ホルムズ海峡周辺でイランは船舶にどのような攻撃を行っているのか

海上自衛隊の掃海母艦「うらが」(海上自衛隊のサイトより)
米国は、事実上封鎖されたホルムズ海峡の完全開放をイランに求めている。しかし、イランが発表している「封鎖」とはどのようなものなのか、その実態については不明な点が多い。
そして状況の変化も激しく情報も錯綜していて、正確な情報を掴むことが難しい。
そこで、イランの海峡封鎖について、以下の点について考察したい。
①攻撃を受けた船舶は、どの地点でどの兵器でどのように攻撃されたのか
②攻撃回数の変化
③現在、ホルムズ海峡を通峡する船舶の動き
④完全開放を実現するために、西側諸国は何をすべきか
ホルムズ海峡・ペルシャ湾での被害
米軍とイスラエル連合軍(以後連合軍)は2月28日、イランへの攻撃を開始した。
攻撃を受けたイランは、ホルムズ海峡やペルシャ湾を航行中か湾に停泊中の20隻以上の船舶に対して、対艦ミサイル、自爆型無人艇、自爆型無人機、高速艇搭載の対舟艇ミサイル(対戦車ミサイルと同じ)で攻撃した。
また、高速艇に乗船した兵士によるロケット砲による攻撃と機関銃射撃も行っている。船舶攻撃は、概ね図1の赤点の位置である。
図1 イランの攻撃を受けた海域

出典:Joint Maritime Information Center、米国の戦争研究所(ISW)および攻撃を受けた各船舶の詳細な情報などをもとに筆者が作成
攻撃を受けた海域の特色は、ペルシャ湾全域ではなく、主にホルムズ海峡とその周辺海域であり、カタール沖、クウェート沖ではそれぞれ1隻と極めて少ない。さらに詳しく見ると、以下のとおりである。
①ホルムズ海峡の航路帯を航行する船舶
②ペルシャ湾とアラビア海を繋ぐ海路の出入り口となる港の付近の船舶
③②の周辺海域
その他、米国情報機関の情報(正式報道ではない)によれば、ホルムズ海峡に機雷が敷設されているという。また、イランの放送でも「機雷が存在する」という情報がある。
だが、実際に機雷に触れて、船舶が爆破されたという情報は今のところはない。フランスのエマニュエル・マクロン大統領も3月11日、「事実かどうか確認は取れていない」と述べている。
イランの船舶攻撃回数は減少している
3月1日(2月28日は確認されていない)以降、実際に攻撃を受けた隻数を1週間ごとにグラフにしてみた。
被害隻数の推移は、当初の1週間が最も多く、17隻(12隻という情報もある)、2週目は10隻(6隻の情報も)、3週目は4隻、4週目は0隻、5週目は2隻、6週目は1隻と減少している*1。
グラフ 被害を受けた船舶隻数の推移

出典:図1と同じ
*1=情報源によって被害の隻数が異なるのは、被害の程度によって報告が上がる場合と上がらない場合があるためと考えられる。
被害隻数が減少している理由は、連合軍の爆撃によって、イランの攻撃能力が低下したことが大きい。
また、イランが攻撃したかった船舶とは別の船舶に命中したケースもあり、無差別攻撃との批判を受けるのを避けたいためとも考えられる。
イランの攻撃方法とその影響
イランは、航行する船舶を攻撃する場合、様々な兵器を使用しているようだ。
攻撃された船舶の船員も、「何かが落下してきた」「砲弾の攻撃を受けた」など曖昧な発言をしているようで、どのような種類の兵器に攻撃されたのか明確に特定された事例はあまりないようだ。
そのためか、欧米などのメディアの報道を見てもはっきりしないものが多い。
例えば、ホルムズ海峡を航行中に被弾したとブルームバーグが報じたマルタ船籍のコンテナ船「Safeen Prestige」についても、無人水上艇あるいは砲弾の攻撃を受けたなどという複数の情報があり特定されていない。
情報が錯綜しているようだ。
そこで、被害状況から見て船舶がどの兵器でどのように攻撃されたのかを分析してみたい。また、攻撃手段別に、どのような被害・破壊を受けるのかについても分析する。
(1)対艦ミサイル攻撃
イランは中国製の「C-801対艦ミサイル」を保有している。
C-801は射程120~180キロで、弾頭重量は165キロである。独自開発による発展型もあり、その射程は300キロに及ぶとも言われる。
イラン本土からこのミサイルで射撃すれば、ペルシャ湾のほぼすべての海域を航行する船舶を攻撃することができる。
図2 対艦ミサイル・自爆型無人機攻撃(イメージ図)

出典:各種情報に基づき筆者作成
船舶がこの対艦ミサイルで攻撃され1発がまともに命中すれば、船体への軽微な損傷では済まず、爆破で船には大きな穴が開き、1日もしないうちに沈没する危険性がある。
今までに攻撃されたという船舶の情報からは、対艦ミサイルで直接攻撃されたり、沈没したりした船舶はないようだ。
(2)自爆型無人艇による自爆攻撃
自爆型無人艇は、船体の半分が水面に隠れ、上半分だけが海面上に見える。そのため、特に夜間には発見が難しい。
また、大量の爆薬を搭載できるため、無人艇1隻がコンテナ船や大型タンカーに衝突すれば、水面の近くで爆発した部分には大きな穴が開き、沈没する危険性が高まる。
図3 高速艇・無人艇を使った攻撃(イメージ)

出典:各種情報に基づき筆者作成
イランの無人艇は、誘導できる範囲が狭いという情報がある。これを信じれば、イランの無人艇攻撃は、ホルムズ海峡の狭い部分に限定されると考えられる。
先ほど述べた「Safeen Prestige」は、無人水上艇の攻撃を受けたという情報もあるが、その船が燃えている写真を見る限り、水面近くに穴がなかった。
このことから、水面からの攻撃ではなく、上部から攻撃を受けて船舶の上部が燃えたものと考えられる。
(3)自爆型無人機による攻撃
イランの無人機「シャヘド136」は、基本的に徘徊型ではないので固定目標を攻撃することに適している。一方、それをロシアが改造したものは徘徊型で、映像を見ながら誘導できる。
ペルシャ湾内の目標に攻撃する場合には、約2000キロある航続距離を抑えて爆薬を大量に搭載して攻撃していると考えられる。この機は、ペルシャ湾のすべての港湾に停泊している船舶を攻撃できる(図2参照)。
ロシアが開発した「ZALAランセット」無人機は、徘徊型で航続距離が約40キロで、ホルムズ海峡を通峡する船舶の攻撃には適している。
ただし、搭載爆薬量は約3キロといわれているので、最大効果を得るためには、命中させる箇所の選定が必要である。
(4)高速艇搭載の対舟艇ミサイル攻撃
高速艇に搭載している対舟艇(対戦車)ミサイルは、形状から旧ソ連が開発した「9M113 コンクールス」であると考えられる。NATO(北大西洋条約機構)のコードネームは「AT-5スパンドレル」で射程は4キロ。
本来、戦車や小型の舟艇を目標とするものである。ペルシャ湾では、高速艇に搭載し、大型貨物船やタンカーに近距離まで接近し、このミサイルを発射する(図3参照)。
大型船の積み荷や燃料など引火性のあるものに直接命中すれば、火災を引き起こし、場合によっては航行不能にもできるが、大型船舶を破壊したり沈没させたりするまでの損傷は与えられない。
(5)高速艇乗船の兵士による直接攻撃
高速艇に乗船している兵士が、旧ソ連が開発した携帯型・対戦車ロケット砲「RPG-7」を肩に担ぎ、船舶に100~200メートルまで接近し、ロケットを発射する攻撃である。
これは、イランの革命防衛隊兵士が以前から継続的に実施してきた方法である(図3参照)。
武器は機関銃の場合もある。直接攻撃を行いつつ、縄梯子を使って乗船し、放火するという方法もある。この方法は、船舶がイランに近い場合、特にホルムズ海峡で行われる可能性が高い。
対戦車ロケット砲による攻撃の特色は、不発の場合でも、直径約10センチの穴が開くことが多い。命中する箇所によっては、火災が発生する場合もある。
ホルムズ海峡通峡に関連する船舶の動き
ホルムズ海峡では、オマーンとイランの中間線より南側に、図4の青矢印のとおり、航路が指定されている。
現状では、赤○の範囲に機雷が設置されているのではないかという情報があり、またその範囲では、多くの船舶が攻撃されていることから、下図のマリントラフィック情報(2026年4月10日午前9時時点)にあるように、現状では船舶の通行はない。
連合軍の攻撃以降、完全に封鎖されているのかというと、その海域を極めてまれに通過する船舶もあることから、機雷を設置したというのはイランの脅しの可能性もある。
ホルムズ海峡を通峡できない船舶は、青○の海域に留まっている。
図4 ホルムズ海峡とその周辺の船舶の動き

出典:マリントラフィック情報(2026年4月10日午前9時)に筆者が加筆したもの
最近では、ほぼこの状態のままが続いている。
ホルムズ海峡に脅威は続くのか
イランによる船舶への攻撃は、次第に低調になっている。だが、完全に停止するのかどうかは、米国とイランの停戦交渉とイランが強硬派を統制できるかどうかにかかっている。
では、停戦が成立すれば、イランからの攻撃が停止するのか。
それは、交渉に不満がある強硬派(革命防衛隊)の意思によるだろう。前述のとおり、彼らには、各種攻撃方法がある。
強硬派兵士が、高速艇1隻で船舶に接近し小型ミサイルを撃ち込むことも、残存している対艦ミサイルや自爆型無人機で攻撃することもできる。
ペルシャ湾とその周辺で、強硬派兵士によるゲリラ的な攻撃はいつでもでき、その脅威を簡単に取り除くことは難しい。
西側諸国、日本はどう対応すべきか
米国・イスラエルとイランの政権との話し合いで、停戦にこぎつけたとしても、①機雷敷設の確認と処理、②船舶へのミサイル・無人機・直接攻撃の抑止と阻止のための軍用艦の護衛が必要になる。
特に機雷の確認と処理は、ペルシャ湾内に待機している船舶にホルムズ海峡を通過させるために、停戦から時間を置かずに実施したいところだ。
その際、高い掃海能力を持つ日本が、機雷処理の役割を担うことになる可能性は十分にある。
掃海艇の派遣までに、日本ではどれくらいの期間が必要だろうか。国会審議を経て掃海艇の派遣が決定されてすぐに出航しても、その海域に到着するまでには数か月はかかってしまう。
ホルムズ海峡は世界経済の動脈とも称されることがある。その目詰まりを止めるのは一刻も早い方がいい。可能なら停戦後直ちに機雷処理を実施したいところだ。
ホルムズ海峡は原油を中東に依存する日本経済の生命線でもあり、また国際貢献が求められる日本としては、停戦後すぐにも現場海域に掃海艇を派遣すべきであろう。
そのためには、停戦を前提にして今すぐにでも国会審議を行い、掃海艇と護衛艦をジブチにある海上自衛隊の拠点に派遣しておくべきだ。
日本政府と国会の迅速な対応が求められている。
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