量の影響を受けやすく、これまで触れてきた東北道の津軽SAと東名の海老名SAを比べれば、その規模に差があるのは否めない。ただし、少しでも多くの人に立ち寄ってもらいたいという思いは、どの施設でも共通している。地域の特性に目を向け、どう存在感を示していくか。その模索は各地で続いてきた。

 高速道路を、走るためだけの場所から、足を運びたくなる場所へと変えていく動きは確実に広がっている。地域のコミュニティー施設と一体となった「ハイウェイオアシス」は、その流れを象徴する存在だ。

 スマートICの普及も後押しとなり、こうした施設は高速道路の利用者に限らず、周辺に暮らす人々が日常的に集う場へと育っている。人口減少が進むなかで、インフラを特定の利用者だけに閉じたものとせず、地域全体で使いこなしていく考え方が、少しずつ形になり始めた。

 高速道路という空間に、私たちは何を求め、どこまでの役割を託すのか――その問いを持ち続けながら、事業を担う側との対話を重ねていく姿勢が欠かせない。道路が移動の効率だけを追う存在にとどまらず、地域の暮らしや楽しみを支える場として広がっていく。その行方を、引き続き見守りたい。