「新幹線豚まん」炎上商法疑惑に発展の本質

「551は新幹線で食べちゃダメだろ」投稿に賛否が, なぜ炎上商法と疑われたのか, 新幹線マナーが燃えやすい理由, 密室×性善説×スマホという燃料, 炎上ホイホイを見破る護身術

渦中の食となった、551蓬莱の豚まん (写真:STUDIO EST/PIXTA)

いま、SNS上で「新幹線で豚まんを食べる是非」が問われている。駅構内で豚まんを買い、車内で食べたという実業家が、別の乗客から注意されたと投稿。「においの強い食品を車内で食べるのはマナー違反だ」と批判が殺到したのだ。

【写真を見る】炎上した河原氏のXへの投稿(河原由次氏のXより)

さらには「炎上商法ではないか」と疑う声まで飛び出すほどに発展している。

ネットニュース編集者として、これまであらゆる“炎上”を見てきた経験からすると、こうした投稿がバッシングを集めるケースは珍しくない。だが今回、なぜここまで「作り話では」と疑われたのか。それには、新幹線マナーという題材が持つ「炎上ホイホイ」としての構造が深く関係している。

「551は新幹線で食べちゃダメだろ」投稿に賛否が

話題になっているのは、短時間で働ける、いわゆる“スキマバイト”などのサービスを展開している「ネクストレベルホールディングス」代表取締役の河原由次氏が、Xに行った投稿だ。

河原氏は新大阪駅で「551蓬莱(ほうらい)」の豚まんを購入し、東京へ向かう新幹線の車内で食べていたところ、隣席の男性から「551は新幹線で食べちゃダメだろ」と言われたという。

そして、男性のような“価値観を押しつける人物”への疑問を呈しつつ、「食べちゃダメなら、まず新大阪駅の551閉めろよ。それか『新幹線持ち込み禁止』って看板でも出しとけ」などと反論した。

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炎上した河原氏のXへの投稿(河原由次氏のXより)

この投稿に対しては、「普通にみんな食べている」といった擁護もある一方で、「食べないのが常識」「マナー違反だ」といった批判のほうが多く、炎上に発展。SNSでは論争が広がり、河野太郎元外相も「551って新幹線で食べたらあかんの」と参戦した。

河原氏はその後、東京オフィスのエントランスに「豚まんを投げつけて去った人物」がいると報告し、「SNSで賛否あるのは仕方ない事ですが、ここまでくるとただのいじめ、いや、犯罪です」と、過剰なバッシングを控えるよう呼びかけた。

しかし、これに対しても「自作自演では」「そもそもの車内エピソードも創作では」といった声が絶えない。

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ネクストレベルホールディングス 代表取締役 河原由次氏(本人のInstagramより)

なぜ炎上商法と疑われたのか

実際にトラブルが起きたか否かは、当事者のみぞ知ることだ。オフィスへの被害については「警察には通報済み」と書かれているため、追って続報が出ることだろう。そこで今回は、車内トラブルが事実であることを前提に、「なぜ炎上商法と疑われたのか」を考察してみたい。

結論から言えば、新幹線マナーというネタが「インパクトは強いが、裏取りされにくい」という構造を持っているからではないだろうか。車内で起きた出来事を、第三者が検証する術はほぼない。

もし投稿を見た当事者から何か言われても、「よくある話なので、あなたの話ではありません」と返してしまえば回避できる。つまり、注目を集めやすいのに反証もされにくい——。これが「炎上商法向きの題材」として認識されているため、実際にトラブルにあって投稿した人物まで、同じ目で見られてしまうのだ。

加えて言えば、新幹線マナーはもともと"燃えやすい"ジャンルだ。燃えやすい題材を使って注目を集めているように見えると、「狙っているのでは」という疑念を持たれやすくなる。

なかでも燃えやすいのが、“ニオイ”に関するマナーだ。駅弁や駅構内で販売されるグルメの中でも、「西の551蓬莱豚まん」と「東の崎陽軒シウマイ弁当」は、そのおいしそうな匂いゆえに、公共の場での食事をめぐる議論の的になりやすい。

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ニオイのマナーでたびたび議論の的になる551蓬莱の豚まん(写真:STUDIO EST/PIXTA)

芸能人や著名人からも、移動中のエピソードとして語られる。元「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮さんは2024年12月、かつて551蓬莱の豚まんを食べた際に「通路を挟んだ人に顔を見ながら舌打ちをされた」と明かしつつ、「俺は隣で嫌いなパクチーを食べてても何とも思わない。今、カレー煎餅を開けたい」と投稿した。

しかし、最終的に亮さんは、未開封のまま“カレー煎餅”を自宅に持ち帰る。そして「配慮が本当の正義ならば、ルールや法律にした方が良い。自分の思う配慮やマナーが本当の正義だと思う事の危険さを分かって欲しい。だから、法律やルールがあると思っています」との考えを述べた。すると、「言い訳するな」「共感できない」など、火に油を注ぐ展開となった。

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東では、崎陽軒のシウマイ弁当が議論になりやすい(写真:tomo/PIXTA)

新幹線マナーが燃えやすい理由

このように、著名人であっても新幹線マナーの話題に触れると燃えやすい。

ニオイに限らず、新幹線や特急にまつわるトラブル報告は、SNS上で日常茶飯事となっている。代表的な事案が、「指定席なのに先に座っている人がいた」といったもの。たいていは相手が座席を間違っていた、もしくは自由席券で勝手に座っていたといった結末だ。

通路側と窓側のイザコザもある。通路側の乗客が、テーブルにいろいろなものを載せている、もしくは足元に大きな荷物を置いている状態。しかも相手が眠っていたりすると、「トイレに行きたいのに……」と困惑することになる。

反対に、窓側にしかないコンセントを、先に座っていた乗客に占有されて、電源の確保に苦労したなんていう話もある。

いずれにせよ、本来であれば平等に与えられているはずの「車内を快適に使う権利」が、バランスを欠いた状態になっている。つまり、“ズルさ”や“自分勝手さ”が問題になっていると言えるだろう。

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新幹線の車内でのイザコザネタはSNSでは日常茶飯事だ(写真:pixta003/PIXTA)

密室×性善説×スマホという燃料

だが同じような状況はほかにもある。ここで改めて、なぜ、これほど新幹線ネタは燃えるのか。長年同様の論争を扱ってきた筆者の経験から言えば、おそらく「密室に近い、身動きを取りにくい状況」かつ「多くの人が経験あるシチュエーション」だからだと考えられる。

プライベート空間であるはずの近距離で、見知らぬ人と数時間行動をともにしなければならない。そのストレスは、ただでさえ大きい。

しかも飛行機と違い、新幹線にはベルト着用サインのような強制力のあるルールが少ない。国内フライトは1〜2時間で完結するが、新幹線は乗車時間も長く、過ごし方の大部分が「乗客の良識」に委ねられている。

それゆえに「こう乗るべきだ」という価値観が根強く、ルールではなくマナーをめぐる論争が起きやすいのだ。

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ベルト着用が義務付けられ、国内フライトが短い飛行機ではイザコザが起きにくい(写真:himawari / PIXTA)

加えて、座席にいる最中にさほどやることがないのも、SNSでの拡散に拍車をかける。とりあえず時間つぶしに、スマートフォンをポチポチ……となれば、投稿を見たり、ポストしたり、といった行為は最適だ。

いま自分が体験している出来事をリアルタイムで投稿する。“あるあるネタ”として共感してもらいやすい題材ゆえに、移動中でもすぐさま反応が付く。そして、安易に承認欲求を得られる——。新幹線車内のオモチャとしてはもってこいなのだ。

また、こうした新幹線トラブルは、相手方から後で文句を付けられる可能性が低い。もしSNSを見た当事者から何か言われても、「そんなことは日常茶飯事なのだから、あなたの話ではないですよ」と返してしまえば、簡単に回避できる。

炎上ホイホイを見破る護身術

こうした構造を踏まえると、今回の炎上商法疑惑は、ある意味で必然だったとも言える。新幹線マナーという「燃えやすい×裏取りしにくい×共感を得やすい」三拍子そろった題材は、それ自体が「炎上ホイホイ」として機能する。その文脈を知っているネットユーザーが、投稿者本人の意図とは無関係に、疑念の目を向けてしまうのだ。

筆者自身、こういった投稿を見るときにまず確認するのは、「この人にとって炎上することのメリットがあるか」という点だ。そこに商業的な動機や認知拡大の意図が見えた時点で、いったん立ち止まる。すべてを信じるのも、すべてを疑うのも正しくない。

そうやって、「この手の話は燃えやすいし疑われやすい」という背景知識を持っておくことは、SNS社会を生き抜くうえで欠かせないスキルになっている。ネット上には、ここまで見てきたような「炎上ホイホイ」が多数仕掛けられている。それらをいかに回避するかもまた、会得しておくべき現代における護身術なのだろう。

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「燃えやすい×裏取りしにくい×共感を得やすい」三拍子そろった題材=「炎上ホイホイ」を回避する身に付けたい(写真:Peak River/PIXTA)