「筋トレ、糖質制限、油抜き…これ全部間違いです」『ダイエットの常識』のウソホントを医学博士に聞く

“欧米発”のダイエットが日本人に向いているとは限らない

  • 『筋トレで基礎代謝を上げれば痩せる』
  • 『白米なしであれば焼き肉は太らない』
  • 『糖質ゼロのビールや蒸留酒なら太らない』

これらは誰もが信じている“ダイエットの常識”だが、実はこれ、すべて間違い。これで痩せられるはずもなければ太らないはずもないのだ。

夏に向けてダイエット中の人には酷な話だが、日本人は体質的に『内臓脂肪がつきやすい』。そればかりか『筋肉がつきにくい』『夏は基礎代謝量が低下する』といった特性があり、ダイエットには不利な体質を持っている。

ところが巷に流れているのは “欧米発”のダイエット情報ばかり。海外で流行したダイエット法がそのまま日本で紹介されており、情報自体に間違いはなくても、日本人には当てはまらないダイエット法も多い。

30万人以上を診てきた内科医・産業医の奥田昌子医師によると、体質に合わないダイエット法にはまり、痩せないばかりか太ってしまう人が少なくないという。

糖質制限、筋トレ、油抜き、朝バナナ……などなど、痩せるためにいいとされてきたダイエット法は数多くある。奥田医師が5月に上梓した著書『これをやめれば痩せられる』では、そうした数多くのダイエット法からやめるべき“ NG習慣”を取り上げ、巻末ではワースト1~7位までをランキング。良かれと思ってやってきたダイエット法がなぜNGなのかを医学的にわかりやすく伝えるとともに、痩せる近道はダイエットの無駄を省くことにあると説いている。

“欧米発”のダイエットが日本人に向いているとは限らない, 日本人は「筋トレ」では痩せられない!?, 「糖質制限」は正しいのか…, 摂取カロリーを抑えることが健康にもつながる 

20分経たないと脂肪が燃え始めないっていうのもウソ!?「運動し始めた当初から脂肪は燃え始めます」と奥田昌子医師

日本人は「筋トレ」では痩せられない!?

昨今は糖質制限や筋トレがブーム。例えば『筋トレで基礎代謝を上げれば痩せる』『白米なしであれば焼き肉は太らない』と思い込み、週末はジムでトレーニングに励み、“白米抜き”“糖質ゼロのビール”で我慢している人もいるはずだ。

だが、奥田医師によるといずれも日本人の体質を踏まえるとやめるべきダイエット(NG習慣)。これらを含む3つのNG習慣について解説してもらった。

◇筋トレで基礎代謝を上げれば痩せるはずだ

「インターネットなどでよく見かけるのが、『筋トレで筋肉を大きくすると、基礎代謝量が上がって脂肪が燃えやすくなる』といった記事です。 

筋肉がつくと基礎代謝量が上がる――ここに間違いはありません。とはいえ痩せるとは言えないのです。 

それには『筋肉がつきにくい』という日本人の体質が関係しています。 

人間の筋肉には持久力をもたらす赤い繊維と、瞬発力をもたらす白い繊維の2種類があり、赤と白が入り混じって構成されています。 

赤と白、どちらが多いかは人種によって異なり、日本人は70%が赤い繊維。対して欧州系やアフリカ系の人は、70%が白い繊維とされています。実に対照的です。

そして筋トレで大きくなるのは、日本人が30%しか持っていない白い繊維なのです。 

さらに、努力をして筋肉をつけたとしても、それによって上がる基礎代謝量はほんのわずか。そう考えると、『筋肉をつけて基礎代謝量を上げて痩せる』というダイエット法は、日本人にとっては非常に効率が悪いと言わざるを得ません」

では、運動において効率の良いダイエット法は何か。

冒頭にも書いたが、日本人を含む東アジア人はそもそも『内臓脂肪がつきやすい 』。この体質を踏まえると、筋トレではなく「有酸素運動」が適しているという。

「まず、体につく脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪の2種類があり、性質が異なります。 

全身の表面につく皮下脂肪に対して、お腹につく内臓脂肪は生活習慣病など体に悪影響を及ぼす危険な脂肪と捉えられています。さらに太るときは内臓脂肪からついていく。 

内臓脂肪がつきやすいことは、日本人にとって健康面でもダイエット面でも大きな弱点になります。とはいえ痩せるときも内臓脂肪から落ちていくのでプラスの側面も。 

運動に関して言うと、皮下脂肪は筋トレ(無酸素運動)でもある程度落ちますが、内臓脂肪は有酸素運動でしか落ちません。筋トレでは減らないのです。そのため日本人がダイエット目的で運動するなら有酸素運動一択。これを覚えていただければと思います」 

「糖質制限」は正しいのか…

◇白米なしであれば焼き肉は太らない

今や糖質はダイエットの敵。白米は糖質ゆえ、白米さえやめれば焼き肉だって大丈夫――そう思いがちだが、焼き肉は脂質を多く含んでいる。食べて太らないはずはない。

「以前は“ダイエットするなら肉や揚げ物、乳製品など脂質の摂取を控える”のが一般的でした。ところが少し前から“糖質制限”が謳われ始め、脂質より糖質が問題だという主張が広がっています。 

インスリンの分泌によって糖質の一部が脂質に変わるため、糖質も控えるべきという声が出てきたわけですが、“脂質より糖質が問題”という主張が行き過ぎてしまい、『糖質の摂取に気を付けていれば脂質は気にしなくていい』のような極端な話にすり替わってしまったように思います。 

脂質は油の塊。脂肪のかけら1gを燃やすには、9キロカロリーも消費する必要があります。対して糖質はその半分以下、4キロカロリーの消費ですむ。脂質の摂取を控えるべきなのは明らかです。その上で、脂質だけ控えて安心するのではなく、糖質を控えることにも目を向けましょうというのがバランスのとれた考え方だと思います」

ちなみにビールも糖質ゼロなら太らないと思って毎晩飲んでいる人は多いと思うが、アルコールにはカロリーがある(缶ビール1本〈350ml〉約100キロカロリー)。当然、摂り過ぎれば太る。糖質ばかりに目を奪われがちだが、ダイエットの敵は糖質だけではない。

“欧米発”のダイエットが日本人に向いているとは限らない, 日本人は「筋トレ」では痩せられない!?, 「糖質制限」は正しいのか…, 摂取カロリーを抑えることが健康にもつながる 

プロテインを大量に飲むなどしてタンパク質を過剰に摂取するのもNG。体が処理できるタンパク質の量には限度があり、消費しきれなかったタンパク質は「脂肪」になり、体の負担にもなる

◇夏も冬と同じカロリーのものを食べる

もうすぐ暑い夏がやってくる。「夏は体力を消耗するし消費カロリーも多いから大丈夫だろう」と言い訳しつつ、ウナギやとんかつで体力維持に努めようとする人もいるはずだ。

だがこれは大きな間違い。日本人の場合『基礎代謝量は季節ごとに変動する』。夏は冬に比べて8%も基礎代謝量が低いため、夏に冬と同じカロリーのものを食べていたら間違いなく太るのだ。

「欧州系の人の基礎代謝量は一年を通じて一定というデータがあるのですが、日本人は季節で基礎代謝量が変わります。おそらく日本の蒸し暑い夏に体が適応した結果なのでしょう、冬は基礎代謝量が高くなり、夏は低くなるのです。 

気温が下がる冬は、体温を維持するために体の中でエネルギーを燃やし、熱を発生させる必要が生じるため基礎代謝量が高くなります。一方、気温が高い夏はエネルギーを燃やさなくてもラクに体温維持ができます。その分、夏は基礎代謝量が低くなります。 

つまり、夏はほかの季節に比べて消費するカロリーが少ないのですから、同じように食べていると太ってしまうわけです」

消費カロリーの少ない夏はカロリーを多く摂る必要がないからこそ、食欲も自然と落ちる。うまくできた体の仕組みなのだが、食欲が落ちることを“悪いこと”だと誤解している人も。

「食べなければ夏バテする、体力が落ちる、抵抗力が落ちる、だからスタミナのつくものが必要だと書いた記事を目にしますが、そんなことをしていたら太るだけです。体力が落ちたときは体を休ませればいい。

ほかの季節と同じように活動する必要はありません。水分はもちろん、体に蓄えることができないビタミン・ミネラルの補給は必要ですから、野菜を意識的に摂るようにすれば十分です。 

健康な人なら夏に食欲が落ちるのは自然なこと。ダイエットを心がけている方であれば、なおさら自然に任せるのが一番だと思います」 

摂取カロリーを抑えることが健康にもつながる 

肥満に悩む人のなかには、自分の間違った食生活に気づいていない人が多く、「もっと言えば目を背けているような気もして心配になる」と奥田医師は言う。

「患者さんに痩せられない理由を聞くと、現実には食べ過ぎが原因なのに運動不足のせいにする方や、バナナやアボカドなど流行っている食品を列挙して、『ダイエットにいいから食べているのに痩せられない』と話す方がたくさんいらっしゃいます。 

どんな食品でも食べて痩せるなんてことはあり得ません。痩せられない理由は食生活にあるのに、そこには目を向けようとしない。非常に残念です」

日本人のダイエットには、運動なら先に書いた有酸素運動、食事なら「太らないための食生活」を心がけることが大切だ。そのための“ダイエットの黄金ルール”をしっかり押さえておきたい。

奥田医師が考える日本人に合った”ダイエットの黄金ルール”とは「摂取カロリーを抑え、次に脂質を減らし、その次に糖質を控える」ことだという。

「“太らないための食生活”は、摂取カロリーを抑えることが第一歩。結局のところ、何を食べるにしても、摂取したカロリーよりも消費するカロリーが下回れば太ります。 

それを証明したのが、アメリカの栄養学の専門家が自身を実験台にした調査結果です。 

彼は一日の摂取カロリーを米国人の平均値の半分である1800キロカロリーに抑え、10週にわたって毎日ジャンクフードだけを食べ続けました。 

すると10週間後、12kgも体重が減ったのです。ジャンクフードしか食べていないのに、体重が落ちるばかりかコレステロール値も血糖値も下がり、朝は爽やかに目覚め、活力に満ち、生まれ変わったと感じるほど体調が良くなったそうです。 

専門家が医学的なプログラムに沿って行った実験ですから、一般の方は真似しないでいただきたいのですが、痩せるには摂取カロリーが何より大事だということ、カロリーを抑えれば健康になることが明らかになったわけです」

では、糖質より脂質を先に減らすのが望ましいのはなぜか。

「『白米なしであれば焼き肉は太らない』でも少しお話ししましたが、脂質と糖質のどちらを減らすかについてはさまざまな意見があります。 

ただこの問題にも人種の違いが大きく関係しています。インスリンの働き方が違うのです。近年では、その違いによって脂質と糖質のどちらを控えるべきかがわかってきました。 

実は日本人を含む東アジア人は、もともとインスリンの分泌量が欧州系の人の半分から4分の1しかありません。ただ東アジア人のインスリンは欧州系の人のインスリンよりしっかり働く。“効き”がいいのです。ただし、日本人も肥満になるとインスリンの効きめが悪くなるため、その意味でも肥満の解消が大切です。

この体質の違いを踏まえ研究を進めた結果、インスリンの分泌量が多く、インスリンの働きが悪い欧州系の人が健康になるには『低糖質食』が望ましく、逆にインスリンの分泌量が少なく、インスリンの働きが高い東アジア人には、『低脂質食』が向いていることがわかりました。 

理由については研究途中なので、ここからは私の推論です。 

先ほど糖質の一部が脂質に変わるとお伝えしましたが、元来インスリンが非常によく効く日本人は、インスリンが効果的に働いて素早く処理できることから、脂質に変わりづらいのだと思います。そのため欧州系の人と同じだけ糖質を摂ったとしても、脂質に変わる糖が少ない。だから糖質より脂質を抑えたほうがダイエット効果は高いのだと推察しています。 

ですからまずは摂取カロリーを抑え、次に脂質、その次に糖質を抑えるのが“ダイエットの黄金ルール”。これを念頭に食生活を見直していただければと思います」 

“欧米発”のダイエットが日本人に向いているとは限らない, 日本人は「筋トレ」では痩せられない!?, 「糖質制限」は正しいのか…, 摂取カロリーを抑えることが健康にもつながる 

「『これをやれば痩せられる』といった“足し算思考”のダイエットに疲れている人も多いはず。行き詰まっている人には『これをやめれば痩せられる』と“引き算思考”でNG習慣を見極め、つぶしていくことが大切です」

▼奥田昌子 京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、検診ならびに人間ドック実施機関でのべ30万人以上の診察・診療にあたる。海外医学文献と医学書の翻訳も行ってきた。航空会社産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続けている。著書に『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社ブルーバックス)、『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)、『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社)、編訳書に『超訳 養生訓 病気にならない体をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

“欧米発”のダイエットが日本人に向いているとは限らない, 日本人は「筋トレ」では痩せられない!?, 「糖質制限」は正しいのか…, 摂取カロリーを抑えることが健康にもつながる 

奥田昌子『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社)

“欧米発”のダイエットが日本人に向いているとは限らない, 日本人は「筋トレ」では痩せられない!?, 「糖質制限」は正しいのか…, 摂取カロリーを抑えることが健康にもつながる 

『これをやめれば痩せられる』(東洋経済新報社)より

取材・文:辻啓子