川崎「ちょっと怖い街」印象を変えた施設の正体

駅前ファッションビルの顔と郊外大型モールの顔を併せ持つ, 平日のデイリーユース需要の取り込みに成功, 東口は雑多な雰囲気が魅力ではあるが…, 夜の街・工業の街から、平日も土日も賑わう商業の街へ

川崎の街はどう変わったのか?(筆者撮影)

「昔はあんな街だったのに、今ではすっかりイメージが変わったな」と感じたことのある人は多いのではないだろうか。その代表格の一つとして挙げられるのが、「川崎」である。
さまざまな街にある商業施設を、「どのようにして街を変えたか」という観点からレポートする本連載。今回は「川崎」周辺を歩く。

東京都・品川駅からJRに乗ると、わずか9分で川崎駅に着く。川崎駅はJR東海道線、京浜東北線、南武線の3路線が乗り入れる神奈川県のターミナル駅だ。平日でも多数の人が行き交い、都心のターミナル駅らしい光景が広がっている。

【画像】「夜の街」「工業の街」イメージだったのに…今やファミリーが集う街になった川崎駅周辺

JR川崎駅の中央改札を出ると、大きな緑の広場が現れる。ここは「ラゾーナ川崎プラザ」。ららぽーとなどを手がける三井不動産などが開発し、2006(平成18)年にオープンした大型商業施設である。

駅前ファッションビルの顔と郊外大型モールの顔を併せ持つ, 平日のデイリーユース需要の取り込みに成功, 東口は雑多な雰囲気が魅力ではあるが…, 夜の街・工業の街から、平日も土日も賑わう商業の街へ

2006(平成18)年にオープンした大型商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」(筆者撮影)

駅前ファッションビルの顔と郊外大型モールの顔を併せ持つ

「ラゾーナ川崎プラザ」では、広場をぐるっと囲むようにして、BEAMS、COACH、Calvin Klein、LACOSTEなど高感度なファッションテナントが並んでいる。

広場を囲むオープンモール(屋外型)と、エンクローズドモール(屋内型)で構成され、屋内にも若者向けのファッション、コスメ、雑貨のテナントが軒を連ねている。都心の駅にあるファッションビルのような雰囲気だ。

駅前ファッションビルの顔と郊外大型モールの顔を併せ持つ, 平日のデイリーユース需要の取り込みに成功, 東口は雑多な雰囲気が魅力ではあるが…, 夜の街・工業の街から、平日も土日も賑わう商業の街へ

「ラゾーナ川崎プラザ」2階のフロアガイド(「ラゾーナ川崎プラザ」公式サイト)

そこから一つ上の3階へのぼると、アカチャンホンポをはじめとするベビー・キッズ向けのテナントやLoft、ビックカメラ、比較的手頃なファッション、雑貨テナントがそろう。子どものはしゃぐ声や泣き声が響き、ベビーカーを押す人がたくさん行き交う。今度はまるで、郊外の大型モールに来たような感覚になる。

4階は飲食店ゾーンだ。家族連れや若者を中心に賑わっている。待ち列が作られている店舗も多く、飲食需要の高さがうかがえる。5階はシネマやスポーツクラブのほか、自由に座れるベンチとテーブルが置かれており、佇む人の姿が見られる。

「ラゾーナ川崎プラザ」には若者向けの高感度なテナントもあれば、ファミリー向けのテナントもある。首都圏有数のターミナル駅前に立地しながら、約2000台の駐車場も備えている。

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ターミナル駅前でありながら巨大な駐車場を有している。川崎、横浜ナンバーの車に次いで品川ナンバーの車が多い(筆者撮影)

駅前ファッションビルのような側面と郊外大型モールのような側面を併せ持つ、ハイブリッド型の商業施設になっているのだ。

平日のデイリーユース需要の取り込みに成功

「ラゾーナ川崎プラザ」は平日でも多数の人で賑わっているが、なかでも活気を感じるのが1階だ。

スーパーのSANWA、ホームセンターのユニディ、ダイソー、無印良品、ユニクロ、丸善など、日常利用に便利なテナントが凝縮している。惣菜、精肉、鮮魚、スイーツのショーケースが並ぶ「グラン・フード」と名付けられた食物販ゾーンもあり、デパ地下的な顔も持つ。

「ダイニング・セレクション」というフードコートも、子ども連れや若者で賑わっている。子ども向けの背の低い椅子とテーブルが並ぶゾーンも完備。このような子ども連れへの配慮は、三井不動産の大型モールではデフォルトだ。

「ラゾーナ川崎プラザ」には約300店舗ある。このような大規模な商業施設は、一般的に週末のショッピングやレジャー需要を狙う。その結果、平日の集客が伸び悩み、土日と平日の売り上げの差に頭を抱える施設も少なくない。

だが、「ラゾーナ川崎プラザ」は日常利用の取り込みに成功し、曜日問わず混雑している。

東口は雑多な雰囲気が魅力ではあるが…

「ラゾーナ川崎プラザ」とJR川崎駅を挟んで反対側、東口方面を歩いてみよう。

駅前ファッションビルの顔と郊外大型モールの顔を併せ持つ, 平日のデイリーユース需要の取り込みに成功, 東口は雑多な雰囲気が魅力ではあるが…, 夜の街・工業の街から、平日も土日も賑わう商業の街へ

JR川崎駅東口側の街並み(筆者撮影)

東口にも商業施設が集積している。主な施設は、「川崎ルフロン」「川崎モアーズ」「ラ チッタデッラ」だ。

「川崎ルフロン」は地上10階建て、「川崎モアーズ」は地上8階建てといずれも多層階型の商業施設である。縦の移動が多く、通路幅も広くない。そのため、ベビーカーを押すファミリーには好まれない。

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地上10階建ての「川崎ルフロン」。定番のチェーン店がそろい、川崎水族館もある(筆者撮影)

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地上8階建ての「川崎モアーズ」。ブックオフやゲームセンターがあり、雑多な印象(筆者撮影)

「ラ チッタデッラ」は迷路のような狭く複雑な道を歩くのが楽しい施設だが、やはり小さな子どもを連れたファミリーには向かない。

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「ラ チッタデッラ」。イタリアの街並みがモチーフになっている(筆者撮影)

また、東口の商業施設や商店街は比較的安価なチェーン店や居酒屋、アミューズメント施設が多く、雑多な印象を受ける。

東口のザ・繁華街といった雰囲気も魅力的ではあるが、ファミリーの過ごしやすさや、洗練された都心っぽい要素には欠けるのである。

古くから開発が進んだJR川崎駅東口に比べ発展が遅れていた西口に「ラゾーナ川崎プラザ」ができたことで、川崎の街に大きな2つの変化が起きた。

1つ目は、都心らしいファッションや食物販テナントをそろえ、東京、横浜に流れていた買い物客を呼び戻したことである。東口にはない、洗練された都会的な要素を川崎に生み出した。

「ラゾーナ川崎プラザ」は名だたるショッピングセンターを凌いで、売上高日本一となった実績を持つ。広場でイベントを開催して音楽ライブの会場としての地位を築き、遠方から川崎へ人を呼ぶ集客装置の役割も果たしている。

2つ目は、ファミリーからの人気が高まったことだ。「ラゾーナ川崎プラザ」は東口の商業施設と違って低層型で通路幅にゆとりがあり、ベビーカーを押していても買い回りしやすい。大きな広場で子どもを遊ばせることもできるし、子ども連れファミリーへの配慮も行き届いている。

「ラゾーナ川崎プラザ」のある川崎市幸区における15歳未満の年少人口は、1980年頃から減少が続いていた。00年に入りほぼ横ばいであったが、「ラゾーナ川崎プラザ」がオープンした06(平成18)年の1万7958人から、24年には2万2276人まで増加している。年少人口比率は日本全体の数値より高く、子育て世代が集まっていると読み取れる。

夜の街・工業の街から、平日も土日も賑わう商業の街へ

「ラゾーナ川崎プラザ」は、川崎が長年抱えてきた「夜の街・工業の街」という印象を、劇的に変貌させた。

東口にはなかった洗練された都心らしさや、ファミリー向けの買い回りやすさといった要素を付加したことが奏功。川崎は今や、平日も土日も若者や子育て世代で活気づく、県内有数の商業地としての地位を確立した。

続く後編では、川崎はもともとどのような街であったのか、そしていかにして「ラゾーナ川崎プラザ」が開発されたのか。歴史を詳しく紐解いていく。