杉原愛子選手が開発、体操女子の悩みなくす衣装「アイタード」演技に集中できる〝相棒〟

体操ユニホーム「アイタード(AiTard)」をプロデュースした体操の杉原愛子選手=3日午後、東京都板橋区(相川直輝撮影)
五輪2大会に出場経験を持つ体操女子の杉原愛子選手(26)は、女子選手が抱える身体露出への不安や盗撮問題と向き合ってきた。太ももまでを覆う新型ユニホーム「アイタード」の開発に携わり、「衣装を理由に競技を辞めてほしくない」との強い思いを形にした。演技に集中させてくれる、心強い〝相棒〟を身にまとい、世界の第一線で活躍を続けている。

インタビューに応じる体操の杉原愛子選手=3日午後、東京都板橋区(相川直輝撮影)
「レオタードを着させたくない」

「アイタード(AiTard)」のロゴ=3日午後、東京都板橋区(相川直輝撮影)
開発の背景には、練習と大会で違う「装い」がある。日々の練習では多くの選手がハイレグのレオタードの上に、ショート丈のスパッツをはく。大会ではハイレグ型のレオタードを着用する。女子体操界の慣習は、長く選手の精神的負担や不安の要因となってきた。

インタビューに応じる体操の杉原愛子選手=3日午後、東京都板橋区(相川直輝撮影)
「レオタードが嫌で試合に出たくない」
「娘にレオタードを着させたくない」
選手、保護者の切実な声が「アイタード」開発のきっかけだった。2022年に一度競技を退き、23年に体操界を盛り上げようと会社をつくり、指導や普及活動に取り組む中で耳にした。
杉原選手は、競技の本質とは別の要因で体操を諦めてしまう現実があることを突き付けられた。会社の男性スタッフが発した「スパッツとレオタードつなげちゃったら」という言葉に心を動かされ、「衣装の選択肢を増やそう」と決めた。
競技に集中できる
レオタードにショートパンツ型の生地を組み合わせ、太もも上部まで覆う独自デザインを採用した。激しい動きでも裾がめくれたり、食い込んだりしないよう、細かく生地の伸縮性を調整した。露出を抑えながら、競技に必要な可動域やシルエットは確保した。
「アイタード」は、名前の「愛子」から名付けた。「ハイレグよりも下着がはみ出にくいという安心感だけで、精神的に大きな余裕が生まれる」と杉原選手。着用したジュニア世代や保護者からも好評だった。
企業も対策を進める
近年は、アスリートを標的に、性的な意図をもった盗撮や画像の無断拡散が深刻化している。競技団体や選手側の対策とのいたちごっこが続く。
スポーツ用品大手のミズノは、赤外線の透過を防ぐ新素材を開発し、ユニホームへの採用を進める。パリ五輪では、バレーボールや卓球の日本代表などに導入した。開発担当の田島和弥さんは「盗撮の不安を和らげ、集中できるよう選手をサポートしたい」と話す。
杉原選手は「着る側の思い」を何より大切にしている。「レオタードは体操を始めたときから憧れを持っていて、好きな衣装」と前置きし、こう強調した。「大切なのは選択肢があることで、誰もが体操を楽しめること。安心して競技に向き合える環境をつくりたいんです」(村田幸子)
- 卵子凍結した柔道の角田夏実さん 競技との両立の難しさに直面「考える幅広がった」