将棋・藤井聡太「6冠後退」がSNSで歓迎されたワケ

感想戦で対局を振り返る伊藤匠新王座(左)と藤井聡太前王座=28日午後、甲府市(関勝行撮影)
将棋の藤井聡太王座(23)=棋聖・竜王・名人・王位・棋王・王将=に伊藤匠叡王(23)が挑戦した第73期王座戦五番勝負(日経新聞社主催)の最終第5局は先手の伊藤叡王が勝利し、対戦成績3勝2敗で初の王座獲得となった。藤井前王座はタイトル7冠から6冠に後退。将棋界が誇るスーパースターのタイトル失冠となったが、X(旧ツイッター)では「ショック」という悲嘆の声よりも「これで面白くなる」「良かった」などと喜びのコメントが目立った。

一夜明けての会見でフォトセッションに臨む伊藤匠王座=29日午前、甲府市(関勝行撮影)
「藤井一強時代」に風穴を開けた伊藤匠新王座
激闘から一夜明けての会見、伊藤新王座は現在の心境について聞かれ、「自分の良いところを出すことができ、非常に充実した時間を過ごすことができました」と告白。「二冠」と揮毫(きごう)した色紙を披露した。
藤井前王座は2023年10月に史上初となる8冠独占を達成し、圧倒的な強さで将棋界の頂点に君臨。防衛戦では羽生善治九段(55)、渡辺明九段(41)、豊島将之九段(35)、永瀬拓矢九段(33)といった強豪棋士たちをことごとく退けてきた。しかし、そのあまりの強さは時に「藤井一強じゃ将棋界がつまらない」という感想をファンの間に生んできた。

加藤一二三九段
そこに風穴を開けたのが、伊藤王座だった。2024年、初タイトルとなる叡王を奪取し、「藤井8冠独占」を崩した。さらに今回の王座戦を制し、初の2冠を達成。規定により八段から九段に昇段した。
Xで藤井前王座の「6冠後退」が歓迎されたのも、強力なライバル誕生によって「二強時代」の幕開けを迎えることを喜んでのことだ。29日までに「藤井聡太一強より将棋界は盛り上がるだろう」「藤井聡太さんを打ち負かす好敵手が現れるのは将棋ファンとして嬉しい」「藤井一強からゴールデンカードの誕生へ、将棋界は動きました」といった投稿が寄せられている。
中には「勝った伊藤叡王より、負けた藤井王座が記事になるのは変じゃないか?」「伊藤叡王が勝ったという記事にすればいいのに すごいことよ」と、藤井前王座敗戦の扱いが大きいメディアに対して苦言を呈するポストも見受けられた。
「魂を揺さぶる激闘」ひふみんも感激した名勝負
2人の激闘に刺激を受けた将棋関係者も多く、2017年に現役を引退した「ひふみん」こと加藤一二三九段(85)は自身のXで「魂を揺さぶる激闘5番勝負の大熱戦を繰り広げられた両者に心からの拍手を贈ります」と感激。現役プロ棋士の山本博志五段(29)もXで「中盤戦のハイレベルな攻防にもお二人の魅力と強さが詰まっていました。良い将棋を有難う御座いました」と感激した様子を投稿していた。
昨年、叡王戦に挑んだ際は藤井前王座について「自分を引き上げてくれた存在」と話していた伊藤王座。今年度のタイトル戦では王将戦と棋王戦で挑戦者を決める戦いが繰り広げられており、結果次第で通算5度目の「藤井VS伊藤」のカードが実現する可能性がある。
■藤井聡太(ふじい・そうた) 2002年7月19日生まれ。愛知県出身。杉本昌隆八段門下。2016年10月、14歳2カ月で史上最年少プロ棋士(四段昇段)となる。2023年に史上初となる8大タイトル独占を達成。「詰将棋解答選手権」6度優勝など、数々の記録を持つ。通算タイトル獲得数は31期。
■伊藤匠(いとう・たくみ) 2002年10月10日生まれ。東京都出身。宮田利男八段門下。2020年10月、17歳11カ月でプロ棋士(四段昇段)となる。今期の順位戦はB級1組、竜王戦は1組に所属。通算タイトル獲得数は3期。
(zakⅡ編集部・井上悟)