東京メトロ東西線「南砂町」大規模改良工事の全貌

南砂町駅の工事の様子(写真;2026年2月筆者撮影)
首都東京の大動脈である東京メトロ。中でも東西線は利用者が多く、千葉県の西船橋駅と東京の中野駅を結ぶ重要路線である。
【写真を見る】▶混雑路線のイメージが強い東京メトロ東西線▶南砂町駅で進む大規模改良工事の現場の様子
都内有数の混雑路線に
最初に開業したのは高田馬場―九段下間で1964年12月23日のこと。東西線の建設目的は、国鉄・総武中央緩行線の混雑緩和を目的としたもので、国鉄線の南側に迂回する形で建設されたが、東西線の沿線も住宅の建設ラッシュがあり沿線人口が増加したため利用者が爆増し、結果的に東京を走る路線の中でも有数の混雑路線になってしまった。
当時の営団地下鉄は混雑緩和対策として、ラッシュ時間帯のダイヤ高密度化(増発)や、駅での乗降時間短縮を目的とした乗降ドアの拡幅・ワイドドア車の導入などを行ってきた。
しかし、車両対策や限界があるダイヤ改正では改善効果は限定的であり、東京メトロとしては抜本的な対策に乗り出すことになった。それは、ラッシュ時間帯での運行本数の大幅な拡大である。
ちなみに国土交通省の東京圏における主要区間の混雑率によると、2024年度の東西線の木場―門前仲町間は朝ラッシュ時(7:50~8:50)で150%の混雑率となっている。
2011年3月の東京メトロ・事業計画によると、東西線輸送力増強に伴うものとして「南砂町駅の線路とホームの増設」を行うとした。現在、快速が停車しない1面2線のホームに中線を追加し、ホームも2面に増設、3線化するというものだ。
この計画が実現すれば、同一方向の列車が交互に発着することが見込まれ、現在よりも柔軟な運転形態をとることが可能になる。列車遅延の防止やホーム上の安全性向上を図ることができるため、十分な停車時間を確保し、混雑緩和も図ることが可能であろう。

中線の工事の様子(写真;2026年2月筆者撮影)
新たな工期は2031年度
2013年夏に着手し、当初は2018年以降、2020年度を目標に工事が進められていたようだが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により輸送人員が落ち込んできたことから計画を見合わせ、延期が発表されていた。さらに材料調達に伴う変更や、3番出入り口(3月供用再開予定)の早期再開に向けた工事競合に伴う影響もあり、2025年10月の発表では、2031年度の工事完了を目標に進めている。
毎日早朝から深夜帯まで電車が運行している既存の駅やトンネルを横に広げる工事は、想像もつかないほどの難しい工事だと思われる。なおかつ、この辺りは東京湾が近いこともあり、地盤が軟弱な上、幹線道路も南北を丸八通りが通り、近くを永代通りが交差している。南砂町駅の2面3線化については、新しいトンネルを使用中のトンネルに対して、包み込むように建設し、その上で駅前後の区間を含む約440mのトンネルを取り壊し、南側に広げるというものである。
文章では簡単に書けてしまうが、列車運行中に行うことやこの周辺特有の軟弱な地盤、トンネルの沈下・浮上現象など、難易度が非常に高い工事だということがうかがえる。

新ホームが使用される中野方面行きホーム(写真;2026年筆者撮影)
今年2月に南砂町駅のホームを訪れると、改良工事の真っ最中だった。
中野方面は新しいホームが使用されており、中線部分が工事中であった。西船橋寄りのホームは依然、旧ホームが使用されており、中野方面と西船橋方面は渡り板が設置されており、警備員も配置されている。特に、中野寄りのホームでは段差があるので注意が必要だ。地上でもトンネル工事が行われていた。複数の出入り口が閉鎖され、看板を裏返しにして、「使用中止」を意味しているのがわかる。
飯田橋―九段下間の折り返し設備は?
今後の南砂町駅大規模改良工事の進捗について、東京メトロ広報部・広報課に聞いてみた。現在2031年度の完了とされている南砂町駅改良工事の進行具合、線路切替やホーム工事完了の見込みについては、「線路切替工事の実施時期や、2面3線化の供用開始時期は決定次第、あらためて公表する予定」だという。
工事の進捗が見え次第、発表するということなのだが、今後も工事の進行に影響する埋没物や地盤強化の必要性により、その対策を行うために進捗が遅れる可能性もあるのだろう。工事は安全第一が前提。トラブルなく、工事を進めてほしい。
また、東西線ではほかにも遅延解消や混雑緩和対策の工事が行われており、飯田橋―九段下間の折り返し設備の整備工事では、平面交差の解消に向けて整備が進められている。折り返し列車と後続列車の同時運行による将来の列車増発を可能にするためだ。この整備に関しては「2029年度に完了予定」とのことだ。整備完了のタイミングで東西線のダイヤ改正も行われると思われるので、少しずつ便利になることを期待したい。
ほかの路線でも混雑緩和対策が行われているのかについても聞いてみた。東京メトロがその回答の例として挙げたのは日比谷線。朝の混雑時間帯をわかりやすくするために、日比谷線沿線の朝活スポットを紹介しているという。「朝の時間を快適にお過ごしいただくためのお客様ご自身のアクションを応援するとともに、継続的なオフピーク通勤・通学へのご協力を通じた混雑緩和を目的とした取り組みを行っている」。
混雑緩和とは鉄道会社が行うハード的な部分、つまり列車本数の増便や設備の改良などのハード部分だけではなく、私たち利用者もオフピークを意識して利用することにより、ラッシュを分散させて混雑緩和を実現する方法もある。
以前も既存トンネルで大工事を行った事例が
話は少しそれるが、東京メトロでは以前にも既存トンネルで大工事を行った事例があった。小竹向原―千川間の連絡線設置工事である。副都心線の開業によって複雑化した有楽町線だが、特に朝ラッシュ時間帯に、小竹向原駅付近での平面交差が輸送上のネックとなってしまったのだ。
輸送の安定性を向上させるべく平面交差を解消するために、小竹向原―千川駅間に連絡線を新設し、平面交差を廃止。2路線とも互いの発車待ち調整が不要となり、円滑な運行ができるようになった。このとき「東京メトロは安全運行のためであれば、線路も動かす。都市のリズムへの調和は、決して乱してはならない」そんな強いメッセージが込められているように筆者には思えた。今後も東西線などの工事進捗状況を見守るとともに、さらなる混雑対策に期待したい。