高校ビッグ4の同期、及川は1億円プレーヤーに 野手転向の西純矢は「代打の神様」目指せ

野手に転向し、打撃練習に臨む阪神・西純矢。来季は育成契約から支配下昇格を目指す=11月4日、安芸市営球場(中井誠撮影)
ガンバレ西純矢! 支配下復帰などと小さなことは言わず、右の代打の切り札として活躍を期待します。来季、最も頑張ってほしい選手の名前を挙げて今年の漫遊記を締めくくります。年俸1500万円と1億円という大差。2019年のドラフト会議で1位指名された西純矢外野手(24)は投手から野手に転向し、今オフに育成契約。年俸は半減しました。一方、同年3位指名の及川雅貴投手(24)は7千万円増の年俸1億円でサイン。これが厳しいプロの世界の現実です。西純は己の生きる道を見つけて、はい上がるしかありません。

契約更改を終え、笑顔でポーズをとる阪神・及川雅貴。年俸を1億円の大台に乗せた=12月3日、阪神球団事務所(中井誠撮影)
背番号120で育成契約

阪神の新人選手入団発表会で、集合写真におさまる及川雅貴(前列右)と西純矢(中列右端)=2019年12月2日、大阪市内(水島啓輔撮影)
なんだかんだと書き続けて、もう1年が過ぎ去ろうとしています。ご愛読頂いた「鬼筆のトラ漫遊記」も今回が今年最後の記事です。2年ぶりのリーグ優勝を果たした阪神はハワイへの豪華な優勝旅行を終え、帰国の途に就きました。藤川球児監督(45)を始めとする首脳陣や選手たちは心身ともにリフレッシュし、来るべき26年に向けて牙を研ぐ時期がもうすぐやってきます。なので、今年最後の漫遊記はリーグ連覇を目指す来季、最も頑張ってほしい選手の名前を挙げて年納めしたいと思います。

高校日本代表候補の研修合宿でポーズをとる(左から)星稜・奥川恭伸投手、創志学園・西純矢投手、大船渡・佐々木朗希投手、横浜・及川雅貴投手=2019年4月7日、奈良県生駒市(水島啓輔撮影)
ある阪神OBの言葉が胸に突き刺さります。
「一方は1500万円で、もう一方は1億円。ドラフト1位で入った方が、今は野手に転向して育成契約で年俸1500万円。同じドラフトで3位に指名されて入った選手は今年の更改で年俸1億円。これだけの差が開いた。結果が全てのプロ野球界を象徴するような差やなぁ。残酷だけど仕方ない。西純は頑張るしかないよ」
大きな格差が生まれた2人の選手とは、今オフに育成契約となり、年俸も3千万円から半減となった西純と、今月3日に7千万円アップの年俸1億円でサインした及川雅貴投手のことです。後者は今季66試合にリリーフとして登板し、6勝3敗1セーブ46ホールド、防御率0・87の好成績を残しました。リーグ優勝に大きく貢献し、今や阪神にとっては欠かせない左の中継ぎエースです。
逆に西純は右肘の違和感で春季キャンプを途中離脱。2月末には右肘関節鏡視下関節鼠摘出術を受けました。今季は公式戦の登板はなく、10月10日に球団から野手への転向が発表されました。そしてシーズン終了後の11月14日、背番号120で育成契約を結んだことが発表されたのです。野手に転向して初めて迎えた11月の秋季キャンプでは、全体練習を終えても個別練習で打撃に没頭していました。
「高校の時も練習する方でしたが、ここまではなかったです。人生で一番練習したと思っています。(来季は)とにかくファームの試合に(野手として)出られるようになりたいです」
西純が険しい表情でそう語っていたのが印象的でしたね。
ドラフト1位で入団も
球団の期待の大きさはドラフトの順位に表れます。西純は岡山・創志学園高からドラフト1位で入団。超高校級の右腕として期待され、プロ3年目の22年に6勝、翌23年には5勝をマーク。先発ローテーション入りを期待されていた24年から不振に陥り、今年2月に右肘手術を受けました。
逆に及川は横浜高からドラフト3位で入団。2年目の21年に2勝3敗10ホールドをマークするも、昨季までの5シーズンで通算82試合に登板し、6勝7敗17ホールド。それが今季は藤川監督に見いだされ、一気に素質を開花させたのです。
2人は19年のドラフト会議で指名された同期生。当時を知る球団関係者はこう振り返りました。
「阪神はイの一番で石川・星稜高の奥川恭伸投手(現ヤクルト)を指名したのだが、抽選で外れて、その年の甲子園大会で活躍した西純を外れ1位で取った。及川についてはスカウト陣の中で評価が割れていたが、うまく育てれば大成する可能性があると見て3位に指名した。安全策に走らずに球質を評価して3位で取ったのは大いに評価できる」
この年、「高校ビッグ4」と称されたのが、佐々木朗希(24)=ドジャース=と奥川、西純、及川の4人。ドラフト時、阪神は西純を将来のエース右腕と期待して1位指名し、及川は化けてくれればもうけもの?という感覚で3位に指名したとみられます。それがプロ入り6年が過ぎ去った今では、一方は打者転向、もう一方は左腕の中継ぎエース。対照的な軌道を描いたわけです。
非凡な打撃センス
西純は非凡なセンスを見せる打者としての能力を買われて野手転向となったわけですが、それでも客観的に見るならば追い風は吹いています。今オフ、右の代打の切り札だった原口文仁内野手(33)が現役を引退。同じく右の代打要員だった渡辺諒内野手(30)も退団(オイシックス新潟アルビレックスBCに入団)。今年のドラフト1位の立石正広内野手(22)と2位の谷端将伍内野手(21)はともに右打者ですから、西純とすれば右の代打枠でのチャンスが生まれやすい環境になったといえます。
さらに、セ・リーグは2年後の27年シーズンから指名打者(DH)制を採用します。現状の阪神において確実にDH要員として活躍が見込まれる選手は誰でしょう。左打ちなら前川。右のDH要員は? 当然ながら外国人選手の獲得に乗り出すでしょうが、もしも西純が打者として結果を残せば、2年後にDHのレギュラーをうかがう存在になります。なのでまずは来季、代打として首脳陣の目に留まるような打撃を見せなければなりません。勝負の年なのですよ。
「西純も来季で7年目。ある意味、育成契約で契約をもらえたのはラッキーなんだ。だから、このオフは死に物狂いでバットを振り、首脳陣に『使ってみたい』と思わせるような存在にならないとダメ。打者でもダメならもう後はないんだから…」とは阪神OBの言葉です。
年俸1500万円と1億円の差…。プロ入り6年間で生まれた格差は誰のせいでもありません。悔しかったら練習して結果を残すしかない世界です。もう一度、支配下選手への復帰を-などという小さな目標ではなく、それこそ右の「代打の神様」として1軍でバリバリ活躍する姿を見せてほしいですね。勝負は来季です。剣が峰に立った気持ちでグラウンドに向かってほしいですね。
=金額は推定
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。