ホームレス男性を巡る119番に「寝とるだけやないか」と様子見…結果は死亡 救急出動はなぜ見送られた?
今年1月、岐阜県土岐市消防本部がホームレス男性の異変を知らせる119番を受けたが、救急車を出動させず、その後に男性は死亡した。市は先月、対応が不適切だったとする第三者委員会の報告書を公表した。静岡県でも経緯は異なるが救急車が出動せず、亡くなる事案があった。二つの出来事から教訓とすべき点は何か。(山田雄之)
◆「手足が動いていない」と岐阜・土岐市消防に通報
「ただちに救急隊を出動させなければならなかった。対応は適切ではなかった」。岐阜県土岐市の加藤淳司市長らは8月19日、こう結論づけた第三者委の報告書を会見で明らかにした。

消防本部の不適切な対応について、8月19日に会見を開いて謝罪する岐阜県土岐市の加藤淳司市長(左)ら=同市役所で(吉田英悟撮影)
報告書などによると、1月13日午後6時すぎ、市内の60代女性から、50代のホームレスの男性が毛布が積まれた場所で横になっているが「呼びかけても返答がない」「手足が動いていない」と119番があり、通信指令員2人、当直責任者1人が対応した。
◆対応した通信指令員は出動「必要」と判断したが…
通報を受けた通信指令員は救急隊の出動が「必要」との認識を持ったが、隣で聞いていた別の通信指令員は「寝とるだけやないか」と発言し、違う場所にいた当直責任者に「様子がおかしい気がするという通報があった」と報告し、出動の判断を仰いだ。「119番」と伝えられなかった当直責任者は一般電話による情報提供と受け止めて「様子を見よう」と応じ、出動は見送られた。男性は翌14日に死亡が確認された。
第三者委は不適切な対応となった原因として、「救急出動の要否を判断するマニュアルが整備されていなかったこと」や「通信指令員に対する教育不足」を挙げ、「個人の資質で結論が異ならない運用にするための措置を講じることが組織の役割」として、再発防止に向けた対策を求めた。
◆静岡では「無音出動」を求められた末に悲劇が
静岡県では通報者側の理解を得られず救急隊が出動せず、死亡に至った事案が起きた。磐田市など5市1町が共同運用する中東遠消防指令センターによると、昨年10月中旬、掛川市の50代男性の家族から「2日間ぐらい動けない」と119番を受けた。
だがサイレンを鳴らさず救急車に来てほしいとの要望や搬送先の指定があったため、救急車利用の判断を相談できる県の電話窓口や介護タクシーを紹介して対応を終えた。5時間半後、家族から再び119番があり、救急車で病院へ搬送したが男性は死亡した。

中東遠消防指令センターがある静岡県磐田市役所福田支所=2月、勝間田秀樹撮影
センターの担当者は「サイレンを鳴らさずに緊急走行はできない。1度目の通報時、説得を試みたが納得いただけなかった。出動要請を断ったわけではなく、当時の対応は適切だったと考えている」と説明する。
総務省消防庁救急企画室の担当者は「救急隊は救急搬送するために必要なことを実施する。緊急走行や搬送先の決定は、救急隊の判断で行うことを理解していただきたい」と話す。
◆消防側も通報側も気をつけなければならないこと

救急車(イメージ写真)
岐阜や静岡のような事案を生まないために、どうするべきか。日本救急医療財団の横田裕行理事長は「119番を受ける通信指令員の医学的知識の向上や的確な判断ができるマニュアルづくりが大切だ。119番を受けたら原則、救急車を出動させるという意識の再確認も必要」と提言する。
そして昨年の救急出動件数が全国で約771万件と過去最多を更新する状況にも言及し、「出動要請に迅速に対応する際に、タクシー代わりの利用や頻繁な回数の要請が大きな課題となっている。社会が現状を理解することも重要だ」と強調。「通報者も『119番は、救急搬送の依頼』との認識を持たなければならない」として、救急要請すべきかどうかを聞ける「#7119」などの電話相談窓口の利用を呼びかける。
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