巨人のエース戸郷翔征に変調?キャンプ中に異例のフォーム修正 理解者退団の影響を懸念する声も

■直球が走らず、制球が定まらない

 この右腕の復活なくして、巨人のV奪回は望めない――。キャンプ中に異例のフォーム修正に踏み切った戸郷翔征のことだ。

 14日のライブBPで明らかに精彩を欠いていた戸郷。直球が走らず、制球が定まらない。キャベッジに右翼へ本塁打を浴びた後、3つの四球を与えた。フォームに躍動感がなく、右腕が振れていない。その後のブルペンでも思い描いた球を投げられない。そして25日になると、リリースの位置を下げた投球フォームに修正し、ブルペンで200球以上のネットスローを敢行した。

「『このままではまずい』という危機感があったのでしょう。主力投手がキャンプ終盤にフォームを修正して投げ込みを行うのは異例。開幕ローテーションに入れるかは微妙ですが、今後の戸郷のキャリアを考えると2軍でじっくりフォームを固めてもいい。昨季からフォームでずっと悩んできましたし、しっくりくる投げ方は一朝一夕でつかめるものではありません。長いシーズンを見据えても焦りは禁物です」(スポーツ紙デスク)

■“大きな挫折”の昨シーズンに出会ったのが…

 小園海斗(広島)、根尾昂(中日)と同世代の右腕はドラフトこそ6位で、巨人に入団した際には注目度が高くはなかった。だが高卒2年目で9勝し、同世代で最も早く輝きを放った。21年シーズンからは4年連続で150イニング以上を投げ、22年からは3年連続で12勝をマーク。最多奪三振のタイトルを2度獲得し、23年のWBCでは決勝戦で救援登板するなど世界一にも貢献した。打者から見ると、直球と分かっていてもキレがあるため空振りしたり、差し込まれてファウルや凡打になったりする。さらに直球と同じ軌道から鋭く落ちるフォークや、キレ味鋭いスライダーも精度が高く、攻略が難しい。試合終盤に投球の精度が落ちないスタミナも大きな強みだった。

 順風満帆なキャリアを歩んでいた戸郷だが、昨年、大きな挫折を味わう。生命線の直球が走らず、伝家の宝刀のフォークが見切られる。カウントが苦しくなり、痛打を浴びる投球が春先から続いた。2度のファーム降格を味わうなど21試合登板で8勝9敗、防御率4.14。111イニングで5年ぶりに規定投球回数に届かなかった。巨人の番記者が振り返る。

「昨季の開幕前から投球に異変が出ていました。直球が140キロ台前半とスピードが急に落ち、故障が疑われたほど。投球フォームのバランスを崩したことが原因で開幕後もなかなか改善の兆しが見えなかった。その戸郷がファームで調整している時に、支えたのが桑田真澄2軍監督(現オイシックス新潟CBO)でした。桑田さんは投球フォームのメカニズムから見つめ直すことを提案し、戸郷も信頼して取り組んでいた。1軍昇格した夏場は球に力強さが戻った時期があったので、決して暗いトンネルが長く続いたわけではなかったんです」

 他球団のスコアラーも「状態が悪いと言いながら8勝を挙げていますから。2度目のファーム降格を経て1軍に昇格した7月下旬以降は、直球に力強さが戻っていた。実際に夏場以降に6勝を挙げていますしね。手強い投手であることは変わらないですよ」と語る。

 不本意な成績に終わった要因は不調だけでなく、他球団の戸郷研究が進んだからでもある。前出のスコアラーは「戸郷には何年も抑えられていますから。具体的な内容は企業秘密ですが、やられっぱなしのわけにはいかない。多角的に分析してチームとして攻略しようと考えていました」と明かす。

■手本は背中を追い続けてきたメジャーリーガー

 かつて、戸郷とチームメートだった巨人OBはこんな懸念を口にする。

「長い野球人生で思うような投球ができないシーズンもありますよ。戸郷は相当なイニング数を何年も投げ続けてきたので勤続疲労もあったと思います。心配なのは繊細なメンタルです。エースは我が道をいく投手が多いけど、戸郷は色々な人にアドバイスを求める。でも、本格派のオーソドックスな投げ方ではなく、右ひじの使い方が独特の変則フォームなので指導も難しい。理解者だった桑田さんが退団してしまったことが、どう左右するか。個人的には過去の姿を追いかけるより、新しいフォームを作り直す感覚の方が良いと思います。年齢と共に体の動きや感覚が変わってきますしね」

 エースと呼ばれる投手は苦境から這い上がってきた。身近な手本が、背中を追い続けてきた菅野智之(ロッキーズ)だろう。巨人のエースとして長年稼働していたが、23年は4勝8敗、防御率3.36。77回2/3イニングにとどまり、限界説がささやかれた。だが、翌24年は15勝3敗、防御率1.67と完全復活。最多勝、最高勝率(.833)の二冠に輝き、自身3度目となるMVPを受賞。4年ぶりのV奪回の立役者となり、「おそらく去年の今頃は菅野がMVPとると思っている人は誰もいなかったんじゃないかと思いますけど、自分自身は絶対やれるんだ、まだまだやれるんだということを信じて昨年のオフからトレーニングや自分自身を見つめ直す時間に費やしてきました」などと語っていた。

 戸郷は25歳とまだ若い。この壁を乗り越えた時、投手として一回りも二回りも成長できるのだろう。

(ライター・今川秀悟)

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