東京の「もう一つの」ケーブルカー 御岳登山鉄道

 【汐留鉄道倶楽部】太い鋼索(ケーブル)で結ばれた車両が急斜面を上り下りするケーブルカー。これまでも全国あちこちで乗ってきたが、今回紹介するのは東京都青梅市の御岳登山鉄道(滝本―御岳山)だ。

ふもとの駅・滝本で出発を待つ車両=東京都青梅市

 外国人観光客が押し寄せる高尾山のケーブルカー(高尾登山電鉄)に比べてやや地味な存在で、これまでなかなか訪れる機会がなかった。というのも、京王線の高尾山口から少し歩いただけで乗れる高尾山と違い、こちらはJR中央線の立川から青梅線で約50分、御嶽(みたけ)で降り、西東京バスに10分ほど揺られてようやくたどり着く。東京の「もう一つの」ケーブルカーと呼びたくなってくる。

 ちょっとややこしいのだが「みたけ」の表記には「岳」とその旧字「嶽」が混在する。標高929メートルの御岳山の名前も、青梅市の地名(御岳1丁目など)も、郵便局や橋の名前も「御岳」なのに対し、JRの駅名は旧字の「御嶽」。御岳山の山頂にある「武蔵御嶽神社」の表記にならってのことなのだろうか。確かに重厚な構えのJRの駅舎には、風格漂う旧字の「御嶽驛」の額がふさわしい。

もう一つの車両は別の塗色=東京都青梅市

 乗り継いだバスは多摩川上流に架かる橋を渡り、急坂を上って終点「ケーブル下」へ。さらに坂道を少し歩いて滝本の駅舎に入る。土日は最短16分間隔で運転。昼近くなると30分以上空くこともあるのだが、駅の販売コーナーは結構充実していて、飽きずに発車を待つことができた。

 御岳山のケーブルカーには、他にはない特色が一つある。ペット運賃が設定されていて、車内にはペットのための専用スペースも設けられている。武蔵御嶽神社のホームページによると、道に迷った日本武尊(やまとたけるのみこと)を導いたオオカミが「大口真神(おおくちまがみ)」としてまつられ、これが江戸時代には「おいぬ様」として親しまれ、今では愛犬の健康を願う人でにぎわうようになったのだとか。神社は愛犬祈祷(きとう)も行っており、ケーブルカーもそれに対応しているというわけだ。訪れた日も、リードを付けた犬を連れた人、子犬を抱いた家族連れなどが乗り込んでいた。

山上の御岳山の駅名標にも「KEIO」の表記。雰囲気を出すためか「嶽」も「驛」も旧字だ=東京都青梅市

 ふもとの滝本から山上の御岳山まで高低差は400メートル余り。最大勾配は25度、出発後、わずか6分で登り切る。御岳山の駅舎を出ると、すぐ横に展望コーナーがあり、はるか遠くに新宿の高層ビルや東京スカイツリーも見ることができた。

風格あるJR青梅線・御嶽の駅舎=東京都青梅市

 御岳登山鉄道、実は高尾登山電鉄と同様、京王グループの一員である。高尾山と違って京王線と接続しているわけでもないのになぜ?と思うが、先ほど乗った西東京バスもグループ会社なので「西多摩一帯の観光はわがグループで」という京王電鉄の意思の表れなのだろう。車両の前面や駅名標の「KEIO」の文字がそう語っているような気がした。 

 ☆共同通信・八代到