国内FA宣言の辰己涼介は楽天残留か 球界屈指の守備の名手に買い手がつかぬ摩訶不思議

ゴールデングラブ賞の表彰式に奇抜な装いで登場した楽天・辰己涼介=2024年11月28日、東京都千代田区(中井誠撮影)

獲得すれば貴重な戦力になる選手のはずが、どこからもオファーが届かない摩訶(まか)不思議。楽天から国内フリーエージェント(FA)権を行使した辰己涼介外野手(29)が〝無風〟の日々を過ごしている。

辰己が国内FA権の行使を宣言したのは昨年11月11日。それから2カ月以上が経過した今月上旬、福岡市内で行われたイベントに出演した際、交渉状況を聞かれると「決まったことがないので、言えることはないです」と話した。辰己は「野球がうまくなりたいとか、必要としてくれるチームがあるとか、行使した上で考えたい」と明かしてFA市場に飛び出したが、待っていたのは国内11球団の冷ややかな反応だ。

ゴールデングラブ賞の常連

フェンス際への飛球をジャンプして好捕する楽天・辰己涼介。球界屈指の守備の名手だ=2025年6月15日、楽天モバイルパーク宮城(今野顕撮影)

選手としての力量は疑う余地がない。2024年、外野手としてシーズン397刺殺をマークし、プロ野球記録を76年ぶりに更新した。23年から3年連続でリーグ最多の刺殺数を積み上げ、21年から昨季まで5年連続でゴールデングラブ賞を受賞。抜群の身体能力を誇り、外野手としてプロ野球のトップレベルにある。

紋付き袴にちょんまげでNPBアワーズに登場した楽天・辰己涼介=2024年11月26日、東京都内

昨季は故障の影響もあって114試合の出場にとどまり、打率2割4分、7本塁打、32打点と打撃面では精彩を欠いたが、24年は143試合に出場して打率2割9分4厘をマーク。シーズン158安打で最多安打のタイトルも獲得した。

他の11球団のどのチームが獲得しても、外野の一角を担い、貴重な戦力になれる。昨季の年俸は非公表だが、24年が年俸8千万円(推定)だったことから、1億5千万~8千万円までか…。決して高い〝買い物〟とはいえない。

例えば…だが、村上宗隆内野手(25)がポスティングシステムを利用してホワイトソックスに移籍したヤクルトはどうか。昨季はリーグ最下位に沈み、4番打者が抜ける打線のテコ入れをどのように考えているのか。桑原将志外野手(32)が国内FA権を行使して西武に移籍したDeNAも、辰己を獲得すれば守備面でも打線の構成においてもインパクトのある補強になる。それでも声をかける球団が現れないのはどうしたことなのか…。

ゴールデングラブ賞の表彰式に金ピカのいで立ちで現れた楽天・辰己涼介=2024年11月28日、東京都千代田区(中井誠撮影)

メジャー志向と奇抜な言動

球界内に流れる情報では、ネックが2つあるという。一つは国内FA宣言をする前、楽天に要望していたポスティングシステムによる米大リーグへの挑戦意欲だ。FA宣言後も「そこはあきらめたわけではない」とメジャー志向を隠していない。他の11球団からすれば、人的補償が発生するランクなのに、獲得して短期間でメジャー移籍を要求されれば立ちどころに紛糾する。

もう一つは、24年度のゴールデングラブ賞表彰式で披露した〝金ピカ〟姿に象徴される奇抜な言動だ。スパンコールのタキシードに加え、顔や髪もゴールド一色に染めたスタイルで登場し、周囲を驚かせたのは記憶に新しい。また、24年11月に開かれた野球の国際大会「プレミア12」に日本代表「侍ジャパン」の一員として出場した際、決勝の台湾戦を前に「負けたら投手に転向します」などと相手を侮辱するような発言で、台湾メディアを激怒させた。天衣無縫な言動は魅力的な側面でもあるが、何をしでかすか分からないゆえ、他球団は触手を伸ばしにくいのかもしれない。

楽天の石井一久ゼネラルマネジャー(GM)は「もちろん残ってもらいたいと思います」と話していて、宣言残留に期待を寄せている。現状を見れば、今月中に楽天残留で決着するのが濃厚か。これほどの選手が宙に浮いたまま、元サヤというのも珍しい展開だ。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。