国枝厩舎解散を前に蛯名正師がアパパネ&マツリダゴッホの思い出語る「乗り間違えなければ勝てると」

2010年の秋華賞をアパパネで制した蛯名正義騎手(左)と国枝栄調教師

国枝栄厩舎の解散を前に、アパパネ、マツリダゴッホなどの主戦騎手をつとめた蛯名正義調教師(56)=美=が当時の思い出を語った。

2010年に3冠牝馬となったアパパネは2冠目のオークスが最難関だったと述懐。「お母さん(ソルティビット)が短いところの馬だし、折り合いも難しかったしね。厩舎といろいろ話をしながらやっていったけど、オークスの前には体がスラっとして長くなったという感じがあった。距離をもつようにと調教も変えたりしたし、牧場も含めてそういうコミュニーケーションは良かったよね。俺も騎手時代は厳しいことしか言わなかったし、GⅠを勝つにはそれだけのことをしないと勝てないというのもあるんだけど、国枝先生は厳しいことを言っても話を聞いてくれた」とチームのコンビネーションで2400メートルを克服できたと認め、「落とすとしたらオークスだろうと思っていたし、実際、(サンテミリオンとの)1着同着という結果なので、どこかで妥協したり、甘く見てたら違ったってことだしね。ゴールしたときは負けたと思ったけど、人も馬もあきらめずにやったからこその結果。実際、距離はよくこなしたと思うよ。4コーナーの手応えでは楽勝するかと思ったのに、最後はちょっと止まり出していたしね」と史上初のGⅠ同着Vを振り返った。

中央のGⅠでは史上初の同着優勝となった2010年のオークス

対照的に3冠目の秋華賞は自信があったそうで「(前哨戦の)ローズS(4着)で負けていたけど、負けてもどこにピークを持っていくか、使ってよくなるようにしてあったからね。目いっぱい走っちゃう馬だから、少しずつ上げていく感じで。だから本番の追い切りのときには大丈夫だなと。プレッシャーもあんまりなかったし、乗り間違えなければ大丈夫だろうと。(翌年の)ヴィクトリアMでもブエナビスタを倒しているんだから、3歳馬では力が上だった」と愛馬の女傑ぶりをたたえた。

マツリダゴッホによる07年有馬記念制覇は「天皇賞(15着)がいまいちで、万が一、チャンスが出るのだったら有馬だから、JCは見送って立て直そうと。実際に状態はすごく良かったけど、ダイワスカーレットがいたりメンバーが強力だったんで、状態だけ良くてもと思ってた」と自身の見立ては冷静だったが「先生はインフルエンザがはやっているからゴッホ、ゴッホとか言うんだけど、こっちは何言っているんだ、そんなに甘くないよと(笑)。でも先生のああいう明るさみたいなのは勝負において実は大事。運を引き寄せるじゃないけど」とトレーナーの自然体ぶりが運を味方につけたと解説。「人気もなかったし(9番人気)、気がつけばあれあれって。ダイワスカーレットは後ろの馬が相手だと思っているから、出し抜けがうまくはまった。これは俺の推測だけど、アンカツさん(ダイワスカーレットの安藤勝騎手)は夏の札幌記念でマツリダゴッホに乗ったことがあったから(7着)、相手はこの馬ではないと思ったんじゃないかな。俺のを甘くみていなかったら、こっちもあんなにうまいこといかなかった。だから運を呼ぶのも大事なことなんだよ」と全てがかみ合った伏兵でのGP制覇を懐かしんだ。(内海裕介)

マツリダゴッホで2007年の有馬記念を制し、ガッツポーズする蛯名正義騎手