公明党・西田幹事長語る自公連立解消の「舞台裏」

取材に応じてくれた西田実仁氏。歯切れのいいトークが繰り広げられた(写真:笑下村塾)
2025年10月に行われた首相指名選挙を経て、自民党の高市早苗総裁による新政権が発足した。しかし、その足元では四半世紀にわたって日本政治の軸となってきた「自公連立政権」が解消され、戦後政治の大きな転換点を迎えている。
連立離脱という衝撃的な決断の背景には何があったのか。高市政権が抱える危うさと、混迷を極める安全保障環境にどう向き合おうとしているのか。その舞台裏を知るべく、公明党の幹事長として交渉の最前線に立った西田実仁氏に、ジャーナリスト兼社会起業家のたかまつななが直撃した。
幹事長は「党の舞台回し」の総責任者
──はじめに、幹事長という役職は、党の中でも大きな権限を持っているイメージがありますが、一般の方からは具体的に何をしているのか見えにくい部分もあります。西田幹事長は日々どのような業務を担っているのでしょうか。
党内では雑用的なことも含めて、文字通り全部やるんですよ。対外的には代表がメインに立ち、メディアの注目も代表に集まりますから、その代表をいかに支え、盛り立てていくか。そのために党内をひとつにまとめるのが、幹事長の大きな役目です。
もうひとつ、本来の重要な仕事は「他党との交渉」や「舞台回し」です。今回の連立離脱の際も、最終的な交渉は自民党の高市総裁、鈴木俊一幹事長、そしてわが党の斉藤鉄夫代表と私の「2対2」で3回行いました。(西田実仁氏、以下同)
──連立離脱というニュースには日本中が驚きました。西田さんの中では、いつ頃からその可能性を現実のものとして考え始めていたのですか?
昨年の10月4日が大きな節目でした。自民党で高市総裁が誕生し、ご挨拶に来られた際、私はわが党の支持者の皆さんから寄せられた「3つの懸念」を申し上げました。
1つ目は、長引く「政治とカネ」の問題に決着をつけること。2つ目は、靖国神社参拝をはじめとした歴史認識への懸念。3つ目が、過度な外国人排斥ともとれる言動への懸念です。
連立政権というのは、理念や政策が一致しなければ長続きしません。10月4日から10日という短い期間でしたが、この間、相当な議論を重ねました。2つ目、3つ目の懸念については一定の共有ができましたが、肝心の「政治とカネ」については、残念ながら自民党の姿勢に変化が見られなかった。
いつまでも連立協議を続けていれば国会も開けず、政治空白によって国政全般が停滞してしまいます。そこで、10月10日に「一致しなければ解消」という最終的な決断を下したのです。
自民党が守ろうとする「左側のポケット」
──政治改革を求める声は以前からありましたが、「高市さんが相手だからハードルを上げたのではないか」という見方もあります。その点はいかがですか。
決して急に言い出したことではありません。私は政治改革本部長として、自民・立憲・国民・公明の4党でこの1年間、議論を相当積み上げてきました。論点はすでに明らかであり、私たちが問うたのは、法律の細かい条文ではなく「前向きに解決しようとする基本姿勢」があるかどうかの1点でした。
これは相手が小泉(進次郎)さんであっても同じことを求めたはずです。衆参両院の選挙で与党が過半数割れしたということは、民意を得ていないということ。本来なら下野(げや)する(政権を失って野党になる)ほどの事態です。それにもかかわらず政権に留まろうとするなら、これまでとは異なる姿勢を示すのが当然ではないでしょうか。

西田氏の発言には迷いがない(写真:笑下村塾)
──高市総裁に「やりたい」という意思があっても、自民党という巨大な組織を動かすのは難しかったのでしょうか。
こうした問題はトップダウンでやるべきことです。特に政治資金の問題は、やりたくない人が多い。自民党には約7700の政党支部がありますが、その多くは議員個人の「選挙区支部」です。
30年前の改革で、議員個人の資金管理団体(右側のポケット)への企業・団体献金は禁止されました。しかし、政党支部(左側のポケット)という抜け道が残ったまま。私たちはこの「左側のポケット」を閉じるべきだと主張していますが、地方議員を含めて反発が強いのが実態です。
「人間主義」の政治を実現するための“戦略的離脱”
──連立を解消すれば、公明党にとっては選挙協力という大きなメリットを失うことになります。議席が減り、自民党への「歯止め」としての役割も果たせなくなるリスクについては、どうお考えですか。
議席数が減ることへの懸念は確かにあります。しかし、私たちはもう「議席を右肩上がりに増やす」という過去の延長線上の戦略はとっていません。
私たちの党の最大の強みは、全国に3000名いる地方議員のネットワークです。この「現場主義」の影響力は、連立の有無にかかわらず衰えていません。地域の自民党や立憲民主党の議員を動かしていく力は依然として持っています。
これからは、「自分たちの考える人間主義の政治を実現してくれる人なら応援する、そうでなければしない」という、より人物・政策本位の姿勢で国政に影響を与えていく。それが公明党としての新しい戦略です。
──具体的に、国会内で存在感を示し続けるためには、どの程度の規模が必要だと考えていますか。
議会の仕組み上、予算案を出すには21人、衆議院で法案を出すには51人の賛同が必要です。現在、公明党と国民民主党で法案を出していますが、両党合わせて51人ぴったりです。これくらいの規模を維持しなければ、議事運営の理事も出せなくなり、意見を言う機会が失われてしまいます。よって、20名以上の規模は、何としても死守すべきラインだと考えています。

気になる疑問を次から次へとぶつけるたかまつなな(写真:笑下村塾)
──安全保障についても伺わせてください。高市総理が国会で台湾有事の「存立危機事態」について踏み込んだ答弁をしたことが議論を呼んでいます。
総理大臣は自衛隊の最高指揮官であり、防衛出動を命じる唯一の存在です。その発言は極めて重い。私は10年前の平和安全法制の際、いわゆる「インナー」として法案作成に携わりました。「明白な危険があるとき」という要件ひとつをとっても、なぜ「おそれ」ではなく「危険」なのか、なぜ「明白な」という言葉を足したのか。相当時間をかけてきめ細やかに理屈を積み上げて言葉を選んで作り上げてきました。
なぜ「こういうケースなら必ず出動する」と明言せず、「総合的に判断する」という表現に留めるのか。それは曖昧にしたいからではなく、日本の防衛上の「手の内」を相手に見せないためです。
──戦略的に伏せておく必要があるということですね。
その通りです。こうしたらこうする、と事前に宣言してしまうことは、相手に「それ以外なら攻撃しても大丈夫」というメッセージを与えかねません。安倍総理以来、一貫して「総合的に判断する」という答弁を貫いてきたのは、それが日本を守るために最も正しい姿勢だからです。高市総理に対しても、その伝統的な慎重さが必要だったと私は思います。
現在は高市総理の下で、「従来の方針と完全に一致している」という閣議決定を改めて行い、いわば答弁を上書きする形で政府方針を明確にしています。中国側に対しても、この閣議決定に基づいて誤解を解く努力を尽くすべきです。

台湾有事について、いち国民としても現状を把握しておくべきだろう(写真:笑下村塾)
「対話の仕組み」づくりが大きな抑止力となる
──私たち国民は、台湾有事というリアリティにどう向き合うべきでしょうか。
現実的なシミュレーションは絶対に必要です。自衛隊がどう動くのか、アメリカはどう動くのか。専門家による机上演習や議論は、国民の理解を深めるためにも重要でしょう。
しかし、最も大事なのは「起こさせないこと」です。抑止力(防衛力)と外交は車の両輪です。私がもし総理大臣になったらやりたいことのひとつに、「北東アジアの常設対話機構」の設立があります。
残念ながら今のアジアには、常に顔を合わせる対話の仕組みがありません。案件がなくても大使級が常駐し、常に意思疎通ができる場を作る。日本の周りの安全保障環境は極めて厳しいからこそ、こうした外交努力を徹底しなければなりません。
──私たち一般市民にできることはありますか?
民間の交流や対話こそがすごく大切です。「この国には親しい友人がいる」という実感こそが、心の中に平和の砦を築きます。知らない人同士ならゲームのように感じてしまうかもしれませんが、知っている人同士であれば、そうはなりません。
対外的な対話の仕組みづくりと、国内における人口減少社会へのインフラ維持。この両面から日本の未来を支えるトータルな像を示していくことが、これからの政治に求められていることだと思います。