自民党「ひとり良識派」村上誠一郎氏が語る“一強政治”への懸念 「議席は選挙制度のマジック」「絶対的な信任を受けたわけではない」

 一時当選が危ぶまれた自民党の「ひとり良識派」が、国会へ帰ってきた。村上誠一郎氏(73)は今回で衆院当選14回目。時に党の政策に真っ向から意を唱えるなど、執行部にとって“煙たい”存在とされることも少なくなかった。そんな村上氏は「民主主義を守るために、言うべきことは言い続ける」と意気軒高だ。「一強」となった自民党はどうあるべきなのか、政策課題にどう向き合うか、村上氏本人を直撃した。

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 村上氏は今回、小選挙区重複立候補者より下位の比例代表四国ブロック単独10位での立候補となった。通常、自民党が四国ブロックで得られる比例議席は3程度のことが多く、選挙区で3人落選すると村上氏には議席が回らない計算だった。政治部記者が解説する。

「四国には小川淳也氏(香川1区/中道改革連合)や玉木雄一郎氏(香川2区/国民民主党)ら有力野党候補もいます。最終的には自民党の大勝で村上氏も当選しましたが、公示の時点では村上氏が議席に届くかかなり微妙だと見られていました」

 今治市などを地盤とする村上氏は愛媛2区で盤石の強さを誇ったが、区割り変更で県内の議席が1つ減ることに伴い、前回2024年の総選挙で選挙区を譲って比例単独に転出した。前回は比例1位だったが、今回は“まさか”の名簿順位だった。

「比例転出にあたり、党本部と村上氏は覚書を取り交わしています。前回の衆院選については村上氏を『(比例の)上位登載予定者とする』と明記されていましたが、今回は『関係者と調整を図り、(村上氏と選挙区から出馬する井原巧氏の)両者が当選を果たせるよう、最大限の努力を行う』という表現だったようです。結果として両者が当選したものの、10位という順位には高市政権が村上氏を冷遇したのでは、という見方もされていました」(同)

 そうした逆境を乗り越えて再び国会に議席を得た村上氏は、いまどんな思いなのか。

■これまで以上に自制した政権運営が必要

――衆院選の結果、自民党は単独で3分の2を超える議席を得ました。全委員会の過半数を独占し、参議院で否決された法案も単独で再可決できる巨大な力を得ることになります。

私は自民党の国会議員ですから、もちろん勝ててよかったです。ただ、手放しで喜べる状態ではないと思います。今回、投票率は56.26%、小選挙区の自民党の得票率は49.1%でした。全有権者のうち自民党候補に入れた割合を意味する絶対得票率は約27%に過ぎません。今回の議席は野党の多党化と選挙制度のマジックによって生まれたもので、決して有権者から絶対的な信任を受けたわけではない。既に「大きな信任を得た」と言う人がいて懸念しているところですけれど、これまで以上に自制しながらの政権運営が必要になります。

■「トランプさん頼み」の外交には懸念

――とはいえ、これだけ与党が巨大になり、野党が「弱く」なった状況下では、健全な国会論戦がなされるのかという不安も残ります。国会の機能をどう担保すべきでしょうか。

 まず何よりも、新人議員も含めて国会議員がきちんと政策を学ぶ必要があります。知識がないのに質問ができるわけがありません。それから、国会以外の場でも与野党の議員が顔を突き合わせて議論していくしかないと思います。つまり、党派を超えた勉強会です。これまでも、岩屋毅さんらが代表で政治哲学を学ぶ「超党派石橋湛山研究会」とか、(立憲民主党議員だった)阿部知子さんらがやっておられたパレスチナ・イスラエル問題についての勉強会「超党派人道外交議員連盟」などがありました。行政、財政、金融、外交、やるべきテーマはたくさんあります。そうした場をつくって、議員が学んで、議論したうえで国会論戦に臨んでいくしかありません。数の力で議論の過程を省略するようなことは、あってはならないことでしょう。

――政策課題についてうかがいます。まず、外交・安全保障についてはどう考えていますか。高市早苗首相の「台湾有事」発言以来こじれている日中関係はなかなか好転しません。また、自民党が3分の2超の議席を得たことで、9条も含めた憲法改正に取り組むという声もあります。

 日本の外交・安全保障の原点は専守防衛で平和主義です。超大国が自国第一主義に走るなかにあっても、それを高らかにうたっていく必要があります。力による現状変更を認めず、民主主義や言論の自由という普遍的な価値を守るために、国際的な協調が必要です。イギリス・フランス・ドイツ・カナダなどG7の仲間や、インドはじめアジア諸国の仲間と一緒にやる努力を早急にすべきでしょう。

 日中関係については、総理なり外務大臣なりが先頭に立って行動を起こすしかない。3月に日米首脳会談が行われる方向ですが、これは高市さんが、4月の米中会談の前にトランプ大統領に会いたい、ということのようです。どうもトランプさん頼みの面があるのではないかと懸念しています。

 憲法改正は、議論はすべきです。しかし、まずやるべきは「知る権利」や「環境権」「財政健全化」についてです。9条や集団的自衛権は論点も多く、腰を据えてじっくりと取り組むべきものです。それから国民の喫緊の課題は何といっても物価高ですから、まずはそちらに取り組むのが先だと思います。

――では、その経済政策についてはどのように考えていますか。選挙戦中は高市首相から「円安ホクホク」という発言がありました。また、消費減税についても与野党双方が主張する事態になっています。

 物価高の一番の原因の一つは円安です。日本は加工貿易国だから、食料、エネルギー、材料を輸入する。それが円安で割高になるから物価高になっているんです。だから、その円安をどうやって止めるかということに尽きます。インフレ対策は政策金利を上げ、健全財政でいくのがセオリーです。全部真逆に行こうとしているわけです。GDPの2倍超、1300兆円以上の「国の借金」があるのに、いったいどうして「責任ある積極財政」なんてものが成り立つのか。与野党双方が財政ポピュリズムに陥っている現状は本当に残念です。

■政策論争自体を封じられることはありえない

――しかし、自民党も「2年間の食料品消費税ゼロ」を掲げて衆院選を戦いました。いわば国民との約束になっています。

 これには3つの問題があります。ひとつは全国のお店のレジシステムの変更や、値札の貼り替えを2年間で2回もやるということ。2つ目は、一度下げた税率を再び元に戻せるのか。これは相当難しいと思われます。そして3つ目は外食産業の問題です。食料品価格が下がれば家で食事をとることが多くなり、外食産業に大きなダメージを与えると考えられます。

 食料品8%の消費税がなくなると、一般家庭ならほぼ年4~5万円くらいの減税です。それならば、2~3人家庭なら石破内閣が去年の参院選で主張した1人2万円の現金給付でほぼトントンです。その方が経費は少なくて済みます。消費税の減税は「お金持ちでたくさん消費する人ほど減税効果が大きい」という逆進性も問題です。そうした点にも目配りをして制度設計をしてほしいと思います。

 確かに、給付はバラマキと批判され、減税の方がウケがいいようには見えます。それでも、例えば「チームみらい」は今回、消費税の減税を主張せずに議席を伸ばしました。国民の消費税の減税への賛否も調査によって数字がバラバラです。丁寧に説明すれば、多くの有権者の皆さんはわかってくれると思っています。

――自民党内は「高市一強」と言える状態に思えます。これからも議員個々人が良心に従って主張すべきことを主張できるのでしょうか。

 私自身は、10年間、1人で総務会で自分の信じるところを主張してきました。政策については常に是々非々でやってきました。政策や哲学については自分の考えに忠実でありたいと思いますし、自分の正しいと思うことを発言しなければ、国会議員をやっている意味がありません。政策論争自体を封じられるなんてことはありえません。

 ただ、私は小選挙区比例代表並立制導入に最後まで反対しました。そのとき懸念した以上に国会は劣化してしまいました。小選挙区制では党の公認を得られないと当選するのは難しい。2005年の郵政解散では公認を外されたり、刺客を立てられたりということがあって、党内にトラウマが残っています。中選挙区の時代は有権者とのコミュニケーションが何より大切でした。小選挙区制になってから公認と比例の順位と政治資金を、党幹部にすべて握られてしまいました。

 党の意向に異議を言うことは難しくなりつつあります。

 次の世代のためには、民主主義と財政規律を守ることが重要だと思います。そのために体力と気力の続く限り、国会や党において発言を続けていきたいと思います。

(聞き手・構成/AERA編集部・川口穣)

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