加齢で筋肉の減少する「サルコペニア」の予防策を医師が解説。ポイントは朝食とタンパク質。特に高齢者が多くとるべき食材とは

厚生労働省の「令和4年 国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の歩数の平均値は男性が6465歩、女性が5820歩で、直近10年間で減少したそうです。そのようななか、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也先生は「歩かない生活を送ることは、年をとると歩けなくなることに直結する」と指摘します。そこで今回は、伊賀瀬先生の著書『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』から、いつまでも歩ける人になるための心がけを一部ご紹介します。

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【図】朝食のタンパク質摂取量の割合と筋肉量の相関

年をとったら肉を食べよう

朝食にはしっかりタンパク質をとる

加齢とともに筋肉が減少する現象を「サルコペニア」といいます。ギリシャ語でサルコは「筋肉」、ぺニアは「減少」のことですので、サルコペニアは加齢にともなう筋肉減少症と訳せます。

サルコペニアになると、転倒しやすくなったり、その際に骨折しやすくなったり、そのほかにも認知機能の低下が起こったりするなど、さまざまな不都合が生じます。

やがてフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)になり、最終的に寝たきりにつながることで健康寿命を縮めてしまうこともあります。

サルコペニアの予防には骨格筋の維持が大切

最近の研究によって、一般的な生活における栄養や運動の面から、サルコペニアの予防法がわかってきました。

サルコペニアを予防するには、骨格筋の維持が必要です。骨格筋の筋肉量、筋力などは、毎日の食事におけるタンパク質摂取量と強い関連があります。

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『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(著:伊賀瀬道也/PHP研究所)

栄養に関する研究は多く、タンパク質摂取量が少ないと、「3年後の筋力が低下する(サルコペニアになる)」とか、「3年後にフレイルが出現しやすくなる」といった現象が確認されています。

また、高齢になると筋肉が減少しやすくなる原因として、「同化抵抗性」があると説明されています。これはいいかえると、タンパク質を構成するアミノ酸が筋肉組織に届いても筋肉タンパクがつくられにくいということです。

ただし、適切なアミノ酸を多めに供給することによって、骨格筋でタンパク質の合成を誘導する可能性があります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」によると、一般的なタンパク質摂取量の目安は、18〜65歳の男性で65グラム、65歳以上の男性で60グラム、成人女性で50グラムとされていますので、これを参考にしましょう。

ロイシンの含量を高めると筋力が増加する

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、タンパク質摂取量の平均値は、男性で78.8グラム/日、女性では66.4グラム/日となっており、現代の日本人はとくにタンパク不足にはなっていないようです。

でも、標準偏差といわれるデータのばらつきが非常に大きいことから、しっかりとる人と、とらない人の差も大きいことがわかっています。

年をとったらお肉を食べましょう」というのは、このようなデータに基づいているものと思います。ただし、腎臓病の人は、主治医との相談が必要です。

タンパク質を構成するアミノ酸のなかでも、「ロイシン」といわれるアミノ酸は最も大切です。

ややこしい名前ですが、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)という物質は、ロイシンの約5パーセントが体内において変換される代謝産物であり、筋肉におけるタンパク質合成を誘導する重要な働きをすると想定されています。

必須アミノ酸のうち、ロイシンの含量を40パーセントまで高めた介入試験の結果でも筋力の増加が認められており、ロイシンの補給の有用性が示されました。

前に述べたように、高齢者はアミノ酸が筋肉組織に届いても筋肉タンパクがつくられにくいのです。

そこで、ロイシンを多く含む食品(たとえば、乳製品、卵、魚、大豆など)をとって効率のよいかたちでアミノ酸を補充すると、より有効にサルコペニアを改善する可能性があることが指摘されています。

朝食をとらない人は体重が増え、筋肉量が低下する

さらに大切なことが、最近の研究でわかってきました。それは1日のタンパク質摂取について、朝に重点をおくというものです。

「朝食の習慣は健康によい」という報告が多くあります。このメカニズムが、「時間栄養学」という言葉とともに明らかになってきました。時間栄養学とは、「体内時計」を考慮に入れた栄養学のことです。

私たちの体を構成するすべての細胞には体内時計がありますが、じつは体内時計のリズムは24時間より10〜30分程度長いのです。

ですから、毎日、自分で24時間にあわせる必要があります。これを、「概日(がいじつ)リズム(サーカディアンリズム)」といいます。

たとえば、朝食をとると、体内時計を24時間にリセットできます。そのほかに、脳(中枢)にある体内時計は、朝の光であわせるといわれているので、朝、起きたら日光を浴びるべきです。

逆に、体内時計を無視した生活を行うと、体は不調になります。

たとえば、朝食を食べない習慣を続けていると、体内時計の異常が起こって、「体重が増え、筋肉量は低下する」という動物を使った研究があります。

つまり、朝食の習慣をつけておくと、体内時計が正常化するため、太りにくい体質をつくる可能性があるわけです。

朝食のタンパク質摂取量の割合と筋肉量

人を対象とした研究も行われています。

たとえば、2021年に日本で行われた研究では、上図のように、全体の食事に占める朝食のタンパク質の割合が多いほど、筋肉量や筋力が高いことが知られています。

つまり、朝食をしっかりとることに加えて、可能であれば、朝食で多めにタンパク質をとることが大切です。

ぜひ毎朝、規則正しく起床して、日光を浴び、卵や豆腐(可能なら肉、魚)などの良質のタンパク質をふくんだ朝食をとるようにしましょう。

こうした生活習慣が、しっかりとした筋肉をつくるのです。

※本稿は、『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。