【桜至郎の競馬こばなし 縦〝桜〟無尽】加藤士調教師が明かすコスモキュランダ激走の裏側 鞍の位置で「前に行こうとしているな、というのはわかっていました」

有馬記念で激走し2着に入ったコスモキュランダ
昨年末に行われた有馬記念は皐月賞馬のミュージアムマイルが戴冠。ハイレベルだった昨年の3歳世代を象徴するような締めくくりとなりました。
そして、半馬身差の2着に入ったのが12番人気の伏兵コスモキュランダ。陣営にしてみれば近走の大敗続きを覆す、してやったりの復活劇だったことでしょう。レースから2日後、美浦トレセンで加藤士津八調教師に激闘を振り返ってもらいました。
「残念でしたね。あともうちょっとだったんですけど、相手が強かった…。周りには『(ミュージアムマイルの鞍上が)C・デムーロ騎手じゃなければ勝ってたね』と言われました」
キュランダはコースレコード決着だった皐月賞でクビ差の2着に入った実力馬ながら、古馬になってからは目立った活躍がありませんでした。そこで久しぶりにコンビを組む横山武史騎手の進言もあり、今回はブリンカーの着用を決定。「ブリンカーとかチークは(これまでの)経験だともっと引っ掛かるんですけど、この馬はそうでもないからちょうどいいなと。長距離で着けるのはあまり前向きじゃなかったんですけど、あの感じを見ていたら大丈夫だと思いました」と、調教で手応えをつかんだうえで大舞台に臨みました。
大方の予想では宝塚記念勝ちのメイショウタバルとアルゼンチン共和国杯を逃げ切ったミステリーウェイのハナ争いになるとの見立てでしたが、スタートを決めたキュランダは積極的に前へ。「スタートしてすぐに(メイショウタバルの武)豊さんが『えっ、キュランダも行くの』みたいな感じで外を見ていて。僕自身も(ミステリーウェイの)松本騎手がもう少し行くかなと思ったんですけどね」と振り返ります。

加藤士津八調教師
リズムよく好位で折り合うと、そのまま抜群の手応えで最後の直線へ。早めに先頭へ躍り出たキュランダは急坂を苦にすることなく駆け上がりますが、外から人気のダノンデサイルとミュージアムマイルが猛追。「意外と自分は黙って見ていました。ダノンばっか見ていたら、また外から来てるなと思って」。ゴール手前でミュージアムマイルに差し切られ、惜しくて悔しい2着。ただ、トレーナーは「馬が良くなっていたことに加えて、条件が合ったというのが一番ですよね。東京のヨーイドンだと厳しいけど、中山のようなテクニカルなコースは合っているなと。(2着賞金の2億円に関しては)なにも見てなくて…。1着の5億円は知っていたので、負けちゃったかと思っていたら、みんなから『賞金2億ですよ』と言われて。2023年から賞金が上がっていたので、タイミングもよかったと思いました(笑)。これで新厩舎のエアコン代の足しになりました」と茶目っ気たっぷりに振り返ってくれました。

厩舎回りで引き運動を行うコスモキュランダ=2025年12月30日、美浦トレセン(撮影・吉田桜至郎)
レース後、横山武騎手は「100点の競馬ができました。少し古いですが、(1992年Vの)メジロパーマーのように前でやりあって後ろに脚を使わせる競馬を思い描き、その通りにやりたい競馬ができました」と会心の騎乗を振り返っていました。実はこの裏で、指揮官は〝違和感〟を覚えていたそうです。
横山武騎手はいつも自分で馬に鞍を置きたがるそうなのですが、直前の10Rに騎乗していたため、指揮官に託しました。鞍を置く際は「(鞍の)重心を前にしていれば折り合い重視なんですけど、重心を後ろにしていくと馬に『行け』って押すイメージ」だそうですが、この日のキュランダは「鞍もゼッケンの後ろに設定されていたうえ、(他の)装備がより後ろめで、『この設定で置いてほしい』と(横山武騎手に)言われていました」とのこと。「前に行こうとしているな、というのはわかっていました。自分は気づいていましたが、本人も(作戦を)考えていたと思うので。結果的にそれでよかったと思います」。復活の裏側にはトップジョッキーの好判断に加え、それを信じるトレーナーの決断力がありました。
取材日は厩舎回りで引き運動を行っていたキュランダ。レース後の雰囲気は「特に問題ないですよ。終わってすぐはふらふらで疲れていたみたいですけど、きょうの感じは普通にしているので」とのこと。今後は放牧に出される予定だそうですが、始動戦が待ち遠しくなりました。(東京サンケイスポーツ・吉田桜至郎)