多数の里親希望者が望むのは「若くて健康な子」。大けがを負い傷口にウジの湧く「懐かない」保護猫の未来

犬猫の殺処分数は3年前と比べて約半分に

令和6年度に全国で行われた犬猫の殺処分数は6,830頭、そのうち、猫の数は4,866頭だった。 

3年前の令和3年度と比べると、殺処分数は約半分になっている。それでも、年間犬は17,399頭、猫は22,010頭が保健所に収容されている(環境省自然環境局 犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況より)。 

合わせて4万頭近くの収容された犬猫の多くが、なんとか生き延びられているのは、こうした行政の保健所や愛護センター、そして保護団体および、個人の保護活動家さん方のおかげといえよう。

今年2月に4冊目の著書『たまさんちのホゴネコ2』(世界文化社)を出版したtamtamさんも、そうした個人活動家のひとりである。

公益財団法人の動物保護団体に勤務後、保健所から犬猫を預かり、里親を探す「一時預かりボランティア」を個人でされている。2018年から自身の経験を漫画にしてインスタグラムに投稿したところ、話題となり、これまでに『たまさんちのホゴイヌ』『たまさんちのホゴイヌ2』『たまさんちのホゴネコ』(すべて世界文化社)を出版した。

FRaU web短期連載の第2話は、最新刊『たまさんちのホゴネコ2』の「CHAPTER3 いのり 目に見えないお守り」の中からの話だ。

「壊死してるところ、痛みも麻痺しちゃってる」

住宅街の片隅で、瘦せ細った毛艶のない、ボロボロの猫を発見した親子は、その猫の顔が半分ただれ落ちていたことに驚いて、長崎県佐世保市の動物愛護センターに連絡をした。職員はすぐに救出に向かい、動物病院に運んだ。 

動物病院に運ばれた猫は、獣医師も驚くほど酷い状態だった。

多数の里親希望者が望むのは「若くて健康な子」。大けがを負い傷口にウジの湧く「懐かない」保護猫の未来

「たぶん壊死してるところもあるから、痛みも麻痺しちゃってるんだろうね」

そう言いながらも、ただれ落ちた皮膚を切り取り、傷口に湧いたウジ虫を丁寧に取り除いてくれた。この先、皮膚の移植や右目の摘出手術が必要になる可能性もあるという。

「小さな命が、これからも生きていける」

応急の処置は済んだが、「傷口の消毒、保湿は、毎日しなきゃいけないからね!」という獣医の言葉に、職員ふたりは顔を見合わせた。 

ただでさえ人数も予算も足りない行政機関の中で、そんな手のかかることができるのだろうか、などと心配をしているのかと思いきや、職員たちの思いはまったく違った。

猫の状態のあまりの酷さに心を暗くし、最悪の事態も覚悟していたが、獣医の言葉を聞いて、これからのことを当たり前に話せることに、彼らは奇跡を感じた。

顔を失って、明日をも知れなかった小さな命が、これからも生きていける明るい兆しに、喜びをかみしめていたのだった。

しかし、現実は甘くなかった。たとえこの猫の命が助かったとしても、殺処分になる可能性はゼロではない。

動物愛護センターは、民間の保護センターとは異なり、行政機関として管理運営されている。センター内の収容頭数や飼育や治療の予算がオーバーすれば、「殺処分」の対象になりえる。 

さらにセンターには、「適正譲渡」という決まりがあり、一般家庭での飼育が難しいと判断されると、譲渡に出すことは難しくなる。せっかくセンターに連れてこられても、治る見込みがないと見られれば、殺処分されてしまうこともあるのだ。

実際、令和6年保健所に運び込まれた負傷動物は、犬503頭、猫7,394で、そのうちの半数以上となる合計4,060頭が殺処分になっている。 

その事実を誰よりもよく知る職員たちではあったが、彼らは悲観せず、「やれることはやってみよう」と顔を半分失った猫のために立ち上がった。

◇環境省が毎年出す「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」を見ると、引き取り数(保健所などへの収容数)と殺処分数は着実に下がっている。

けれども病気、障害、ケガを負った動物の先行きは明るくない。

保護犬猫の里親希望者の多くは、「若くて健康で飼いやすい子」を望むからだ

実際は、ペットショップで購入したとしても、子犬や子猫の将来の健康リスクは変わらない。私たち人間と同様、後天的な病気はどの動物にもありえ、誰もその保証はできないのだ。

それでも、月齢が若く、見た目のいい子、きれいな子がやはり人気で、シニアや病気やけがを持つ子の譲渡は難しい。だとすれば、顔のケガが治ったとしても、この猫に未来はあるのだろうか。