人生の4分の1過ぎで陥る葛藤「クォーターライフクライシス」〝中年の危機〟より高い割合

マイナビの調査によると、25~34歳の正社員の約半数が人生に葛藤を抱えているという
25~34歳の正社員の約半数が人生に葛藤を感じていることが就職情報会社「マイナビ」(東京)の調査で分かった。人生の4分の1を過ぎた時期にあたることから「クォーターライフクライシス」と呼ばれる。調査では、特に20代後半が「中年の危機」に直面する40~50代よりも不安を感じている割合が高かった。こうした悩みに、個人や組織はどう向き合えばよいのだろう。ウェルビーイング(心身の健康、幸福)の専門家に話を聞いた。

「マイナビ 正社員のクォーターライフクライシス調査2026年」から(同社提供)
悩みのトップは「稼げていない」

「マイナビ 正社員のクォーターライフクライシス調査2026年」から(同社提供)
調査は同社が昨年秋、インターネットを通じて実施した。「クォーターライフクライシス」について「25~34歳の間で、人生に対して不安や焦燥感、憂鬱感など葛藤を感じている状況のことを指す」と定義したうえで、該当年齢の正社員男女に「現在『クォーターライフクライシス』の状態であると感じるか」と質問した。有効回答が得られた765件中、「強く感じている」「やや感じている」が計49・5%を占めた。

「マイナビ 正社員のクォーターライフクライシス調査2026年」から(同社提供)
悩みの内容を複数回答でたずねたところ、「十分に稼げていない」(52・7%)▽「今後の人生のために次に何をすべきかわからない」(42%)▽「行き詰まりを感じている」(36・2%)が上位となった。
最も悩んでいるのは20代後半
一般的に人生の中で不安感が強まる時期として知られるのは、体力の低下や更年期症状、介護といった家庭環境の変化に直面する40~50代だ。この時期特有の心理状態は「中年の危機」や「ミッドライフクライシス」とも呼ばれる。
だが、今回の調査で人生に葛藤を感じている割合を年代別に調べると、人生への葛藤を「強く感じている」「やや感じている」を合わせた割合が最も高かったのは20代後半で52・3%となり、40代前半(計50%)、40代後半(45・1%)、50代前半(44・7%)を上回る結果となった。
「失われた30年」に育った世代
クォーターライフクライシスを感じる現代の若者について、専門家はどうみるのか。武蔵野大学ウェルビーイング学部の前野隆司教授は「現在25~34歳の若者は『失われた30年』と呼ばれる時代を、生まれたときから過ごしてきた世代だ」と説明する。
加えていまは戦争や環境破壊、貧困、少子高齢化といった社会課題が山積し、人工知能(AI)が急速に進展するなか「未来も不透明だ」と指摘。「中年世代よりも先の人生が長い若者ほど、不安を感じる要素が社会にそろっているともいえる」と分析した。
組織ではフラットな関係性の構築を
若者たちは不安や葛藤とどう向き合えばよいのか。前野教授は対策として「ウェルビーイング」の科学を知ることを勧めた。
ウェルビーイングは心と体に加え、社会的な面でも満たされた状態にあること示す概念だ。研究が進み、ウェルビーイングな状態にある人ほど生産性は高く、健康的な生活を続けるという「健康寿命」が長いことなどが科学的に分かってきたという。
こうした知見を踏まえ、前野教授は個人としてできることとして、ストレスを感じたら原因から離れる▽無理をせずに休息をとる▽他人と自分を比較しない-などの対策を助言する。特に「SNSでの他者との比較は、幸福度を下げる要因となることが研究で分かっている」と注意喚起した。
ウェルビーイングの視点で、さらに組織が取り組める対策はあるのだろうか。前野教授が挙げたのが、年齢や役職に関係なくフラットな関係を構築することの重要性だ。
今回の調査でも、クォーターライフクライシスを感じる人が悩みや葛藤を払しょくするために求めているサポートとして「信頼できる人から定期的に話を聞いてもらう」(35・2%)が最も多かった。
前野教授も「過度にハラスメントを恐れて組織内の対話がなくなるのはよくない。『孤独は幸福度を下げる』という研究もあるからだ。若者が悩みを相談しやすい環境を整え、一人一人の強みや個性を引き出す仕組みが、組織全体のウェルビーイングにもつながる」と強調する。
新年度が始まって1カ月が過ぎた。大型連休明けに、まずはできることから始めてみたい。
前野教授は「世代関係なく、相手の目を見て元気にあいさつをすることは信頼醸成につながる、ウェルビーイングの第一歩」と呼びかけた。
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