「ヘッドライトまぶし過ぎ」の正体! なぜSUVとLEDは「光の壁」を作るのか?

LED普及と光害リスク

 自動車のヘッドライトは近年、大きな進化を遂げている。現在はLEDが主流となり、省エネでより明るいレーザーヘッドライトも登場している。しかし、性能向上は一方で新たな課題を生んでいる。ヘッドライトの“まぶし過ぎ問題”だ。

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 英バークシャーに拠点を置くTransport Research Laboratory(TRL)が2025年10月に発表したリポートによると、多くの英国人ドライバーが車のヘッドライトを明るすぎると感じ、対向車のライトで目がくらむ体験を繰り返しているという。

 TRLで研究を率いたショーン・ヘルマン氏は、この調査がライトのまぶしさが英国のドライバーにとって深刻な問題であることを示す「説得力のある証拠」だと説明する。こうした現象は

「ヘッドライトグレア(headlight glare)」

と呼ばれ、特にLEDライトの普及にともない深刻化している。ヘッドライトの光量や照射範囲には基準があるものの、夜間運転でまぶしさを訴えるドライバーは多い。

・特定のヘッドライト

・大型車との対面時

に問題が集中して報告されており、安全運転上の課題となっている。

ヘッドライトグレアの可視化

ヘッドライトのイメージ(画像:Pexels)

 TRLは1850人の英国人ドライバーを対象に、夜間運転中のヘッドライトグレアの経験に関する調査を実施した。調査では計器を搭載した試験車両を用い、ドライバーの通常の目の位置に関するデータも収集した。

 測定項目には

・輝度や位置

・周囲の他車両の影響、

・試験車両のピッチングやロール

・同乗者による主観的なグレア報告

などが含まれる。収集したデータは機械学習アルゴリズムで分析され、状況に応じた最大輝度や観察者の報告に関連する変数が特定された。

 調査結果は、ドライバーが夜間運転でヘッドライトのまぶしさを重要かつ広範な問題と認識していることを示している。

夜間運転の影響

ヘッドライトのイメージ(画像:Pexels)

 LEDや白色のヘッドライトは、まぶしさと関係している可能性がある。白色光や青色光に目が慣れにくいことも示唆されている。車高の高いスポーツタイプ多目的車(SUV)などはライトの位置が高く、それもグレアの原因になり得る。

 調査対象者の33%は、ライトのせいで夜間運転を諦めるか回数を減らしたと回答した。さらに22%は、夜間運転を減らしたいがほかに選択肢がないと答えている。

 TRLは、車両に搭載されるLEDライトは明るく集束性が高く、夜間に人の目が慣れにくい青色光を多く放出していると指摘している。

 王立自動車クラブ(RAC)の上級政策責任者ロッド・デニス氏は、この調査結果を歓迎する。長年にわたりドライバーの声を集めてきた経験が確認された形であり、明るいヘッドライトがグレア問題を引き起こすことは想像上の現象ではないと述べている。

 高性能ヘッドライトはドライバーに明確な利点をもたらす。しかし、ほかのドライバーがまぶしさに悩まされないよう、バランスを取ることが重要だとデニス氏は指摘する。

 同氏は、TRLの報告書が最終的にすべての道路利用者に利益をもたらす変化の道筋を示すため、慎重に検討されることが極めて重要だと述べている。

 英国検眼士協会の臨床アドバイザー、デニス・ブーン氏は、運輸省がドライバー支援のため即時実行可能な措置を講じるべきだと指摘する。特にヘッドライト規制の見直しに向けた詳細な調査の委託が必要だという。

 これを受け、英国政府は車両とヘッドライトのデザインをより詳しく見直す方針を発表している。

日本のまぶし過ぎ問題

リポート「公開済みプロジェクト報告書 PPR2072 英国道路における車両照明のグレア:文献レビュー」(画像:Transport Research Laboratory)

 日本でも自動車のヘッドライトのまぶしさは一部で問題視されている。2023年には、ダイハツ工業の軽自動車でヘッドランプレベリング試験の不正が発覚し、話題となった。

 日本の道路交通法では、2017年3月の改正以降、夜間は原則としてハイビームで走行することが標準とされ、対向車や先行車がいる場合はロービームに切り替えることが明確化されている。

 こうした規制により、まぶし過ぎ問題には一定の対策が施されているといえる。しかし、ユーザーがヘッドライトを交換した際に光軸がずれ、ロービームでもハイビームに近い状態になる場合がある。また、車両のカメラで周囲を検知し自動でハイビームとロービームを切り替えるオートハイビーム機能の不具合も、まぶしさの原因となることがある。

 一部の車両では、停車時と走行時のピッチング幅が大きく、走行状況によってはロービームでもハイビームに近い状態になることがある。

 日本の道路交通法では、すれ違いや先行車がいる場合に「減光義務」が課されている。この義務に違反すると、普通車であれば違反点数1点と6000円前後の反則金が科される。

 一方で、夜間に歩行者や対向車、先行車がいない状況でもロービームのまま走行すると、道路交通法違反となる可能性がある。

 こうした状況は、ドライバーにとって悩ましいまぶし過ぎ問題である。現状では、各自が状況に応じてハイビームとロービームを適切に切り替えるしかない。また、夜間の運転時に偏光グラスを装着することも一案となる。