「え? 偏差値50に届かないの?」と焦るのは禁物、子どもが塾通いを始めたら家庭ですべきこと①[マインド編]
まもなく2月。中学受験が本番を迎え、3年生(新4年生)はいよいよ通塾がスタートする時期だ。新たな生活サイクルの中で塾の宿題量に振り回され、慌ただしくなる家庭も多い。親子で気持ちの余裕もなくなりがちだが、乗り越えるコツは意外にシンプルだ。45年以上にわたる受験指導で、多くの受験生を難関中学へと送り出してきた西村則康氏(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表)が、ノウハウを伝授する。(文=竹野恭子)

写真はイメージです Photo/PIXTA
いますぐ家庭でできる
通塾生活シミュレーション!?
今からでもいいので、少し予習をしておきましょう。
塾の宿題に時間がかかってしまう大きな原因の1つに「塾の授業を十分に理解しないまま帰宅する」ことがあげられます。
予習で「これからどんな内容を習うのか」を知っておけば授業で慌てずにすみますし、理解を深めることができるので宿題もスムーズに終わります。
何より「何時から何時までは勉強をする時間」という意識を持てますので、家庭学習の習慣を入塾前に身につけることができます。何の予備知識もなくいきなり週3回の通塾が始まり、それ以外の日は宿題となるのは本当にきついですからね。
入塾前に「ここまでは予習しておきましょう」なんて言ってくれる塾はほぼありません。
教科書配布が塾初日だったり、「予習はして来ないで」という所もあります。どんな方針の塾であっても、ある程度は事前学習をしておくことが、通塾生活をスムーズにスタートさせるために大切になってきます。
あまり身構えず、以下のようなことに取り組んでみてください。

教科別準備表
★塾で使うテキストで予習する場合は、テキストに直接書き込まない(コピーをするなどして予習)
★四谷大塚のホームページから塾生以外でも購入できるテキストが販売されています(予習シリーズ)。入塾までの予習におすすめです。
子どもは「学校と塾の勉強が全然違う…」
親は「うちの子こんなにできないの…?」
入塾したお子さんがまず感じるのは、学校の勉強と塾の勉強とのギャップです。
学校のカラーテストはいつも満点なのに、塾のテストは難しくて点数がとれない。
つまり学校では「できる子」なのに、塾では上位に立てないという現象が起こります。そして親は「うちの子、こんなにできないのか」と驚く。このような状況に陥るご家庭はとても多いのです。
親はまず「うちの子はできない」のではなく、「できる子ばかりのグループの中で勉強が始まったんだ」ということを自覚してください。
よくあるマズイ例として、子どもの塾通いをお母さんより一歩引いて見ているお父さんが「え!? 偏差値50に届かないの?」と、驚きの言葉をお子さんにかけてしまうことがあります。
これは一番よくない。子どものやる気はなくなるし、お母さんがお子さんにより強いプレッシャーを与えるきっかけになります。
学校の環境とはまったく違う、レベルの高い集団の中で学習を始めた我が子に、まず温かい目を向けることが家庭でできることの第一歩。
四年生のお子さんは年齢的にも非常に柔軟性があり、新しい環境にもすぐに馴染める能力を持っています。信頼の気持ちを大事にして、ぜひ両親でお子さんを見守りましょう。
親の期待と子どものやる気。
そこには必ずギャップがある
入塾時は、自ら望んで勉強に立ち向かうたくましい我が子をイメージされる親御さんが多いのですが、実際はそうでないことがほとんどです。
わずか10歳。「将来のために頑張るぞ!」と塾に通い始める子なんているはずがありません。しかし、親はどうしてもそれを期待してしまうようです。
特にお子さんが自分から「塾に行きたい」と言い出した家庭は、「当然頑張ってくれるだろう」と思ってしまう。でも「塾に行きたい」のはお子さんの意志ではなく、単なる「その時の気分」です。親が責任を押し付けるわけにはいきません。
入塾してから、お子さんのやる気を育ていくのは親の役割です。親が「思っていたのと違う」と焦り、ただ「勉強をやれ」と言い続けると、子どもの「勉強したい」気持ちを削ぐことにつながります。
受験勉強を続けていくと、 「すごく頑張っているのに、成績が全然上がらない」「少し前にやった問題をすぐ忘れる」という子がたくさんいます。
そういう子たちは受験勉強が始まった時 に「勉強とは覚えることだ」という意識付けをされてしまっています。やったことを忘れるのは、理解・納得してない から。つまり「手順の丸暗記」を強要される環境が、その子の家庭にあるということになります。
このような勉強法のきっかけになってしまう原因の1が「親の焦り」です。親は不安や焦りから「もっと勉強しなさい」という姿勢になり、お子さんは「考える」学習ではなく「覚える」学習しかしなくなります。
これが続いた結果として成績が伸び悩むという、マイナスのループを知っておきましょう。

マイナスのループ
根拠のない我が子への信頼は、
成績が伸びる子を育む
ではマイナスのループに陥ってしまったらどうすればいいのか? 不安や焦りからお子さんへ口うるさく言ってしまいがちな親御さんへ、よく伝えている言葉があります。
「どんな時にも我が子を根拠なく信じる」
親御さんにはぜひ、「うちの子は大丈夫」という根拠のない信頼の気持ちを常に持ってほしいと思います。
この信頼が崩れやすいのが、入塾したての今の時期です。親が「大変さが想像を超えていた」「ほかの子はできている」と焦るのも、言ってみれば当たり前のこと。新しい環境に飛び込んだ我が子が、これまでとは全く違う立ち位置にいるのですから。
親は深呼吸する気持ちで「うちの子は大丈夫」という気持ちを強く持ってください。たとえ下の方のクラスからスタートしても伸び代はいっぱいあるという想いで、「プラスのスパイラル(下図参照)」になるような正しい勉強方法を続けてください。

プラスのスパイラル
そして「少しずつクラスは上がっていけそうだ」という気持ちを親子で持つことがとても重要です。

西村則康(にしむら・のりやす) 中学受験のプロ家庭教師 「名門指導会」 代表/ 中学受験情報局 主任相談員。40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。新著『中学受験成功への鍵は「親メンタル!」 「『受験で勝てる子』の育て方」(日経BP)。
ここで注意したいことがひとつあります。4年生では習う内容はまだそれほど難しくなく、量もそう多くないので、暗記の勉強法でもある程度点数が取れることがあります。そこで安心してしまうと、学年が上がったときに必ず成績が伸びなくなります。
忘れてはいけないのは「なぜそうなるのか」をちゃんと理解することです。子ども自らが興味を持って授業をちゃんと聞いて、理解して納得したうえで、家に帰ってきて宿題をやる。
そうすることによってさらに納得して理解が深まる。塾と家庭の学びは、そうした循環になってほしいと思います。
受験まではまだまだ長丁場。ゆっくりと伸びていけばいい。1回ごとのテストの点数に一喜一憂せず、お子さんがじっくりと理解できるよう手助けしてあげてください。
次回は、通塾に慣れない時期に家庭でできること②[実践編]として、塾でのノートのとり方、授業の受け方についてお話しします。