ミャクミャク人気で加速する万博パビリオンの再利用 国内外に広がり記憶継承するレガシー

万博記念公園の「太陽の塔」前に設置されたミャクミャクのモニュメント=2月21日、大阪府吹田市(渡辺大樹撮影)

昨年10月に閉幕した大阪・関西万博の会場解体工事が進む中、パビリオンの移築や展示品の再利用が進んでいる。84館あったパビリオンのうち26館の移築が決まり、日本国際博覧会協会(万博協会)が目指した「17.5館以上」の目標はすでに達成。万博の公式キャラクター「ミャクミャク」が閉幕後も根強い人気を誇り、万博のレガシー(遺産)が観光客誘致や地域振興につながるとの期待感が背景にある。

兵庫県淡路島に移築されるパソナグループのパビリオン=2025年6月、大阪市此花区の夢洲(川村寧撮影)

シアターや子育て支援施設に

河瀨直美さんが手掛けたパビリオンは大阪府泉佐野市で常設シアターに生まれ変わる=2025年7月、大阪市此花区(恵守乾撮影)

万博の自前建設型パビリオン「タイプA」は今年4月13日までに解体と敷地返却を終える必要がある。その中で、移築や展示品などの再利用の計画も進んでいる。

アンモナイトをイメージしたらせん状の外観が特徴だったパソナグループのパビリオンは、オランダ館とともに兵庫県・淡路島に移築される。同グループによると、両館は近接して設置する予定だといい、地域振興の目玉施設となりそうだ。

国内の学者や作家ら8人のプロデューサーが手掛けたパビリオンも、続々と移築先が決定。廃校舎を再利用した映画監督の河瀨直美さんのパビリオンは大阪府泉佐野市に移され、常設シアターとして河瀨さんの作品を上映する予定だという。

東日本大震災で被災した宮城県名取市に移設されたカナダ館のモニュメント=2025年11月(同市提供)

特に熱い視線を寄せるのは、移築先の自治体。「地域の発展につなげたい」と意気込むのは同府交野市の山本景市長だ。同市内の子育て支援施設でルクセンブルク館の一部を再利用する計画で、すでに鉄骨や照明施設などが市内に搬入された。

セルビアの万博でも活用

海外で活用されるケースもある。万博協会によると、セルビア館が、自国開催となる2027年ベオグラード万博で活用される予定。ウズベキスタン館も自国での再利用が計画されている。

万博協会の十倉雅和会長は「万博のレガシーはむしろこれからつくられる」と語る。1970年大阪万博の場合、カンボジア館が神戸市北区の自治会館として活用されるなど、現在も6館が残っているとされる。万博協会は、70年万博で28館が移築を含めて再利用されたことを踏まえ、移築を1、一部移築などを0.5と数えて17.5館以上の移築を目指してきた。

閉幕直前の時点では大半のパビリオンで閉幕後の用途が決まっていなかった。その後、万博協会所有のパビリオンなどは協会が開設したマッチングサイト「ミャク市!」で入札にかけられたほか、企業や海外のパビリオンでも出展者と建設会社との間で解体・移築に向けた具体的協議が進展した。

さらに閉幕後も人気が続くミャクミャクのグッズの販売期間が2028年3月まで2年間延長することが決まるなど、万博ブームの「余熱」は冷めていない。パビリオンの移築が地域の活性化に寄与するとの期待感がふくらみ、受け入れに手を挙げる自治体などが相次いだとみられる。

東日本大震災の被災地にも

展示品や備品のリユースも広がる。関西国際空港では、住友館のベンチなどを設置。空港を運営する関西エアポートの担当者は「ここは関西の玄関口であり、各国由来のものが集まれば多くの方に関西の良い印象が伝わるのでは」と期待する。

米国館で展示されていた大型ロケットの模型は、在大阪・神戸米国総領事館を通じて大阪市立科学館(同市北区)に寄贈され、2月から展示が始まった。ウクライナ館でロシアによる侵攻の実態を紹介した展示物が神戸学院大(神戸市)に移され、カナダ館の正面に設置されていたモニュメントは、東日本大震災の被災地、宮城県名取市に送られた。

日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄所長は「万博来場者の多くは関西の人たちだった。パビリオンなどが全国で再利用されれば、万博のレガシーを幅広く伝えるという意味でも意義が大きい」と評価する。(黒川信雄)