山手線「パンタグラフ大量破損」何が起きたのか

架線設備が断線、パンタグラフに接触, 21編成のパンタグラフに損傷, 架線のトラブルは少なくないが…, 「人の目」減る中で異常どう発見?

上から見た山手線の電車。線路上空に電力を供給する架線が通っている(記者撮影)

首都圏の鉄道を代表する存在であるJR山手線。5月22日夜、同線を走る電車の約4割でパンタグラフが損傷するというトラブルが起きた。

【写真を見る】架線トラブルで損傷した山手線のパンタグラフはどんな形?架線設備の断線はどこで、どの部分が切れたのか

原因とみられるのは、電車に電力を供給する架線設備の断線。翌23日も山手線は始発から運転を見合わせた。朝8時過ぎには全線で運転を再開したものの、約24万人に影響が出た。架線やパンタグラフのトラブルは過去にも鉄道各線で発生しているが、多数の電車でパンタグラフが損傷するのは異例だ。何が起きたのか。

架線設備が断線、パンタグラフに接触

架線トラブルで山手線が運転を見合わせたのは、5月22日の夜9時40分過ぎ。外回り電車の車掌が異常に気付き、渋谷駅で停車中にパンタグラフを点検したところ、ホーンと呼ばれる部分が折れ曲がっているのを発見した。

【写真】架線トラブルで損傷した山手線のパンタグラフはどんな形?架線設備の断線はどこで、どの部分が切れたのか

パンタグラフの損傷は、外回り線を走っていたほかの電車でも相次いで見つかり、同線は終電まで運転を見合わせた。

JR東日本によると、電力関係の社員が徒歩で全線を点検した結果、翌23日の0時30分過ぎに新橋駅構内の架線設備が断線しているのを発見。その後復旧作業を急いだ。23日始発からの運転はできず、再開は内回りが同日の朝7時08分、外回りは8時26分となった。

断線していたのは架線設備のうち、電車に電力を供給する「トロリー線」を支える「補助ちょう架線」とよばれる部分。JR東日本は、金具との接続部の不具合により補助ちょう架線が切れて垂れ下がり、接触したパンタグラフが損傷したと推定しており、詳細は調査中だ。断線が発生した時期についてはわかっていないという。

架線設備が断線、パンタグラフに接触, 21編成のパンタグラフに損傷, 架線のトラブルは少なくないが…, 「人の目」減る中で異常どう発見?

新橋駅付近で見つかった、損傷した架線設備(写真:JR東日本提供)

【写真】架線設備はどこが壊れていた?損傷した部分をアップで

21編成のパンタグラフに損傷

今回不具合のあった部分は2024年の11月に工事を行っており、作業の内容としては「特殊な工事ではなかったと考えている」(JR東日本)。

同社によると、補助ちょう架線と金具の接続部は1年に1回、地上から目視で異常の有無を確認しており、5月24日の始発までに直近1年間に同種の工事を行った部分については緊急点検を実施した。点検の結果、異常がある部分はなかったという。

パンタグラフが損傷したのは、山手線を走る50編成の電車のうち21編成。損傷が見つかった21編成はすべて当日に外回りを走っていた電車という。

山手線のE235系電車は1編成(11両)に計4基のパンタグラフを搭載しており、このうち1基は予備で、通常は3基を使用している。JR東日本によると、最終的に修繕したパンタグラフは計41基だった。

E235系をはじめ、近年のJR東日本の電車は予備のパンタグラフを搭載しているケースが多い。今回のトラブルでは2編成の電車が予備のパンタグラフを使用して回送したといい、有効活用された形だ。

架線設備が断線、パンタグラフに接触, 21編成のパンタグラフに損傷, 架線のトラブルは少なくないが…, 「人の目」減る中で異常どう発見?

山手線E235系のパンタグラフ(記者撮影)

架線設備が断線、パンタグラフに接触, 21編成のパンタグラフに損傷, 架線のトラブルは少なくないが…, 「人の目」減る中で異常どう発見?

損傷したパンタグラフ。左側のホーンと呼ばれる部分が曲がっている(写真:JR東日本提供)

架線のトラブルは少なくないが…

また、山手線には通常運行しながら架線の状態を検測できる車両も存在する。断線の発見や調査に役立つか気になるところだが、JR東日本によると「E235系の(架線の)モニタリング装置は、トロリー線の高さや変位・摩耗などを確認するものであり、補助ちょう架線を確認するものではない」という。

電車にとっては、走行に不可欠な電力を供給する「命」ともいえる架線。デリケートな部分だけに、切断などのトラブルは鉄道各社でこれまでにも時折発生している。2024年11月には、本州と四国を結ぶJR瀬戸大橋線の架線が切れ、瀬戸大橋上で電車が約6時間立ち往生するトラブルがあった。

ただ、運行本数が多く路線網が広域におよぶとはいえ、JR東日本は架線関連のトラブルがやや目立つようだ。

最近では、今年3月に高崎線の高崎―倉賀野間で架線の断線が見つかり列車が一時運休。2024年8月には中央・総武線各駅停車の車両と東京メトロ東西線に乗り入れた車両でパンタグラフの破損が見つかるトラブルがあった。車両基地内の架線が原因とみられている。架線そのものではないが、2023年8月には東海道線の大船駅で架線を支える電化柱が傾き、電車と衝突する事故もあった。

新幹線でも、2024年1月に東北新幹線の上野―大宮間で、装置の故障により垂れ下がった架線に列車が接触、東北・上越・北陸新幹線の一部区間が終日不通となった。同年11月には東北新幹線で「はやぶさ」が走行中にパンタグラフ破損により緊急停止するトラブルもあった。

「人の目」減る中で異常どう発見?

今回の山手線の架線断線は、車掌が異変に気付いたことでパンタグラフの損傷の発見につながり、列車が立ち往生するなどのトラブルはなかった。小さな異常も見逃さないプロの目が問題の拡大を防いだといえる。

架線設備が断線、パンタグラフに接触, 21編成のパンタグラフに損傷, 架線のトラブルは少なくないが…, 「人の目」減る中で異常どう発見?

山手線のE235系電車(撮影:風間仁一郎)

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一方で、首都圏でも列車のワンマン化が進みつつある。JR東日本では今年3月から常磐線各駅停車と南武線でワンマン運転を開始した。2030年頃までに山手線や京浜東北線などでも実施する計画だ。

ワンマン運転はすでに多くの路線で実績があり、都市部でも私鉄や地下鉄が先行して導入している。JRも導入にあたってはホームドアの完備をはじめ、さまざまな安全対策を講じている。ただ、「人の目」が減ることは確かだ。

鉄道インフラのトラブルは今回のような不具合だけでなく、近年増加する自然災害や異常気象によるリスクもある。人口減少が進む中、鉄道のワンマン化や将来的な自動運転・無人化などは大都市圏でも不可避といえる。熟練の「人の目」が減る中で、異常をいかに早期発見して影響拡大を食い止められるかは重要な課題だろう。