日本酒選びが下手な人が知らないラベルの読み方

特定名称で分かる日本酒の分類, 味の違いを出す醸造アルコール, 味わいの決め手となる精米歩合, フルーティーさを出す吟醸酵母

(写真:kotoru/PIXTA)

新年の挨拶など人と集まり、日本酒を飲む機会が増える時期。2024年12月には、「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産にも登録され、注目度が高まっている日本酒。新たな銘柄も段々登場してくる中、どれを選べばよいか悩ましいだろう。「特別純米酒」や「大吟醸酒」、「精米歩合」など……日本酒のラベルでよく見かける言葉だが、その違いを正しく理解している人は意外と少ないのではないだろうか。ラベルに記載されている言葉の意味が分かれば、より自分の好みに合った一本を選べるし、会話の中でも一目置かれるかもしれない。
NPO法人日本酒サービス研究会理事で、コンサル歴30年以上の酒のスペシャリスト・友田晶子氏が、著書『ビジネスエリートが知っている教養としての日本酒』より、ラベルから読み解ける日本酒の味と香りの違いについて、わかりやすく解説する。

特定名称で分かる日本酒の分類

日本酒の酒蔵は、清酒の製造免許場数で1117(国税庁「令和5酒造年度 清酒製造状況」)あり、1万種以上もの銘柄(商品)があるといわれています。その中からより好みの日本酒を選ぶには、ラベルを見て判断することでしょう。

【画像】日本酒はラベルのここを見ると違いがわかる

特定名称で分かる日本酒の分類, 味の違いを出す醸造アルコール, 味わいの決め手となる精米歩合, フルーティーさを出す吟醸酵母

ラベルの見方(画像:『ビジネスエリートが知っている教養としての日本酒』)

とくに②「特定名称」は、もっとも目安となる情報です。純米大吟醸、本醸造酒、純米酒など、特定名称がついているということは、高級酒とみなされる傾向があります。昔は、「特級酒」「一級酒」「二級酒」など級別制度に基づいた「級」が表示されていたのですが、1992(平成4)年に撤廃され、それに代わるようにして「特定名称」が使用されるようになりました。

特定名称は次の表のとおり、原材料や精米歩合によって、3グループ、8種類に分けられています。

特定名称で分かる日本酒の分類, 味の違いを出す醸造アルコール, 味わいの決め手となる精米歩合, フルーティーさを出す吟醸酵母

原材料や精米歩合によって8分類される(画像:『ビジネスエリートが知っている教養としての日本酒』)

本醸造グループ

①本醸造酒、②特別本醸造酒、⑤吟醸酒、⑥大吟醸酒

お米と米麹、醸造アルコールを使用したもの。すっきり軽快でドライな味わい。飲み飽きない。②「特別本醸造酒」は一部華やかなものも。⑤「吟醸酒」⑥「大吟醸酒」は、雑味になるお米の表面を磨くことで繊細になり、吟醸酵母によるフルーティーで華やかな香りがある。

純米グループ

③純米酒、④特別純米酒、⑦純米吟醸酒、⑧純米大吟醸酒

お米と米麹のみで造られたもの。お米本来のうま味が活きている。④「特別純米酒」は一部華やかなものも。⑧「純米吟醸酒」④「純米大吟醸酒」は、雑味になるお米の表面を磨くことで繊細で、吟醸酵母によるフルーティーで華やかな香りと同時に、お米のうま味も感じられる。

吟醸グループ

⑤吟醸酒、⑥大吟醸酒、⑦純米吟醸酒、⑧純米大吟醸酒

雑味になるお米の表面を磨くことで繊細になり、吟醸酵母によるフルーティーで華やかな香りがある。⑤「吟醸酒」⑥「大吟醸酒」は醸造アルコールを使用するため、より華やか。⑦「純米吟醸酒」⑧「純米大吟醸酒」は、華やかな香りがある。お米のうま味も同時に感じられる。

ただし、消費者に伝わりにくいのではと、特定名称をラベルに記載しないお酒も出始めています。

味の違いを出す醸造アルコール

「醸造アルコール」を使用しているか、していないかも、味の違いの目安となります。ラベル上のどこかに「純米」と記載があるかないかで見分けられます。

「純米」とあれば、原料は米と米麹のみ、なければ醸造アルコールを使用しているということが多いです。醸造アルコールのあるなしだけで香味を決めることはできませんが、「香りの華やかさ」「味わいの軽快さ、ドライさ」など、違いは感じられます。

たとえば⑥「大吟醸酒」と⑧「純米大吟醸酒」ならば、醸造アルコールを使用している前者がフルーティーで華やかな香り、醸造アルコールを使用していない後者が落ち着いた香りですし、①「本醸造酒」と③「純米酒」ならば、醸造アルコールを使用している前者がドライで軽快な味わいで、醸造アルコールを使用していない後者がコクとうま味がある味わいになる傾向があります。

フルーティーすぎず、香り控えめで、味もすっきりドライなタイプのお酒を飲みたいときは、①「本醸造酒」や②「特別本醸造酒」を、甘くてフルーティーなタイプのお酒を飲みたいときは⑥「大吟醸酒」や⑤「吟醸酒」を選ぶとよいということになります。

フルーティーだけど、お米の個性も感じたいときには、醸造アルコールを使用していない⑧「純米大吟醸酒」⑦「純米吟醸酒」を選ぶとよいでしょう。

味わいの決め手となる精米歩合

酒造りの際は、お米の表面にある栄養素が雑味になってしまうので、お米の表面を削り(磨き)ます。これを「精米」といい、米の表面を削り、残った部分をパーセンテージであらわしたものが「精米歩合」です。

たとえば表面を20パーセント削ったものは「精米歩合80パーセント」、半分削ると「精米歩合50パーセント」となります。ちなみに、ごはんとして食べるお米は10パーセントほど削ることが多いので、精米歩合90パーセントで、この数字が少なければ少ないほど、たくさん削ったことになるわけです。⑧「純米大吟醸酒」や⑥「大吟醸酒」は、精米歩合50パーセント以下とする決まりになっています。

希少価値の高いお米を半分以下まで削ってからお酒にするのですから、本当に贅沢です。

なかには、精米歩合「40パーセント」「23パーセント」「9パーセント」「7パーセント」、さらには「1パーセント」などというお酒も存在します。お米の表面を磨けば磨くほど(削れば削るほど)、雑味のない、洗練されて研ぎ澄まされた、どちらかといえばスマートな味わいになります。

反対に、あまり削らないと雑味が残ります。ただし、その雑味が米本来のうま味やコク、ふくよかさとなり、熟成が進むことによって変化や遊び味(さまざまにとがった、いびつな個性が、時間とともに共鳴し合い、融合し、熟れながら生まれていく味わいのこと)を生み出し、また違う魅力を発揮します。「精米歩合」の度合いで、日本酒はさまざまな個性を身につけることができるのです。

近年人気のある③「純米酒」は、醸造アルコールを使用していない、米と米麹だけのお酒というところが大きな魅力で、なにより、米のうま味を楽しめます。精米歩合についても「規定なし」。それこそ、まったく精米しない玄米で造ることも可能だということです。雑味を活かした個性ある濃厚な「純米酒」も、逆にたくさん磨いて、すっきりと軽快な仕上がりにした「純米酒」も造ることができます。「純米酒」は、さまざまなバリエーションがあり、そこが第一の魅力なのです。

フルーティーさを出す吟醸酵母

ただし、「精米歩合」が低い(たくさん磨いている)からといって、必ずしもフルーティーで華やかな味わいとはいい切れません。フルーティーで華やかなのは、「精米歩合」のせいではなく、そういった香りにするための「吟醸酵母」を使用しているからです。

華やかな吟醸香を醸し出す酵母として知られるのは、「きょうかい7号」「きょうかい9号」「きょうかい18号」や「1601」「1801」などの泡なし酵母です。ほかにも「山形酵母」「うつくしま夢酵母」、近年開発された「セルレニン耐性酵母」があります。「吟醸酒」とラベルに記載されていない「純米酒」「特別純米酒」「本醸造酒」「特別本醸造酒」であっても、吟醸酵母を使用していることがあります。そうすると、フルーティーで華やかな味わいになるのです。

ラベルが読めるようになると、好みの日本酒に出会える確率がぐっと高くなります。ぜひ活用してください。