台湾有事、ロシアは中国の軍事作戦に参加するのか 波紋呼ぶラブロフ外相発言

2025年5月のモスクワでの首脳会談で握手するロシアのプーチン大統領(右)と習近平・中国国家主席(ゲッティ=共同)

 中国軍が周辺海域で大規模な演習を行うなど台湾を巡る情勢は緊迫の度を強めている。こうした中、ロシアのラブロフ外相が有事の際、中国を支援すると発言し、波紋を呼んだ。実際の危機時に、ロシアは中国を支援するのか、その場合はどのような形が想定されるのか、防衛省の研究機関である防衛研究所の山添博史・米欧ロシア研究室長に最新の状況を聞いた。(共同通信=太田清)

山添博史氏(本人提供・共同)

▽エスカレート

―台湾を巡っては昨年末、米国防総省が「2027年末までに戦争に勝利する能力を獲得すると中国が見込んでいる」との報告書を発表。同じ時期に中国軍による台湾を包囲する軍事演習も行われた。一方、ラブロフ外相は昨年12月28日に公開されたインタビューで「台湾海峡での事態がエスカレートした場合」、中国を支援すると発言した。どう解釈すべきか。

 「発言は中国とのいっそうの協力関係を示すことで、ロシアの東アジアでのプレゼンスを強調し、ロシアの国益を考慮するよう、日米に促す狙いがあったと考えている」

 「一方で、ある意味ラブロフ外相はそれほど強硬ではない姿勢も示した。中国を支援する根拠として示したのは、2001年に中国とロシアの間で交わされ『善隣友好協力条約』。この条約は(米国など)特定の第三国を対象としたものではなく、紛争の政治的解決を記載しているからだ」

 「中ロ両軍の軍事協力の実績に触れ、有事の際は『あらゆる選択肢がある』などと、いかようにも解釈できるよう発言することもできたはずだが、それをしなかったところに慎重な立場が垣間見える」

中国軍の東部戦区が12月30日、台湾周辺での軍事演習の一場面として「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントに投稿した画像(共同)

▽意図

 ―発言は、ロシアと中国ではどのように伝えられたのか。

 「ロシアでは有事の際に中国をサポートするという解釈で伝えられ、ロシア当局の発信の意向がその点にあったことがうかがえる」

 「一方、中国の国営新華社は、ロシアが中台を不可分の領土とする『一つの中国』原則をあらためて確認し、日本の『軍事化』を批判したと報じており、有事の際の中国支援については触れなかった」

2024年9月15日、日本海で演習を行うロシアと中国の艦艇(タス=共同)

▽陸上輸送

 ―では台湾有事の際、ロシアはどう行動すると予測されるのか。

 「容易に勝てると期待できる状況でない限り、軍事作戦に直接的な参加はしないだろう。反撃を受ければ極東ロシアは脆弱だからだ」

 「しかし、日本周辺での軍事演習でミサイル発射や多数の爆撃機飛行訓練を行うなど威圧的な行為を行う可能性はある。また、海底ケーブルの破壊工作などを実施する恐れもある。日米同盟からの反撃を避けつつ圧力をかけ、ロシアのプレゼンスを示すと同時に、中国に恩を売ることを狙える」

 「他方、中国はあくまで台湾問題を自国の内政問題ととらえており、ロシア側の軍事面でのサポートは望んでいないだろう。もっとも有事が長期化し、海上封鎖などで海路での物資輸送が途絶えれば、中国はロシアなどからの陸上輸送に頼らざるを得ず、その面でロシアの支援に期待する面はあるかもしれない」

▽パートナー

 ―近年、中国とロシアは日本周辺での軍事演習や空海での合同パトロールを実施、軍事面での協力を深めている。

 「互いの軍事協力、信頼関係を強化しているのは間違いないが、共同軍事作戦が可能な連携がとれているとは思えない。あくまで両国それぞれの軍事能力向上を狙ったものだろう。ロシアとしては東アジアでのプレゼンスを強化して、日米などに対しロシアの意向を考慮するよう求める狙いもある」

 ―間もなく5年目に突入するウクライナ戦争でロシアと中国の協力はどう変容したのか。

 「半導体などの物資供給や原油購入などを通じて、中国がロシアの戦争継続能力を支えているとの批判は強い」

 「しかし、ロシアと中国は共通の仮想敵国に対し協力して軍事面での対応を約束する同盟関係にはなく、あくまでパートナーシップだ。相手が抱える紛争に縛られず、自由に行動しながら必要な限りの協力をする。また、ウクライナ問題で中国は対話を通じた外交的解決を唱えているのに対し、ロシアは提案を一応傾聴する姿勢を見せながら半ば無視している」

 「ロシアは、領土外への核配備をしないことをうたった23年の中ロ共同声明に反して隣国ベラルーシに核配備を行った。北朝鮮部隊の参戦も中国の神経を逆なでした。いわば両国は『同床異夢』の状況で、互いが自国の政策決定や国益を優先している状況だ」

  ×   ×

 1975年大阪府生まれ。ロンドン大スラブ東欧研究所修士。京都大博士。英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)客員研究員を経て現職。