30歳、貧しく育った息子はなぜ高級外車を買えたのか。56歳シンママが我が子を疑った「驚愕の真相」
「従業員の横領疑惑の調査も増えています。その背景には、依存症など心の病がある場合があります。自分の子供が犯罪に加担しているのではという親からの依頼もあります。ただ、調査の中には、依頼者の思い込みというケースも稀にあります」こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。
山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。
今回山村さんのところに相談に来たのは、食品輸入会社に勤務する56歳の藍子さん(仮名)だ。30歳で会社員となった息子が金遣いが荒くなったことを不安に思い、犯罪に手を染めている調査をしてほしいと連絡をしてきた。

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なぜ調査を依頼したのか
そもそも藍子さんは、お金の余裕もそんなにない中でなぜ調査を依頼しようと思うに至ったのでしょうか。
藍子さんは25年前、息子が5歳の頃に、暴力を振るう夫と離婚。高校卒業から勤めていた小さな食品輸入会社に勤務しつつ、時折スナックなどのダブルワークをしながら、息子を育ててきました。夫は当時工場勤務でしたが離婚しても養育費は一切払わず、今は失踪中です。
息子は高校卒業後に介護サービスを運営する会社に勤務しましたが、職場いじめで適応障害を発症し1年後に退職、職を転々とした後、27歳で現在の流通会社に就職。これは藍子さんがスナック勤務時に知り合った男性の紹介でした。
藍子さんはホッと一安心。生まれて初めて友達と旅行をするなど落ち着いた毎日を過ごしていました。しかし、半年前から息子の金遣いが荒くなったことで再び不安に包まれます。
息子はそれまで興味もなかったブランド品を購入するようになり、髪の毛も染めるようになりました。携帯を盗み見すると、ガールズバーかキャバクラに勤務する女性との交際しているような様子。さらに最近は、外国産の車まで購入したというのです。

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藍子さんは「息子はお店からお金を盗んでいるのではないか」という疑惑が確信に変わり、私たちに連絡をくれたのです。「息子の車のトランクに入って尾行する」とまで藍子さんは思い詰めています。
「高級外車」や「ブランド品」の真相
まずは、藍子さんと息子が住む都営住宅で、朝7時から張り込みを開始します。かなり古い団地タイプの建物で、5階建てですがエレベーターはありません。藍子さんの家は2階です。
団地の駐車場を見に行くと、息子が購入したという車がありました。ただ、明らかに中古車で、グレードもそんなに高くはありません。藍子さんは「高級外車を買った」と血相を変えていましたが、中古車の相場価格を見ると120万円程度のものもあり、手取り25万円でも買えないことはなく、少しホッとしました。

高級外車ブランドでも、中古品は手ごろに購入することができるものもある(写真と本文は関係ありません) Photo by iStock
調査日の息子の勤務時間は、10時から18時です。8時30分に家から出てくるところを追います。息子の身長は160㎝くらい。ややふっくらした体型で、ネイビーのポロシャツにデニム、スニーカーという服装です。いずれも洗われてあり清潔感がある。斜めがけにしているバッグはイタリアブランドのもので、撮影して画像検索すると、3年前のモデルで20万円くらいでした。長くいいものを使いつづけるのなら、頑張って購入することもあると感じます。藍子さんが「ブランド」に対して恐怖を抱きすぎているようにも思いました。
胸には「店長」の肩書が
客で混雑する都心の店舗に出勤すると、すぐに制服に着替えて店に出て、勤務時間前から働き始めます。息子は品出しもレジも慣れた様子で、同僚の外国人と笑顔で話している。お昼前に常連らしき70代の女性と世間話をしたり、藍子さんの口から聞いていたことからははるかにいい働きぶりをしています。客として買いに行くと、胸には「店長」の肩書きがありました。

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定時の18時を過ぎ、お店から出てきたのは21時。駅前の居酒屋に一人で入って、ハイボール2杯と焼き鳥、おにぎりと味噌汁を食べて帰宅。初日は動きがありませんでした。そこで、息子の休みの前日に再び調査することに。
今度はお店の前で張り込み、退勤後を追うことにします。20時に出てきた息子は、新宿に向かい、スマホを見ながら歌舞伎町のネットカフェに入っていきました。受付を済ませると、オープンスペースでスマホを見ながら10分ほど過ごした後、別の個室に入っていきました。通りがかりに音声を聞くと、明らかに女性と行為に及んでいます。おそらく、息子は買春をしているのでしょう。
個人間の売買春は、売春防止法において違法とされています。相手が18歳未満の児童である場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法に基づき、厳しい刑事罰(懲役や罰金)の対象にもなる。こちらのリスクも問題だと感じました。
ガールズバーで
15分ほどで個室から出てきた息子は、カウンターで料金を支払い、池袋に電車で移動。そしてあるガールズバーに入っていきました。ペアの探偵が息子を追って店に入ります。1時間後に出てきた探偵は、「息子は3万円のスパークリングワインをあけていたよ」と行っていました。

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店での様子を聞くと、息子はガールズバーの常連であり、ある女性と親しくなっていることがわかりました。その女性は、かなり依存的な性格だそうで、息子のことを客としてではなく、男性として意識している様子だったといいます。息子もまんざらでもなさそうだったとか。
「しかもその女性と息子は、昔から知り合いのような口ぶりで、あれは元彼女とかそういう関係だと思うよ」と話していたのです。12時過ぎに、息子は酔い潰れた女性を支えるようにお店から出てきました。
そして、10分ほどタクシーで移動し、女性の自宅らしい古いマンションに入っていく。道からエントランスに入る間も、女性はかなりお酒が入っているようで、足元もおぼつかなくて、しゃがみ込んでいます。

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それから30分、息子は女性の家から出てきて、24時間営業のファミレスへ。始発までうとうとしたりスマホを見たりして時間をつぶして、自宅に帰っていきました。
「息子は絶対に横領している」
以上を藍子さんに報告すると「これはどういうことですか?」と驚いていました。私たちの憶測では、息子はガールズバーの店員の女性に恋をしている。だからこそ性欲をぶつけたくなくて、事前に買春をしているのではないかと感じました。
藍子さんは「息子がこんなにお金を使えるわけがない。絶対に横領している」と言います。さらに「あなたが証拠を取れないなら、別の探偵に頼む」と怒っている。この時、もしかすると、藍子さん自身が、事実でないことを真実だと思い込む妄想性障害なのではないかと感じました。
妄想性障害の方と、統合失調症の方から調査依頼されることは実はよくあります。私も最初はわからなかったのですが、何度も依頼を受けるうちに、違いがわかるようになりました。妄想性障害は特定のテーマを強固に思い込む傾向があり、統合失調症は現実と非現実の区別がつきにくくなり、「スパイに尾行されている」などと真剣に思っているケースもあります。

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探偵の中には、この特性につけこみ、何度も調査を受けて高額な調査費用を請求する人も少なくありません。私は、そういう人を少なくしたいために、医療に繋いだことも何度もありました。
藍子さんは、私を怒鳴って発散しましたので、その後、気持ちは落ち着きます。放心状態のようになった藍子さんに「大変でしたね。まずは息子さんと話し合ったほうがいいと思いますが、今、心がとても疲れていると思います。お辛いでしょうから、次の探偵に相談する前に病院に行くといいと思いますよ。仕事を続けるためにも、ぜひ行ってみてください」とお勧めしたところ、藍子さんも「実はこのところ眠れなくて、行ってみます」とカウンセリングルームを出ていきます。
藍子さんが持っている調査報告書は、息子が見ることを想定し、ネットカフェの部分は抜いてあります。これは藍子さんに確認の上、そうさせていただきました。
息子からの連絡
それから1週間後、息子から「母がご迷惑をおかけしました」と連絡がありました。息子は母から横領の疑いをかけられていることを知っており、「前に、僕が従業員の横領について話したことが残っていたみたいですね」と言っています。

過去に息子が話した横領事件のことが頭に残っていたのか…Photo by iStock
「母は昔から“絶対こうだ”と思ったら、白でも黒と思い込む。暴力を肯定するわけではありませんが、父がDVをしたのは、そういう母に苛立ったこともあると思います。今回も、僕の素行を探偵に調査させたのはショックでしたよ」と言いながらも息子は「母は調査料を払いましたか?」と心配してくれました。
そして「これって、ネットカフェに行った日ですよね。どこで見られているかわからないな。一応、犯罪だって知っているので、もうしません」と続けます。そして、ガールズバーの女性は高校の同級生で好意は抱いているものの、付き合うまでは至らない話をしていました。
「母は病気だったんだ」
息子は接客しているだけあり、話し方が柔らかい。探偵にキレる対象者も多い中、落ち着いています。そして「今日、連絡したのは、母を精神科に繋げていただいたお礼です」と言いました。藍子さんは調査報告の翌日に、不眠を理由に心療内科に行きましたが、精神科の受診を勧められます。その時に医師から「家族と行ってください」と言われたそうです。息子は受診に同行し、医師と話をすると、妄想性障害の可能性があると言われたそうです。
「地元の精神科では、総合病院の紹介状を渡されました。それだけ病気は重いってことですよね。僕は幼い頃から母に苦しめられてきました。それが『母は病気だったんだ』といろんな面で楽になりました」

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そして最後に息子は、「母は僕を低収入だと思っていますが、実際はかなりもらっています。あと、あの外車は免許返納で手放す高齢のお客様から購入したもので、20万円もしないんですよ」と話していました。
息子は話のはしばしから、母・藍子さんに育ての恩を感じていることがわかりました。今後も母をサポートしつつも、自分の幸せを開拓していくでしょう。
今回の調査料金は25万円(経費別)です。